「by」と「from」の違いとは?手段と起点を正しく使い分けるコツ

「by」と「from」、どちらを使えばいいのか迷った経験はありませんか?

実はこの2つの言葉、「何かのそばにある(影響)」か「どこかから離れる(起点)」かというイメージを持つだけで、驚くほど簡単に使い分けられるようになります。

この記事を読めば、ビジネスメールの期限設定や出身地の説明で迷うことがなくなり、自信を持って正しい前置詞を選べるようになるでしょう。

それでは、まず最も重要な違いの全体像から詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「by」と「from」の最も重要な違い

【要点】

「by」は「手段・方法・期限」など対象への接近や影響を表し、「from」は「起点・出発点・原料」など対象から離れていく動きを表します。迷ったら「そばにある(by)」か「出発点(from)」かで判断しましょう。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの前置詞の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これさえ頭に入れておけば、迷った時の羅針盤になります。

項目byfrom
中心的なイメージ近接・影響(そばに、~によって)起点・分離(~から、出発点)
主な役割手段(バスで)、期限(~までに)、受動態の動作主出発点(場所・時間)、出身、原料
時間の感覚期限・完了(その時までに終える)開始点(その時から始まる)
物理的な感覚対象のすぐそばを通る、手段として使う対象から離れていく、出てくる
覚え方のコツ「~の手元で」「~の力で」「~を出発して」「~を源にして」

表を見るとわかるように、「by」は何かがすぐそばにあり、その影響を受けているニュアンスが強いですね。

一方、「from」はある地点から離れて、何かが始まったりやってきたりするイメージです。

なぜ違う?言葉の成り立ち(コアイメージ)から理解する

【要点】

「by」の核心は「近接(そばに)」で、そこから「経由」「手段」「期限」へと意味が派生しています。一方、「from」の核心は「起点からの分離」であり、物理的な出発点だけでなく、時間や原因の始まりも指します。

単なる暗記ではなく、言葉の「コアイメージ」を掴むことで、応用が利くようになります。

それぞれの前置詞が持つ本来の景色を想像してみましょう。

「by」のコアイメージ:すぐそばにある影響力

「by」の原義は「そばに」「近くに」です。

例えば「Stand by me(私のそばにいて)」という歌詞がありますが、これがまさに核心的な意味です。

何かの「そば」を通ることから「経由」の意味が生まれ、手元にある道具を使うことから「手段(~によって)」という意味に派生しました。

また、時間の「そば」にいること、つまりその時点を超えないギリギリのラインにいることから、「期限(~までに)」という意味でも使われます。

「from」のコアイメージ:起点からの分離

「from」のイメージは、カエルがぴょんと葉っぱから飛び出すような「出発」と「分離」です。

何かが始まった場所を指すため、「出身(I am from Japan)」や「手紙の差出人(From…)」に使われます。

重要なのは、「今はもうそこにはいない(離れてきている)」という感覚が含まれている点ですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ビジネスメールでの「期限(by)」や手段の連絡、自己紹介での「出身(from)」など、シーンに応じた定型表現を覚えることが近道です。「Made by」と「Made from」のようなコロケーションの違いも重要です。

では、実際の会話やビジネスシーンでどう使い分けるのか、具体的な例文で見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

ビジネスでは、特に「期限」と「範囲」の表現でミスが起きやすいので注意が必要です。

【OK例:期限のby】
“Please submit the report by Friday.”
(金曜日までにレポートを提出してください。)
※金曜日というデッドライン(期限)の「そば」までに行動を完了させるイメージです。

【OK例:開始点のfrom】
“The new policy will be effective from next month.”
(新しい方針は来月から有効になります。)
※来月を「起点」としてスタートするイメージです。

【NG例:手段の間違い】
× “I sent the file from email.”
〇 “I sent the file by email.”
(メールファイルを送りました。)
※メールは「手段」なので、手元にある道具を使うイメージの「by」が正解です。「from」を使うと「メールという場所から送った」という不自然な意味になりかねません。

日常会話での使い分け

日常会話では、場所や移動に関する表現が頻出します。

【OK例:移動手段】
“I go to work by train.”
(電車仕事に行きます。)

【OK例:出身・由来】
“This present is from my grandmother.”
(このプレゼントは祖母からのものです。)
※祖母を「起点」として私の手元にやってきたイメージですね。

【応用編】似ている表現「Made by / from / of」の違いは?

【要点】

「Made by」は「制作者(人・会社)」、「Made from」は「原料(加工されて原型をとどめていない)」、「Made of」は「材料(見てわかる素材)」を表します。変化の度合いで使い分けるのがポイントです。

ここで、テストや製品表示でよく見かける「Made ~」の使い分けを整理しておきましょう。

これが分かると、製品ラベルを見るのが少し楽しくなるかもしれません。

  • Made by [人・会社]
    「~によって作られた(作者)」
    例:This cake was made by a famous chef.(有名なシェフによって作られた)
  • Made from [原料]
    「~から作られた(化学変化・原型をとどめていない)」
    例:Wine is made from grapes.(ワインはブドウから作られる)
    ※ブドウの形はもう残っていませんよね。起点(from)から遠く離れて変化したイメージです。
  • Made of [材料]
    「~でできている(物理変化・見てわかる素材)」
    例:The table is made of wood.(そのテーブルは木でできている)
    ※木目が見えて、素材がそのまま残っている場合は「of(~の属性を持つ)」を使います。

「by」と「from」の違いを学術的に解説

【要点】

認知言語学の視点では、byは「影響力の範囲内にあること」を示唆し、fromは「ソース(源)からの移動経路」に焦点を当てます。この空間認識の違いが、抽象的な時間の概念にも適用されています。

少し専門的な視点、特に認知言語学の分野からこの二つを眺めてみましょう。

言語学者のジョージ・レイコフらが提唱する「概念メタファー」の考え方によれば、私たちは抽象的な時間を「空間」として認識しています。

「by」の空間性:近接と境界
「by」は「ある対象の側面(side)」に位置することを語源としています。

学術的には、対象の影響力が及ぶ「近接領域」に焦点があります。「期限のby」が「その時までならいつでもいい(完了の点)」を表すのは、時間の流れにおける「ある境界線の手前(そば)」という空間認識が働いているからです。

「from」の空間性:ソースとパス
一方、「from」は「Source-Path-Goal(起点・経路・着点)」というスキーマ(認知枠組み)の「Source(起点)」を明示するマーカーです。

何かが生まれる場所、あるいは移動が開始される場所を指し示します。「A is different from B(AはBと違う)」という表現も、AとBが空間的に「離れている(分離している)」という認知から生まれています。

このように、物理的な位置関係のイメージが、時間や論理的な関係性(原因・区別)にまで拡張されているのです。

「期限のby」と「期間のfrom」で冷や汗をかいた話

僕がまだ海外営業部に配属されたばかりの頃、この「by」と「from」の違いを甘く見ていて、痛い目に遭ったことがあります。

ある重要なプロジェクトで、海外のクライアントから「We need the final draft by Monday.」というメールが届きました。

当時の僕は、英語を「なんとなく」で読んでいたため、「月曜日ね、はいはい」と軽く受け流し、月曜日の夕方に悠々とドラフトを送信したのです。

すると、翌朝クライアントから怒りの電話が。

「月曜日の朝イチの会議で使うと言っただろう! by Monday は『月曜になるまでに(日曜中あるいは月曜始業前)』という意味で捉えるのがビジネスの常識だ!」

僕は顔面蒼白になりました。

「from Monday(月曜日から)」なら月曜に作業を始めても良かったかもしれませんが、「by Monday」は月曜という時点が来る「その時まで」に完了していなければならなかったのです。

この失敗を通じて、「by」はデッドラインという「壁」の直前を指し、「from」はスタートラインという「線」の始まりを指すのだと、身をもって学びました。

言葉一つで信頼を失いかける怖さを知ってからは、前置詞の持つ「時間の感覚」を常に意識するようになりましたね。

「by」と「from」に関するよくある質問

ここでは、「by」と「from」の使い分けに関して、よく検索される疑問にQ&A形式で答えていきます。

Q. 「~まで」と言うとき、by と until はどう違うのですか?

A. とても良い質問ですね!「by」は「期限(~までに完了する)」という一点のタイミングを指します。一方、「until」は「継続(~までずっと続ける)」という動作の継続を表します。「5時までに帰る(by)」と「5時まで待つ(until)」の違いです。

Q. 手紙の最後で「By [名前]」と書くのは間違いですか?

A. 一般的な手紙やメールの結びでは使いません。手紙の結びは「Sincerely」などが一般的です。「Written by [名前]」なら「~によって書かれた」という意味になりますが、署名としては一般的ではありません。「From [名前]」なら「~より」として使えます。

Q. 「出身」を言うとき、I am by Tokyo. とは言えませんか?

A. 言えません。「by Tokyo」だと「東京のそばにいます」や「東京経由で」という意味になってしまいます。出身は自分が生まれた場所という「起点」を表すので、必ず「from」を使いましょう。

「by」と「from」の違いのまとめ

「by」と「from」の違い、スッキリ整理できましたか?

最後にもう一度、重要なポイントを振り返ってみましょう。

  • by:近接・手段・期限。「~のそばで」「~を使って」「~までに」という影響と接近のイメージ。
  • from:起点・原料・分離。「~から」「~を出発して」という離れていくイメージ。
  • 使い分け:期限なら「by」、開始点なら「from」。手段なら「by」、原料なら「from」。

英語の前置詞は、日本語の「てにをは」のように繊細ですが、一度その「コアイメージ」を掴んでしまえば、丸暗記する必要はありません。

「これは私の手元(by)にある手段かな?」「これはあそこ(from)から来たものかな?」とイメージすることで、自然と正しい言葉が出てくるようになるはずです。

もし、さらに英語由来の言葉や、ビジネスで使われるカタカナ語の正確な意味を知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。

英語由来語の違いまとめ:ビジネスから日常会話まで正しい使い分けを解説

言葉の解像度を上げることは、思考の解像度を上げることにも繋がります。ぜひ、日々のコミュニケーションで意識してみてくださいね。

英語学習に関するより公的な情報は、文部科学省の外国語教育サイトなども参考になります。

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