「カミングアウト」と「カムアウト」は、どちらも「秘密を打ち明ける」という意味で使われますが、日本で一般的に使われるのは「カミングアウト」です。
なぜなら、「カムアウト」は英語の動詞の原形(come out)をそのままカタカナにしたものであり、日本語の会話の中ではあまり定着していないからです。
この記事を読めば、二つの言葉の関係性や英語本来の意味がスッキリ理解でき、誤用や不自然な表現を避けることができるようになります。
それでは、まず二つの言葉の最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「カミングアウト」と「カムアウト」の最も重要な違い
日本では「カミングアウト」が名詞として定着しており、「カミングアウトする」と動詞化して使います。「カムアウト」は英語の動詞「come out」のカタカナ表記ですが、日常会話ではほとんど使われません。意味はどちらも同じです。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | カミングアウト (Coming out) | カムアウト (Come out) |
|---|---|---|
| 使用頻度(日本) | 非常に高い(一般的) | 低い(あまり使われない) |
| 英語の品詞 | 名詞・現在分詞 | 動詞 |
| 意味 | 秘密を公表すること | 秘密を公表すること(出てくる) |
| 日本語での使い方 | 「カミングアウトする」 | 「カムアウトする」(不自然) |
一番大切なポイントは、日本語として使うなら「カミングアウト」一択で問題ないということですね。
「カムアウト」と言っても通じるとは思いますが、「カミングアウトの言い間違いかな?」と思われる可能性があります。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
語源は英語の「coming out of the closet(クローゼットから出てくる)」です。暗いクローゼットの中に隠れていた状態から、外の明るい世界へ出てくるイメージが、秘密を公表するという意味になりました。
なぜ「出てくる」という意味の言葉が「秘密を打ち明ける」という意味になったのか、その成り立ちを紐解くとイメージが湧きやすくなりますよ。
「カミングアウト」の由来:クローゼットからの脱出
この言葉の元になった英語のフレーズは、“coming out of the closet” です。
直訳すると「クローゼットから出てくる」となります。
欧米では、同性愛者などの性的マイノリティが、自分のセクシュアリティを隠して生きている状態を「closeted(クローゼットに閉じこもっている)」と表現していました。
そこから、クローゼットの扉を開けて外の世界へ出てくること、つまり「隠していた本当の自分を公表すること」を「カミングアウト」と呼ぶようになったのです。
現在では、性的指向に限らず、広く「秘密にしていたことを打ち明ける」という意味で使われています。
「カムアウト」の正体:ただの動詞
一方、「カムアウト」は英語の動詞 “come out” をそのままカタカナ読みしたものです。
英語では “I want to come out.”(カミングアウトしたい)のように動詞として使いますが、日本語では「カミングアウト」という名詞形が先に広まったため、「カムアウト」という言い方は定着しませんでした。
「カムバック(帰ってくる)」や「カムホーム」などの言葉に引きずられて使われることが稀にありますが、基本的には「カミングアウト」と同じ意味のバリエーションの一つと考えて良いでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
日常会話では「カミングアウトする」という形で使います。「実は…」と切り出す場面や、友人の意外な趣味を知った時などに使えます。
言葉の違いは、具体的な使用シーンで確認するのが一番ですよね。
日常会話での自然な使い方を見ていきましょう。
「カミングアウト」を使うシーン
自分の秘密を打ち明ける時や、他人の告白について話す時に使います。
【OK例文】
- 親友に、ずっと隠していた趣味をカミングアウトした。
- 彼が実は社長の息子だったなんて、衝撃のカミングアウトだね。
- 勇気を出してカミングアウトしてくれてありがとう。
「カムアウト」を使うシーン?
基本的には使いませんが、あえて短く言いたい時や、英語のニュアンスを出したい時に使われるかもしれません。
【使用例(やや不自然)】
- そろそろカムアウトしちゃおうかな。(通じるが、カミングアウトの方が自然)
- カムアウトする勇気が必要だ。(同上)
これはNG!間違えやすい使い方
言葉の使い分けよりも、行為そのものに注意が必要なケースがあります。
- 【NG】 彼の秘密をみんなにカミングアウトしてあげたよ。
- 【OK】 彼はみんなに秘密をカミングアウトしたよ。
「カミングアウト」は本人が自発的に行うことです。他人が勝手にバラすことは「アウティング」といい、全く別の行為になります(後述)。
【応用編】似ている言葉「アウティング」との違いは?
「カミングアウト」は本人が自ら打ち明けることですが、「アウティング」は本人の了承を得ずに他人が勝手に秘密を暴露することです。アウティングは重大な人権侵害になるため、絶対に混同してはいけません。
「カミングアウト」とセットで必ず覚えておきたいのが「アウティング(Outing)」です。
この二つは、「秘密が明らかになる」という点では似ていますが、そのプロセスと性質は正反対です。
カミングアウト(Coming out)
- 主体:本人
- 意思:自発的
- ニュアンス:決意、信頼、自己開示
アウティング(Outing)
- 主体:他人(第三者)
- 意思:本人の同意なし
- ニュアンス:暴露、裏切り、人権侵害
「良かれと思って」「面白いから」といって、他人のセクシュアリティや秘密を勝手に広めることはアウティングにあたり、相手を深く傷つける行為です。
「あの人、カミングアウトしてたよ」と噂話をするのも、その場にいない人に対してはアウティングになる可能性があるので注意が必要です。
「カミングアウト」と「カムアウト」の違いを英語の視点から解説
英語では、動詞として使うなら「come out」、名詞として使うなら「coming out」と明確に使い分けます。日本語の「カミングアウトする」を直訳して “I do coming out” と言うのは間違いです。
ここでは少し専門的な視点から、英語本来の使い分けを深掘りしてみましょう。
日本語では「カミングアウトする」と動詞のように使いますが、英語では文法的な使い分けが重要です。
1. 動詞として使う場合:come out
- I want to come out to my parents.
(私は両親にカミングアウトしたい。) - He came out yesterday.
(彼は昨日カミングアウトした。)
「する」という動作を表す時は、動詞の `come out` を使います。
2. 名詞として使う場合:coming out
- His coming out was a surprise.
(彼のカミングアウトは驚きだった。) - I am afraid of coming out.
(カミングアウトすることが怖い。)
行為そのものを指す時は、動名詞の `coming out` を使います。
日本語の「カミングアウトする」につられて、英語で “I coming out” と言ってしまうと、文法的に誤り(be動詞が抜けている、または時制がおかしい)になります。
正しくは “I am coming out”(今まさにカミングアウトしている)か、”I came out”(カミングアウトした)です。
英語の授業で「I coming out」と言って直された体験談
僕も学生時代、英語の授業でこの「カミングアウト」の使い方を間違えて、先生に直された経験があります。
スピーチの練習で、「私は将来、自分の夢をみんなにカミングアウトしたいです」と言いたかったんです。
そこで自信満々にこう言いました。
“I want to coming out my dream.”
すると、ALT(外国語指導助手)の先生が苦笑いしながら教えてくれました。
「その場合は “I want to come out” か、単に “I want to tell everyone about my dream” の方が自然だよ。あと、”coming out” は特にセクシュアリティについて使われることが多いから、単なる夢の話なら “confess” や “share” の方がいいかもね」
ダブルで恥ずかしかったです。
まず、「want to」の後ろは動詞の原形(come)でなければならないのに、日本語の「カミングアウト」につられて「coming」と言ってしまったこと。
そして、「カミングアウト」という言葉が持つ、本来の「セクシュアリティの公表」という重みを理解していなかったこと。
この経験から、カタカナ語をそのまま英語として使う時は、文法とニュアンスに注意が必要だと痛感しました。
それ以来、秘密を話す時は文脈に合わせて言葉を選ぶようにしています。
「カミングアウト」と「カムアウト」に関するよくある質問
「カミングアウト」を短縮して「カミアウ」と言いますか?
いいえ、一般的ではありません。若者言葉やネットスラングとしても「カミアウ」という略称は定着していません。「カミングアウト」と言うか、単に「告白」「公表」と言う方が通じます。
「クローゼット」という言葉も日本で通じますか?
LGBTQ+のコミュニティや、用語に詳しい人の間では「クローゼット(公表していない状態)」という言葉は通じます。しかし、一般的にはまだ馴染みが薄いため、「秘密にしている」「隠している」と言い換えた方が無難です。
ビジネスで「カミングアウト」を使ってもいいですか?
はい、使えます。「実はオタクなんです」といった軽い話題から、身上に関する重要な報告まで幅広く使われています。ただし、本来の性的指向の公表という意味で使う場合は、相手がアウティング(勝手な他言)をしないよう、信頼関係を見極めることが大切です。
「カミングアウト」と「カムアウト」の違いのまとめ
「カミングアウト」と「カムアウト」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の違い:日本語では「カミングアウト」が一般的。「カムアウト」はあまり使わない。
- 英語の違い:動詞なら「come out」、名詞なら「coming out」。
- 注意点:勝手にバラす「アウティング」とは明確に区別し、絶対に行わないこと。
言葉の由来を知ると、「カミングアウト」が単なる暴露話ではなく、暗い場所から明るい場所へ勇気を出して踏み出す行為だということが感じられますよね。
これからは自信を持って、適切な言葉を選んでいきましょう。
さらに詳しいカタカナ語や外来語の使い分けについては、メディア・文化系外来語の違いまとめもぜひ参考にしてみてください。
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