「クランクアップ」と「オールアップ」の違いを解説!映画・ドラマ用語の基礎知識

「クランクアップ」と「オールアップ」は、どちらも映画やドラマの撮影終了を意味する言葉ですが、「作品全体の終了」か「個人の出番の終了」かという点に使い分けのポイントがあります。

なぜなら、一般的に「クランクアップ」は作品全体の撮影完了を指すのに対し、「オールアップ」は特定の俳優の全撮影シーンが終了したことを指す業界用語として使われているからです。

この記事を読めば、ニュースやメイキング映像で使われるこれらの言葉の意味を正確に理解でき、撮影現場の裏側をより深く楽しめるようになります。

それでは、まず二つの言葉の最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「クランクアップ」と「オールアップ」の最も重要な違い

【要点】

「クランクアップ」は作品全体の撮影終了を指すのが基本ですが、個人の終了にも使われます。一方、「オールアップ」は主に「個人の全出番終了」を指す言葉として定義されています。どちらも日本独自の和製英語です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目クランクアップ (Crank up)オールアップ (All up)
主な対象作品全体(スタッフ含む全員)個人(特定のキャスト)
意味撮影がすべて完了することその人の出番がすべて終わること
語源撮影機の手回しハンドル(クランク)すべて(All)終了(Up)
使い方の例映画『〇〇』が無事クランクアップしました主演の△△さんが本日オールアップです

一番大切なポイントは、「オールアップ」は「(その人の出番が)すべて終了」という意味で使われることが多いということですね。

ただし、現場では「〇〇さん、クランクアップです!」と個人の終了に対して「クランクアップ」を使うことも非常に多く、厳密な境界線は曖昧になりつつあります。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「クランクアップ」は、昔の映画撮影機の手回しハンドル(クランク)を回し終えることに由来する和製英語です。「オールアップ」も「全て上がり(終了)」を意味する和製英語で、それぞれの由来を知るとニュアンスが理解しやすくなります。

なぜこの二つの言葉が使い分けられているのか、その語源を紐解くと理由がよくわかりますよ。

「クランクアップ」の成り立ち:撮影機のハンドル

「クランクアップ」という言葉は、かつての映画撮影のスタイルに由来します。

昔の撮影カメラは、モーターではなく手回し式で、「クランク」と呼ばれるハンドルを回してフィルムを回転させていました

撮影が終わると、このクランクを回すのをやめて持ち上げる(アップする)ことから、「撮影終了=クランクアップ」と呼ばれるようになったと言われています。

つまり、カメラという「機械」の稼働が止まる=作品全体の撮影が終わる、というイメージですね。

「オールアップ」の成り立ち:全て上がり

一方、「オールアップ」は、「All(すべて)」と「Up(上がり=終了)」を組み合わせた言葉です。

すごろくの「上がり」のように、その人に割り当てられた全ての役割が終わった状態を指します。

作品全体の撮影がまだ続いていても、ある俳優の出演シーンがすべて撮り終われば、その人は「オールアップ」となります。

「私の出番はこれですべて終わり!」という個人の達成感を表すのに適した言葉です。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

作品全体の完成報告には「クランクアップ」、俳優個人の撮影終了報告には「オールアップ(またはクランクアップ)」を使います。ニュース記事などでは「主演の〇〇がクランクアップ」と表現されることも一般的です。

言葉の違いは、具体的なシーンで確認するのが一番ですよね。

ニュースや現場での会話、そして間違いやすい例を見ていきましょう。

「クランクアップ」を使うシーン

作品全体の撮影終了や、個人の撮影終了に対して幅広く使われます。

【OK例文】

  • 新作映画『〇〇』が昨日、都内で無事クランクアップしました。(作品全体)
  • 主演の俳優が涙のクランクアップを迎えました。(個人)
  • クランクアップ会見で監督が感謝の言葉を述べました。(作品全体)

「オールアップ」を使うシーン

主に個人の出番がすべて終わったことを強調する場合に使われます。

【OK例文】

  • (撮影現場で)「佐藤さん、これにてオールアップです!お疲れ様でした!」
  • まだ撮影は残っていますが、私は一足先にオールアップしました。
  • ゲスト出演者のオールアップに花束が贈られました。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じるかもしれませんが、少し違和感のある使い方です。

  • 【NG】 (自分一人の撮影が終わっただけで)この映画は今日でオールアップしました。
  • 【OK】 (自分一人の撮影が終わったので)私は今日でオールアップしました。

「オールアップ」は主語が「人(役者)」になることが多い言葉です。作品全体が終わったときは「クランクアップ」と言う方が一般的で自然です。

【応用編】似ている言葉「クランクイン」「クランクアウト」との違いは?

【要点】

「クランクイン」は撮影開始を意味する対義語です。「クランクアウト」は「クランクアップ」の誤用、あるいは単に現場から離れることを指す言葉として使われることがありますが、撮影終了の意味では「クランクアップ」が正解です。

関連する言葉として、「クランクイン」と「クランクアウト」についても触れておきましょう。

クランクイン

撮影が開始されることを指します。

クランク(ハンドル)を回し始める(入れる)ことに由来し、クランクアップの対義語として使われます。

クランクアウト

これは少し注意が必要な言葉です。

「イン」の反対で「アウト」と言いたくなりますが、撮影終了の意味で「クランクアウト」と言うのは、一般的には誤用とされています。

撮影終了はあくまで「クランクアップ」です。

ただし、一部で「(その日の)撮影が終わって現場を出る」という意味で使われることもあるようですが、基本的には使わない方が無難です。

「クランクアップ」と「オールアップ」を英語で言うと?

【要点】

「クランクアップ」も「オールアップ」も和製英語であり、海外では通じません。英語で撮影終了は “Wrap” や “Wrap up”、撮影完了は “Finish filming” と言います。

海外の撮影現場で「Crank up!」や「All up!」と叫んでも、不思議な顔をされてしまうかもしれません。

実はこれらは日本独自の言葉(和製英語)なんです。

英語での正しい表現

  • Wrap / Wrap up:「包む」「まとめる」という意味から、撮影終了を指します。
  • It’s a wrap!:「これにて撮影終了!」「お疲れ様でした!」という決まり文句です。
  • Finish filming / Finish shooting:「撮影を終える」という説明的な表現です。

ちなみに、英語の “crank up” は「(音量などを)上げる」「(エンジンを)始動させる」といった全く違う意味になってしまうので注意が必要です。

エキストラ参加で「オールアップ」と言われて戸惑った体験談

僕も学生時代、映画のエキストラに参加した際に、この言葉の違いで少し戸惑った経験があります。

真夏の大規模なロケで、数百人のエキストラが集められていました。朝から晩まで走り回る過酷な撮影でした。

夕方になり、スタッフさんが拡声器でこう叫びました。

「はい、エキストラの皆さん、本日のシーンで『オールアップ』になります! お疲れ様でした!」

僕は「え? 映画の撮影って今日で全部終わりなの?」と驚きました。

主演の俳優さんもまだ残っているし、明日も撮影があると聞いていたからです。

隣にいた常連のエキストラさんにこっそり聞くと、笑って教えてくれました。

「違うよ。映画自体の撮影(クランクアップ)はまだ1ヶ月先だよ。今日で『僕たちエキストラの出番』が全部終わったから、僕らが『オールアップ』ってことさ」

なるほど、と思いました。

「オールアップ」は「その人(たち)の役割の終了」を指す言葉だったんですね。

自分たちが主役の気分で「終わったー!」と達成感を感じていいんだなと分かり、皆で拍手したのを覚えています。

この経験から、言葉の主語が「作品」なのか「人」なのかを意識するようになりました。

「クランクアップ」と「オールアップ」に関するよくある質問

「クランクアップ」に花束を渡すのはなぜですか?

長期間の撮影を乗り切った労をねぎらうためです。主演俳優や監督がクランクアップ(作品終了)する際だけでなく、主要キャストが個別にオールアップする際にも、感謝の印として花束が贈られることが慣例となっています。

ドラマの途中でも「クランクアップ」と言いますか?

言います。例えば、第1話だけのゲスト出演者が撮影を終えた時、「〇〇さんクランクアップです!」と現場で声をかけます。この場合、「オールアップ」と同じ意味で使われています。

「撮了(さつりょう)」とはどういう意味ですか?

「撮影終了」の略語で、「クランクアップ」と同じ意味です。新聞やネットニュースの見出しなど、文字数を短くしたい場合によく使われる業界用語的な表現です。

「クランクアップ」と「オールアップ」の違いのまとめ

「クランクアップ」と「オールアップ」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本の使い分け:作品全体の終了は「クランクアップ」、個人の終了は「オールアップ」。
  2. 現場での慣習:個人の終了に対しても「クランクアップ」と言うことは多い。
  3. 注意点:どちらも和製英語。英語では “Wrap” を使う。

ドラマのSNS公式アカウントなどで「〇〇さんが一足先にオールアップ!」という投稿を見かけたら、「ああ、この人の出番はもう終わったんだな、物語も終盤だな」と察することができますね。

これからは自信を持って、映画やドラマの話題でこれらの言葉を使っていきましょう。

さらに詳しい業界用語や外来語の知識については、メディア・文化系外来語の違いまとめもぜひ参考にしてみてください。

スポンサーリンク