「えるぼし」と「くるみん」、企業のウェブサイトや求人票でよく見かけるマークですよね。
結論から言うと、女性のキャリア活躍を評価するのが「えるぼし」、子育て支援の手厚さを評価するのが「くるみん」です。
この記事を読めば、それぞれのマークが持つ本当の意味や認定基準の違いがスッキリ理解でき、企業選びや自社のブランディングに自信を持って活かせるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「えるぼし」と「くるみん」の最も重要な違い
「えるぼし」は女性が職場で能力を発揮しやすいかを評価し、「くるみん」は従業員の子育てを企業がどれだけ支援しているかを評価します。根拠となる法律や重視されるポイントが異なります。
まずは、結論からお伝えしますね。
この二つの認定制度の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けや見方はバッチリです。
| 項目 | えるぼし | くるみん |
|---|---|---|
| 主な目的 | 女性の個性と能力が発揮されること(女性活躍) | 次世代を担う子どもが健やかに生まれい育成されること(子育て支援) |
| 評価の視点 | 採用、継続就業、労働時間、管理職比率、多様なキャリアコース | 行動計画の策定・達成、育児休業の取得率、時短勤務制度など |
| 根拠となる法律 | 女性活躍推進法 | 次世代育成支援対策推進法(次世代法) |
| 認定の段階 | 3段階 + プラチナ | くるみん、プラチナ、トライ、プラス |
| 対象企業 | 女性活躍推進に関する状況が良い企業 | 子育てサポート企業として一定の基準を満たした企業 |
一番大切なポイントは、「えるぼし」は女性のキャリアアップや登用に焦点があり、「くるみん」は男女問わず育児と仕事の両立支援に焦点があるという点です。
バリバリ働きたい女性なら「えるぼし」、ワークライフバランスを重視して子育てしたいなら「くるみん」が取得されているかどうかが一つの目安になりますね。
目的の違い:「女性のキャリア」か「子育て支援」か
「えるぼし」は女性がいかに長く働き、管理職などで活躍できているかを重視します。「くるみん」は育休取得率や残業削減など、子育てしやすい環境整備が整っているかを重視します。
なぜ二つの認定制度が存在するのか、その目的の違いを深掘りすると、企業のスタンスが見えてきますよ。
「えるぼし」の焦点:女性の職域拡大と活躍
「えるぼし」は、単に女性が働いているだけでなく、「採用」「継続就業」「働き方(労働時間)」「管理職比率」「多様なキャリアコース」という5つの評価項目で実績を上げている企業に与えられます。
つまり、「女性が男性と同じように、あるいはそれ以上に能力を発揮し、評価されているか」という「活躍」の度合いを見ているのです。
例えば、女性管理職が多い、女性の平均勤続年数が長い、といった「結果」が出ている企業が認定されやすい傾向にあります。
「くるみん」の焦点:仕事と育児の両立支援
一方、「くるみん」は、企業が策定した「一般事業主行動計画」の目標を達成し、一定の基準(男性の育休取得実績や女性の育休取得率75%以上など)を満たした企業に与えられます。
こちらは、「子育てをしながら働き続けられる環境があるか」という「支援体制」の充実度を見ています。
「おくるみ」に包まれた赤ちゃんのマークが象徴するように、企業全体で子育てをサポートする風土があるかが問われます。
根拠法の違い:女性活躍推進法と次世代法
「えるぼし」は2016年施行の「女性活躍推進法」に基づき、女性の職業生活における活躍を推進します。「くるみん」は2005年施行の「次世代育成支援対策推進法」に基づき、少子化対策の一環として子育て支援を推進します。
少し堅い話になりますが、法律の背景を知ると理解が深まります。
えるぼし=女性活躍推進法
「えるぼし」の根拠となるのは、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)です。
この法律は、働く場面で活躍したいという女性の希望がかなう社会を目指して作られました。
企業は自社の女性活躍に関する状況を把握・分析し、課題解決のための行動計画を作ることが義務付けられています(常時雇用する労働者が101人以上の企業)。
その取り組みが優良な企業を厚生労働大臣が認定するのが「えるぼし」制度です。
くるみん=次世代育成支援対策推進法
「くるみん」の根拠となるのは、次世代育成支援対策推進法(次世代法)です。
こちらは急速な少子化の進行に対応するため、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備することを目的としています。
企業は、従業員の仕事と子育ての両立を図るための「一般事業主行動計画」を策定し、届け出る必要があります(常時雇用する労働者が101人以上の企業)。
その計画目標を達成し、一定の基準を満たした企業を認定するのが「くるみん」制度です。
詳しくは、厚生労働省の女性活躍推進法特集ページやくるみんマークについてのページも参照すると、より詳しい要件が確認できます。
【応用編】上位認定「プラチナ」や新設「トライ」との違いは?
どちらの制度にも、より高い水準を満たした企業向けの「プラチナ」認定があります。さらに「くるみん」には不妊治療支援を評価する「プラス」や、認定を目指す過程の「トライくるみん」など、バリエーションが豊富です。
「えるぼし」と「くるみん」には、さらにハイレベルな認定や、新しい種類の認定があります。
これらを知っておくと、その企業の本気度がより解像度高く見えてきますよ。
プラチナえるぼし
「えるぼし」認定企業の中でも、さらに高い水準(管理職比率や労働時間などの要件がより厳しい)を満たした企業が認定されます。
まさに「女性活躍のトップランナー」と言える企業ですね。
プラチナくるみん
「くるみん」認定企業のうち、さらに高い水準(男性の育休取得率が高いなど)の取り組みを行い、継続的に支援を実施している企業が認定されます。
くるみんのバリエーション
- トライくるみん:「くるみん」の認定基準より少し緩和された基準をクリアした企業。これから子育て支援に力を入れていく企業です。
- くるみんプラス/プラチナくるみんプラス:「くるみん」等の認定に加え、不妊治療と仕事の両立支援に取り組んでいる企業に付与されます。
「えるぼし」と「くるみん」の違いを採用視点で解説
「えるぼし」取得企業は、女性リーダーやキャリアアップの事例が豊富であることをアピールできます。「くるみん」取得企業は、育休復帰率の高さや働きやすさをアピールできます。企業は自社の強みに合わせて取得戦略を練っています。
企業の採用担当者や広報担当者は、これらのマークを戦略的に取得・活用しています。
「えるぼし」を持っている企業は、「女性だからといって補助的な業務だけでなく、責任あるポジションで活躍できる」というメッセージを発信したいと考えています。
優秀な女性人材を確保したい、ダイバーシティを推進したいという意欲の表れですね。
一方、「くるみん」を持っている企業は、「ライフイベントがあっても安心して働き続けられる」という安心感をアピールしたいと考えています。
長く安定して働いてほしい、従業員の生活を大切にしたいというメッセージです。
もちろん、両方を取得している企業も多くあります。それは「活躍」と「支援」の両輪が回っている、非常に働きがいのある環境である可能性が高いでしょう。
僕が「マークの意味」を勘違いして恥をかいた就活時代の体験談
僕が就職活動をしていた頃、お恥ずかしい失敗をしたことがあります。
ある大手メーカーの説明会でのこと。その企業は「くるみん」マークを大きく掲げていました。
僕は「女性が活躍できる会社なんだ!」と早合点し、質疑応答で意気揚々と手を挙げました。
「御社は『くるみん』を取得されていますが、女性役員の比率や、女性が新規プロジェクトをリードする機会について詳しく教えてください!」
すると、人事担当の方は少し困ったような顔をしてこう答えました。
「ご質問ありがとうございます。あ、まず『くるみん』は子育て支援の認定でして…。もちろん女性活躍も推進していますが、役員比率などの実績評価は『えるぼし』の管轄に近いですね。弊社は『えるぼし』はまだ申請中でして…」
会場に流れる微妙な空気。顔から火が出るかと思いました。
僕は「認定マーク=とにかく良い会社」と雑に捉えていて、それぞれのマークが「何を評価しているのか」まで理解していなかったのです。
「くるみん」があるからといって、必ずしも女性管理職が多いとは限らない。逆に「えるぼし」があっても、男性の育休取得が進んでいるとは限らない。
「イメージだけで判断せず、その根拠となる中身を知ることの大切さ」を痛感した出来事です。
それ以来、企業のウェブサイトを見る時は、どのマークを取得しているかだけでなく、その認定基準となる具体的な数値(育休取得率や管理職比率など)もセットで確認するようになりました。
「えるぼし」と「くるみん」に関するよくある質問
両方の認定を同時に取得することはできますか?
はい、可能です。実際に、女性活躍推進と子育て支援の両方に力を入れている企業は、「えるぼし」と「くるみん」の両方を取得しています。両方取得している企業は、働きやすさとキャリア形成の両面で環境が整っている可能性が高いと言えます。
どちらの認定の方が取得が難しいですか?
一概には言えませんが、評価基準が異なります。「くるみん」は行動計画の目標達成や育休取得率など「プロセスと実績」が重視される一方、「えるぼし」は管理職比率や勤続年数など「現状の実績数値」が厳しく問われます。企業の実情によっては、実績数値が求められる「えるぼし」や上位の「プラチナ」認定の方がハードルが高いと感じる場合もあります。
認定を取得する企業のメリットは何ですか?
最大のメリットは「企業イメージの向上」と「優秀な人材の確保」です。求職者に対してホワイト企業であることをアピールできます。また、公共調達(国や自治体の仕事の入札)において加点評価される場合があり、ビジネス上の実利もあります。さらに、日本政策金融公庫による低利融資の対象になるなど、資金調達面での優遇措置もあります。
「えるぼし」と「くるみん」の違いのまとめ
「えるぼし」と「くるみん」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 目的の違い:「えるぼし」は女性の活躍推進、「くるみん」は子育て支援。
- 根拠法の違い:「えるぼし」は女性活躍推進法、「くるみん」は次世代法。
- 評価の視点:「えるぼし」はキャリア形成や登用実績、「くるみん」は両立支援制度の利用実績。
- 選び方の視点:キャリア重視なら「えるぼし」、ワークライフバランス重視なら「くるみん」をチェック。
言葉の背景にある法律や目的を理解すると、単なるマークの違いだけでなく、その企業が何を大切にしているかというメッセージまで読み取れるようになります。
これからは自信を持って、企業の取り組みを見極めていきましょう。
さらに詳しいビジネス用語や制度の違いについては、ビジネス用語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてください。