「誹謗」と「中傷」の違い!根拠の有無が決定的な差

「誹謗」と「中傷」、ニュースやSNSでよく見かける言葉ですが、具体的にどう違うのか説明できますか?

実はこの2つの言葉、単なる「悪口」か、それとも「根拠のない嘘」を含むかで使い分けるのが基本です。

どちらも相手を傷つける行為には変わりありませんが、その性質を正しく理解しておくことは、トラブルを避けるためにも非常に重要ですね。

この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的な意味の違いから、法的なリスク、「批判」との境界線までスッキリと理解でき、自信を持って言葉を選べるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「誹謗」と「中傷」の最も重要な違い

【要点】

「誹謗」は単なる悪口を言うこと、「中傷」は根拠のない嘘で名誉を傷つけることだと区別します。どちらも人を傷つける行為ですが、「中傷」の方がより虚偽のニュアンスが強くなります。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目誹謗(ひぼう)中傷(ちゅうしょう)
中心的な意味他人の悪口を言うこと根拠のないことを言って名誉を傷つけること
内容の真偽問わない(事実でも悪口なら該当)虚偽(嘘・デマ)であることが前提
ニュアンス罵る、非難する陥れる、社会的信用を落とす
セットでの使用「誹謗中傷」として使われることが多い「誹謗中傷」として使われることが多い

簡単に言うと、相手を「バカ」などと罵るのが「誹謗」、ありもしない浮気の噂を流すなどが「中傷」というイメージですね。

現代では、これらを合わせて「誹謗中傷」とひとまとめにして使うケースがほとんどです。

しかし、厳密には「嘘が含まれているかどうか」という点に大きな違いがあることを知っておくと、ニュースなどの理解度が深まりますよ。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「誹謗」は「そしる(悪く言う)」という意味の漢字の組み合わせで、「中傷」は「中(あ)てる(傷を負わせる)」という意味から来ています。言葉の暴力か、精神的な傷害かというイメージの違いがあります。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「誹謗」の成り立ち:「誹」と「謗」が表す“そしる”イメージ

「誹(ひ)」も「謗(ぼう)」も、どちらも「そしる(悪口を言う)」という意味を持つ漢字です。

つまり、「誹謗」とは、同じ意味の漢字を重ねて「悪口を言うこと」を強調した言葉なんですね。

ここには「嘘か本当か」という要素よりも、「悪意を持って言葉を投げつける」という行為そのものに焦点が当たっています。

「中傷」の成り立ち:「中」と「傷」が表す“傷つける”イメージ

一方、「中傷」の「中」は「あたる(的中)」という意味で使われています。「傷」は文字通り「きず」ですね。

もともとは「中傷(ちゅうしょう)」ではなく、「中傷(ちゅうしょう)」と書いて「傷にあてる」つまり「相手に手痛い傷を負わせる」という意味合いがありました。

そこから転じて、根拠のないことを言いふらして、相手の評判や名誉を傷つける行為を指すようになりました。

「誹謗」が「言葉の攻撃」なら、「中傷」は「信用破壊工作」といったイメージを持つと分かりやすいでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

事実に基づかない悪口全般には「誹謗」、デマや嘘で評判を落とす行為には「中傷」を使います。SNSでのトラブルなどでは、これらを合わせて「誹謗中傷」と表現するのが一般的です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

職場で発生しがちなハラスメントやトラブルを想定すると、イメージしやすいですよ。

【OK例文:誹謗】

  • 部下に対して「無能」「給料泥棒」と誹謗する行為は、パワハラに該当する可能性があります。
  • 競合他社の製品を根拠なく誹謗することは、不正競争防止法に抵触する恐れがある。

【OK例文:中傷】

  • 「あの社員は横領している」という根拠のない中傷メールが社内に出回った。
  • 事実無根の中傷によって、取引先からの信用を失ってしまった。

日常会話での使い分け

SNSやご近所付き合いなど、身近な場面でも使い分けられます。

【OK例文:誹謗】

  • SNSで容姿を誹謗するコメントが書き込まれ、問題になっている。
  • 気に入らないからといって、陰で人を誹謗するのは良くないよ。

【OK例文:中傷】

  • ネット掲示板に「犯罪歴がある」と中傷され、精神的に追い詰められた。
  • 根も葉もない噂で他人を中傷するなんて、許されることではない。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、厳密には少しズレている使い方を見てみましょう。

  • 【NG】彼は私の失敗を指摘して中傷した。
  • 【OK】彼は私の失敗を指摘して非難した(または批判した)。

失敗という「事実」に基づいた指摘であれば、それは根拠のない嘘ではないため「中傷」とは言いません。

単に責められたのであれば「非難」、論理的にダメ出しされたなら「批判」が適切でしょう。

【応用編】似ている言葉「批判」との違いは?

【要点】

「批判」は物事の是非を論理的に検討し、評価することです。「誹謗中傷」とは異なり、相手の人格攻撃ではなく、改善や議論を目的とした建設的な意見である点が決定的に違います。

「誹謗中傷」と混同されがちですが、全く性質が異なるのが「批判」です。

「批判」とは、物事の良い点・悪い点を検討し、論理的に評価することを指します。

例えば、「この政策には財源の裏付けがないため、実現性に乏しい」というのは「批判」です。

これは相手の人格を攻撃しているわけではなく、対象となる事柄について論じているからですね。

一方、「こんな政策を出すなんて、頭がおかしいんじゃないか」というのは、論理性よりも感情的な攻撃が強いため「誹謗」に近くなります。

「人格を攻撃しているか」「論理的な根拠があるか」が、批判と誹謗中傷を分ける大きな境界線と言えるでしょう。

「誹謗」と「中傷」の違いを法的な視点から解説

【要点】

法的には「名誉毀損罪」や「侮辱罪」が関わります。事実を摘示して社会的評価を下げるのが名誉毀損、事実を示さずに見下すのが侮辱です。「誹謗中傷」はこれら法的概念を含む広い言葉として使われます。

実は、法律の条文には「誹謗中傷罪」という犯罪は存在しません。

しかし、誹謗や中傷を行うと、刑法上の「名誉毀損(きそん)罪」「侮辱罪」に問われる可能性があります。

公的なルールとして、これらがどう区別されているかを知っておくことは、身を守る上でも大切です。

【名誉毀損罪】
公然と、事実を摘示して(具体的な事柄を挙げて)、人の社会的評価を低下させた場合に成立します。
例:「Aさんは不倫をしている」とネットに書き込む(※本当のことでも罪になる場合があります)。

【侮辱罪】
事実を摘示せずに、公然と人を侮辱した場合に成立します。
例:「バカ」「デブ」「チビ」などとネットで罵る。

つまり、具体的な「中傷(嘘や事実暴露)」は名誉毀損に、抽象的な「誹謗(悪口)」は侮辱罪になりやすい、という傾向があります。

政府広報オンラインなどでも、インターネット上の書き込みに関する注意喚起が行われています。

言葉のナイフは、時に法的な責任を伴う凶器になることを、私たちは忘れてはいけませんね。

詳しくは政府広報オンラインなどでご確認いただけます。

僕が「批判」のつもりで「中傷」してしまった苦い経験

僕も過去に、言葉の選び方を間違えて、冷や汗をかいた経験があります。

SNSを始めたばかりの頃、ある有名な評論家の意見に対し、若気の至りで反論を書き込みました。「この意見は間違っている」と論理的に書いたつもりでした。

しかし、熱くなるあまり、最後に余計な一言を付け加えてしまったんです。

「こんな適当なことを言うなんて、裏でお金でも貰ってるんじゃないですか?」

自分としては軽い皮肉のつもりでした。しかし、これは完全に根拠のない「中傷」です。

すぐにフォロワーの方から、「意見はわかりますが、その最後の一文は名誉毀損になりかねないですよ」と優しく諭すDMをいただきました。

ハッとして、顔から火が出るほど恥ずかしくなりました。

「批判」をしているつもりが、いつの間にか相手の人格や信用を傷つける「中傷」にすり替わっていたのです。

慌てて削除して謝罪しましたが、あの時の「やってしまった」という後悔は今でも忘れられません。

この経験から、意見を言うときは「事柄」に対してのみ行い、決して「憶測」で人を攻撃してはいけないと深く心に刻んでいます。

画面の向こうには生身の人間がいる。当たり前のことですが、言葉を発信する前には必ず一呼吸置くようになりました。

「誹謗」と「中傷」に関するよくある質問

「誹謗中傷」とひとまとめにして良いですか?

はい、日常会話やニュースでは「誹謗中傷」とセットで使うのが一般的です。厳密な区別よりも、「悪口やデマで他人を攻撃する行為全般」を指す言葉として定着しているため、無理に使い分ける必要はありません。

本当のことを言っただけでも罪になりますか?

はい、なる可能性があります。たとえ真実であっても、公然と具体的な事実を挙げて相手の社会的評価を下げれば「名誉毀損罪」が成立することがあります。「本当のことなら言ってもいい」というのは大きな誤解ですので注意が必要です。

SNSで誹謗中傷されたらどうすればいいですか?

まずは反応せず、証拠(スクリーンショットやURL)を保存しましょう。その上で、サイト管理者への削除依頼や、弁護士・警察への相談を検討してください。総務省の「違法・有害情報相談センター」など、公的な相談窓口も利用できます。

「誹謗」と「中傷」の違いのまとめ

「誹謗」と「中傷」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本のイメージ:「誹謗」は悪口、「中傷」は根拠のない嘘。
  2. セットでの使用:現代では「誹謗中傷」としてまとめて使われることが多い。
  3. 法的なリスク:事実の有無に関わらず、名誉毀損や侮辱罪になる可能性がある。
  4. 批判との違い:人格攻撃ではなく、論理的な評価であれば「批判」。

言葉は使い方次第で、薬にも毒にもなります。

「誹謗」や「中傷」という言葉の意味を正しく理解することは、自分自身が加害者にならないための第一歩でもあります。

これからは、相手へのリスペクトを持った言葉選びで、より良いコミュニケーションを築いていきましょう。

言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、社会・関係の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。

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