「initiate」と「start」の違いとは?「始める」のニュアンスを解説

「initiate」と「start」、どちらも「始める」という意味で使われる英語ですが、その使い分けに迷うことはありませんか?

特にビジネスシーンなどで、「ここは initiate を使うべきか、それとも start でいいのか…?」と悩んでしまう方もいるかもしれませんね。

実はこの二つの単語、何か新しいプロセスや計画を「始動させる」のか、それとももっと一般的に物事を「始める」のか、というニュアンスとフォーマルさに違いがあるんです。

この記事を読めば、「initiate」と「start」それぞれの意味や語源、具体的な使い分け、さらには「commence」や「begin」といった類義語との違いまでスッキリ理解できます。もう英語で「始める」と表現するときに迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「initiate」と「start」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、新しいプロセス、計画、行動などを公式に、あるいは意図的に「始動させる」「着手する」なら「initiate」(フォーマル)、より一般的で日常的な物事の「始まり」全般を指すなら「start」と覚えるのが簡単です。「initiate」は能動的で改まった響きを持ち、「start」はより広範でカジュアルな場面でも使えます。

まず、結論からお伝えしますね。

「initiate」と「start」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 initiate start
中心的な意味 (新しいプロセス・計画・行動などを)開始する、始動させる、着手する 始まる、開始する、出発する、(エンジンなどが)かかる
フォーマル度 高い(フォーマル) 普通(フォーマル・インフォーマル両方)
使われる場面 プロジェクト、交渉、法的手続き、改革、会員資格など、新しい段階やプロセスの開始 仕事、会話、旅行、機械の作動、イベントなど、幅広い開始全般
ニュアンス 意図的、能動的、公式的、初動 一般的、瞬間的、物理的な動き出しも含む
品詞 動詞(他動詞が多い) 動詞(自動詞・他動詞)、名詞

一番大切なポイントは、「initiate」は単に始まるだけでなく、何か新しいプロセスや段階に「着手する」「口火を切る」という能動的でフォーマルなニュアンスが強いことです。

日常会話で「さあ、始めよう!」と言う時に “Let’s initiate!” と言うのは非常に不自然です。こういう場合は “Let’s start!” や “Let’s begin!” が適切ですね。

一方で、会社が新しいプロジェクトを正式に「開始する」ことを発表するような場合は、「initiate」を使う方がよりプロフェッショナルで的確な印象を与えます。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「initiate」はラテン語の「initium」(始まり、入り口)が語源で、「中に入る」「始める」ことから、新しい段階やプロセスへの導入を示唆します。「start」は古英語の「styrtan」(跳び上がる、急に動く)が語源で、より瞬間的で広範な動作の開始を意味します。

この二つの「始める」が持つニュアンスの違いは、それぞれの言葉のルーツを探ることで、より深く理解することができますよ。

「initiate」の成り立ち:「入り口に入る」からプロセス開始へ

「initiate」の語源は、ラテン語の「initium(イニティウム)」に遡ります。これは「始まり」「開始」「入り口」などを意味する言葉です。英語の「initial(最初の)」も同じ語源を持っています。

動詞形「initiare」は「始める」という意味合いを持ちますが、特に「(儀式などを通じて)秘儀を伝授する」「加入させる」といった意味合いもありました。これは、ある集団や知識体系の「入り口に入る」ことを意味します。

この「新しい段階や領域に入る・入れる」というイメージから、「initiate」は、単なる開始ではなく、新しい計画、プロセス、交渉、あるいはメンバーシップなどを意図的に「始動させる」「着手する」という、少し改まったニュアンスを持つようになったと考えられます。

「start」の成り立ち:「跳び上がる」から一般的な開始へ

「start」の語源は、以前の記事でも触れましたが、古英語の「styrtan」に由来し、「跳び上がる」「急に動く」「飛び出す」といった瞬間的な動きを表す言葉でした。

この「静止状態から動き出す」という基本的なイメージが、「start」の核心です。そこから転じて、物事の開始、機械の始動、出発など、非常に幅広い「始まり」を指す、最も一般的で基本的な単語として定着しました。

「initiate」のような「新しいプロセスへの着手」という特定のニュアンスは元々なく、日常的なことからフォーマルなことまで、あらゆる「始まり」に使える汎用性の高さが特徴ですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「We will initiate the project next Monday.」(来週月曜にプロジェクトを開始します)、「The meeting will start at 10 AM.」(会議は午前10時に始まります)。日常では「Let’s start playing the game.」(ゲームを始めよう)のように使いますが、新しい習慣を始める意図なら「I decided to initiate a new morning routine.」も可能です(やや硬い表現)。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。ビジネスシーンやフォーマルな場面、日常会話での使い方、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーン・フォーマルな場面での使い分け

特に「initiate」は、これらの場面で使われることが多いです。

【OK例文:initiate】

  • The company plans to initiate a new marketing campaign. (その会社は新しいマーケティングキャンペーンを開始する予定だ。)
  • We need to initiate negotiations with the supplier immediately. (我々は直ちに供給業者との交渉を開始する必要がある。)
  • The government will initiate reforms in the tax system. (政府は税制の改革に着手するだろう。)
  • He was initiated into the board of directors last month. (彼は先月、取締役会に迎え入れられた。)

キャンペーン、交渉、改革、組織への加入など、新しい段階やプロセス、行動を意図的に始めるニュアンスが強いですね。

【OK例文:start】

  • Let’s start the meeting on time. (時間通りに会議を始めましょう。)
  • The presentation will start in five minutes. (プレゼンテーションは5分後に始まります。)
  • She started her own business last year. (彼女は昨年、自身の事業を始めた。)
  • Please start the engine. (エンジンをかけてください。)

会議の開始、事業の開始、エンジンの始動など、より一般的で広範な「始まり」に使われています。「initiate a meeting」も文法的には可能ですが、通常の会議であれば「start」の方が一般的です。

日常会話での使い分け

日常会話では「start」が圧倒的に多く使われます。「initiate」を使うと不自然に聞こえることが多いでしょう。

【OK例文:initiate】

  • She decided to initiate a conversation with the stranger. (彼女は見知らぬ人に話しかけることにした。)(会話というプロセスを開始する意図)
  • He initiated legal action after the accident. (彼は事故の後、法的措置を開始した。)(フォーマルな文脈が日常会話で語られる場合)

日常会話で「initiate」が使われるのは、このように少し改まった状況や、「会話を始める」のように特定の行動に着手する意図を強調したい場合に限られることが多いです。

【OK例文:start】

  • Let’s start dinner. (夕食を始めよう。)
  • The movie has already started. (映画はもう始まっているよ。)
  • When did you start learning guitar? (いつギターを習い始めたの?)
  • It started raining heavily. (雨が激しく降り始めた。)

食事、映画、習い事、天候など、日常のあらゆる「始まり」に「start」が使えますね。

これはNG!間違えやすい使い方

フォーマルさの度合いを間違えると、不自然な響きになります。

  • 【NG】 Let’s initiate the party! (パーティーを開始しよう!)
  • 【OK】 Let’s start the party! (パーティーを始めよう!)

友人同士のパーティーのような非常にインフォーマルな場面で「initiate」を使うと、堅苦しく、場違いな印象を与えます。「start」が適切です。

  • 【△】 The car wouldn’t initiate.
  • 【OK】 The car wouldn’t start. (車のエンジンがかからなかった。)

エンジンの始動のような物理的な動き出しには、「start」を使うのが一般的です。「initiate」を使うことは稀で、もし使うとすれば、エンジン始動の「プロセスを開始できなかった」というような、非常に技術的で回りくどい言い方になってしまいます。

  • 【△】 He started the legal procedures.
  • 【OK】 He initiated the legal procedures. (彼は法的手続きを開始した。)

法的手続きの開始のようなフォーマルな文脈では、「initiate」の方がより適切でプロフェッショナルな響きを持ちます。「start」でも間違いではありませんが、ややカジュアルに聞こえる可能性があります。

【応用編】似ている言葉「commence」「begin」との違いは?

【要点】

「commence」は「initiate」よりもさらにフォーマルで、式典や公的な行事の「開始」によく使われます。「begin」は「start」とほぼ同じ意味で使えますが、ややフォーマルな響きがあり、緩やかなプロセスの始まりを示すこともあります。

「initiate」や「start」と意味が近い他の「始める」系の単語との違いも確認しておきましょう。

「commence」との違い

「commence」は、以前の記事でも触れましたが、「start」よりもずっとフォーマルな響きを持つ単語です。「initiate」と比較しても、「commence」の方がさらにフォーマル度が高いと言えます。

特に、式典、会議、裁判、取引、学期など、公的で儀式的なニュアンスを伴う「開始」によく使われます。「initiate」がプロセスや計画の「始動」に焦点を当てるのに対し、「commence」はその場の「開始宣言」のようなニュアンスが強い場合があります。

例:The graduation ceremony will commence at 10 AM. (卒業式は午前10時に開始されます。)

例:The trial is scheduled to commence next week. (裁判は来週開始される予定だ。)

「begin」との違い

「begin」は「start」と非常に意味が近く、多くの場面で置き換え可能です。最も一般的で基本的な「始める」「始まる」を表す動詞の一つです。

「start」との違いとしては、「start」が瞬間的な動き出しを含むのに対し、「begin」はプロセスや状態の緩やかな始まりを示すことがある点、そして「start」よりもわずかにフォーマルな響きを持つとされる点です。「initiate」や「commence」ほどの硬さはありませんが、「start」よりは少し改まった印象を与えることがあります。

例:Let’s begin the lesson. (≒ start) (授業を始めましょう。)

例:It began to rain. (≒ started) (雨が降り始めた。)

例:I began my career as a teacher. (私は教師としてキャリアを始めた。)

「initiate」と「start」の違いを英語の専門家視点で解説

【要点】

語彙論的に、「initiate」はラテン語由来で、特定のプロセスや段階への「導入」や「開始」という限定的な意味を持ち、フォーマルな文体で用いられます。一方、「start」はゲルマン語系の基本語彙であり、「動き出す」という物理的な意味から派生した広範な「始まり」をカバーし、多様な文体で使われます。「initiate」は他動詞用法が主ですが、「start」は自動詞・他動詞、さらに名詞としても機能します。

英語の専門家、例えば語彙論や文体論の研究者の視点から見ると、「initiate」と「start」の違いは、語源、意味範囲、文法的機能、そして使用される文体(レジスター)のレベルに明確に現れます。

語源と文体(レジスター):「initiate」はラテン語の「initiare(始める、加入させる)」に由来する言葉で、学術的、公式、法的な文脈など、フォーマルなレジスターで主に使用されます。ラテン語由来の単語が持つ硬質な響きが、そのフォーマルさを特徴づけています。

一方、「start」は古英語の「styrtan(跳び上がる、急に動く)」に由来するゲルマン語系の基本的な語彙です。そのため、日常会話からビジネス文書まで、非常に広いレジスターで使用され、より口語的でダイナミックな印象を与えます。

意味範囲と文法的機能:「initiate」の中心的な意味は、何か新しい体系的なプロセス、計画、行動、あるいは関係性を「始動させる」「着手する」ことです。多くの場合、意図的で能動的な行為を含意し、他動詞として使われることが一般的です(例: initiate a project, initiate contact)。

対照的に、「start」は「静止から動きへ」という物理的な変化を根源的なイメージとし、そこから派生して時間的な始まり、活動の開始、機械の作動、出発など、極めて広範な「始まり」をカバーします。自動詞(例: The meeting started.)としても他動詞(例: start the engine)としても、さらに名詞(例: a good start)としても機能し、文法的な柔軟性が非常に高いです。

専門的な観点からは、「initiate」は「start」や「begin」よりも意味的に限定されており、特定の種類の「始まり」(=新しいプロセスの開始)を指す場合に選択される語彙と言えます。文脈に応じてこれらの動詞を使い分けることは、英語のニュアンスを正確に捉え、表現の豊かさを示す上で重要となります。

僕がカジュアルな場面で「initiate」を使い、場を凍らせた体験談

これは、僕がまだ英語でのコミュニケーションに慣れていなかった頃、海外の友人たちとの集まりでやらかしてしまった話です。

週末に友人宅で、数人でボードゲームをしようという話になりました。みんなで箱を開けて準備が整い、さあ始めよう!という雰囲気になったとき、僕が張り切って口を開きました。少しフォーマルな単語を知っているぞ、と見せたかったのかもしれません。

“Alright, guys! Let’s initiate the game!”

その瞬間、場の空気が一瞬「シーン…」となったのを覚えています。友人たちは顔を見合わせ、数秒の沈黙の後、一人が「Initiate? Wow, so serious!(開始?わお、すごく真面目だね!)」と冗談めかして言いました。その後、みんな笑ってくれましたが、僕は顔から火が出るほど恥ずかしかったです。

友人とのボードゲームという、この上なくカジュアルな場面で、「initiate」というフォーマルで硬い言葉を選んでしまったのです。まるで、これから国家間の重要会議でも始めるかのような大げさな響きになってしまったんですね。

もちろん、正しくは “Let’s start the game!” や “Let’s begin!” でした。後で友人にも「initiate は普通、もっと公式なこと、例えば新しいプロジェクトとか手続きとかを始める時に使うんだよ」と優しく教えてもらいました。

この経験から、単語の意味だけでなく、その単語が持つ「フォーマルさの度合い」や「使われる場面」を理解することが、いかに重要かを痛感しました。TPOに合わせた言葉選びができないと、意図せず相手に違和感を与えたり、場違いな印象を与えてしまったりするんですよね。

それ以来、新しい単語を学ぶときは、意味だけでなく、どのような状況で使われるのか、例文や文脈を注意深く確認するようにしています。

「initiate」と「start」に関するよくある質問

Q. 「initiate」と「start」は置き換え可能ですか?

A. 置き換えられない場合が多いです。「start」は非常に広範囲な「始まり」に使えるため、「initiate」が使える場面(例:プロジェクトの開始)で「start」を使っても意味は通じることが多いです(ただし、フォーマルさは失われます)。しかし、「initiate」は「新しいプロセスや計画の始動」という特定のニュアンスを持つため、「start」が使われる多くの場面(例:エンジンをかける、雨が降る、パーティーが始まる)で「initiate」を使うと不自然になります。

Q. 会議を始める時はどちらを使えばいいですか?

A. 通常は「start」を使うのが一般的で自然です。「Let’s start the meeting.」のように言います。非常に格式高い公式な会議や、何か新しい議題やフェーズに入ることを強調したい特別な場合には「initiate」や「commence」を使うこともあり得ますが、日常的なビジネスミーティングであれば「start」で十分です。

Q. 「新しい習慣を始める」は英語でどう言いますか?

A. この場合は「start a new habit」が最も一般的で自然な表現です。「I decided to start a new habit of waking up early.」(早起きの新しい習慣を始めることにした)のように使います。「initiate a new habit」と言うことも文法的には可能ですが、「新しい習慣というプロセスに着手する」という硬い響きになり、日常会話ではあまり使われません。

「initiate」と「start」の違いのまとめ

「initiate」と「start」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 核心的な違い:「initiate」は新しいプロセスや計画を意図的に「始動させる」、「start」は一般的な物事の「始まり」。
  2. フォーマル度:「initiate」はフォーマル、「start」は一般的(フォーマルでもカジュアルでもOK)。
  3. 語源イメージ:「initiate」は「入り口に入る」→プロセス開始。「start」は「跳び上がる」→動き出し・開始。
  4. ニュアンス:「initiate」は能動的、初動、公式的。「start」は瞬間的、物理的、汎用的。
  5. 使い分け:公式なプロジェクト開始は「initiate」、日常的な会議や動作の開始は「start」。
  6. 類義語:「commence」はさらにフォーマル(式典など)、「begin」は「start」に似ているがややフォーマル。

これらのポイントを押さえれば、もう英語で「始める」を表現する際に、「initiate」と「start」のどちらを使うべきか迷うことは少なくなるはずです。

特に重要なのは、言葉が使われる場面のフォーマルさを意識すること。適切な単語を選ぶことで、あなたの英語はより自然で、相手に意図が正確に伝わるようになります。自信を持って使い分けていきましょう。カタカナ語・外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。