「Inventory」と「Stock」、どちらも日本語では「在庫」と訳されますが、グローバルビジネスやシステム開発の現場で、この二つのニュアンスの違いに戸惑ったことはありませんか?
結論から言うと、この二つの違いは「資産価値のある全在庫リスト(Inventory)」と「すぐに販売・使用できる保管在庫(Stock)」という範囲と目的の違いにあります。
「Inventory」は会計や管理の視点が強く、「Stock」は物流や店舗の現場視点が強い言葉。
この記事を読めば、製造業から小売業まで、状況に合わせて正確な英単語を選べるようになり、海外とのコミュニケーションやシステム設計での誤解を防げるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから一覧表で詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「Inventory」と「Stock」の最も重要な違い
基本的には、原材料・仕掛品・完成品を含めた資産全体を指すのが「Inventory」、販売可能な完成品として倉庫や棚にあるものを指すのが「Stock」です。Inventoryは「目録・リスト」のニュアンス、Stockは「備蓄・現物」のニュアンスを持ちます。
まず、結論からお伝えしますね。
「Inventory」と「Stock」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、ビジネスメールや会議での使い分けはバッチリです。
| 項目 | Inventory | Stock |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 棚卸資産、在庫目録 | 手持ち在庫、備蓄 |
| 対象範囲 | 広い(原材料、仕掛品、完成品) | 狭い(主に完成品、商品) |
| 視点 | 会計、資産管理、データ | 物流、販売、現物 |
| 使われる場面 | 決算、資産評価、生産管理 | 店舗、倉庫、品切れ確認 |
| ニュアンス | 「リスト化された資産」 | 「積み上げられた物」 |
一番大切なポイントは、「製造業において、原材料や作りかけのモノ(仕掛品)を含むのがInventory、完成して売れる状態のモノがStock」という区分けです。
ただし、小売業(完成品を仕入れて売るだけ)の場合は、両者がほぼ同義で使われることもあります。
なぜ違う?言葉の定義とカバーする範囲から本質を掴む
「Inventory」はラテン語の「発見する・リストにする」が語源で、詳細な明細や資産価値に重きを置きます。「Stock」は古期英語の「木の幹・切り株」が語源で、そこに蓄えられた物資や供給源という現物に重きを置きます。
なぜ同じ「在庫」なのに使い分ける必要があるのか、言葉の成り立ちから紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「Inventory」の定義:網羅的なリスト
「Inventory」は、ラテン語の「inventarium(発見されたもの、リスト)」に由来します。
これは、倉庫の中に何があるかを洗い出し、詳細にリスト化したもの(目録)というニュアンスが強い言葉です。
ビジネスでは、まだ売れる状態ではない「原材料」や「製造途中の部品」であっても、会社の資産として価値があるものはすべて「Inventory」に含まれます。
会計用語の「棚卸資産」がこれに当たります。
「Stock」の定義:すぐに使える備蓄
一方、「Stock」は、木の幹や切り株(stump)を意味する言葉から派生し、「蓄え」「供給源」という意味になりました。
これは、いつでも取り出して使えるようにストック(保管)してある完成品を指します。
お店の棚(Shelf)に並べる前のバックヤードにある商品や、倉庫に積まれた出荷待ちの製品が「Stock」のイメージです。
「在庫切れ(Out of stock)」と言うように、商売の現場で「売るモノがあるかないか」を語る際によく使われます。
具体的な例文で使い方をマスターする
決算処理や生産管理の話では「Inventory」、日々の店舗運営や在庫確認の話では「Stock」を使うのが一般的です。Inventoryは「管理する」もの、Stockは「持っている(ある)」ものという動詞との相性もあります。
言葉の違いは、具体的なビジネスシーンで確認するのが一番ですよね。
経理、工場、店舗など、場面別の使い分けを見ていきましょう。
「Inventory」を使うケース
会社全体の資産管理や、生産プロセス全体を指す場合に使います。
【OK例文:Inventory】
- 期末の決算に向けて、実地棚卸(Physical Inventory)を行う。
- 過剰なInventory(原材料含む)を削減して、キャッシュフローを改善する。
- 新しいInventory管理システムを導入して、部品の調達から最適化する。
- Inventory Turnover(在庫回転率)を分析する。
「Stock」を使うケース
顧客への販売や、倉庫内の現物の有無を指す場合に使います。
【OK例文:Stock】
- 申し訳ありません、その商品は現在Out of Stock(在庫切れ)です。
- クリスマス商戦に備えて、人気商品のStockを十分に確保した。
- 倉庫(Warehouse)にどれくらいStockが残っているか確認してくれ。
- In Stock(在庫あり)の商品なら、即日発送が可能です。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることもありますが、ビジネスの文脈として不自然な例を確認しておきましょう。
- 【NG】(工場長に向かって)来月の生産に必要な鉄板のStockはありますか?
- 【OK】(工場長に向かって)来月の生産に必要な鉄板のInventory(またはRaw materials)はありますか?
原材料に対して「Stock」を使うのは少し違和感があります。「Stock」は「製品として完成していて、あとは出すだけ」というニュアンスが強いため、加工前の材料は「Inventory」の一部、あるいは具体的に「Material」と呼ぶ方が正確です。
【応用編】似ている言葉「Supply」「Reserve」との違いは?
「Supply」は供給そのものや、消耗品(Office supplies)を指すことが多いです。「Reserve」は特定の目的のために取り分けておく予備在庫を指します。Stockが「販売用」なら、Reserveは「非常用・予約済み」といったニュアンスです。
「Inventory」「Stock」と関連して使われる言葉も整理しておきましょう。
Supply(サプライ)は、「供給」という意味ですが、複数形(Supplies)で使われると「備品・消耗品」を指すことがよくあります。
「Office supplies(事務用品)」などが代表例ですね。販売用商品(Merchandise)とは区別されます。
Reserve(リザーブ)は、「予備」「取っておく」という意味です。
「Safety Stock(安全在庫)」とも似ていますが、特定の注文や緊急事態のために通常の販売ルートから隔離して確保してある在庫を指す場合に便利です。
「Inventory」と「Stock」の違いを会計・サプライチェーンの視点から解説
会計上、B/S(貸借対照表)に載る資産価値としては「Inventory」が使われます。これには原材料(Raw materials)、仕掛品(Work in process)、製品(Finished goods)の3つが含まれます。一方、「Stock」は主にこの中の「製品(Finished goods)」の部分に相当します。
ここでは少し専門的に、会計やSCM(サプライチェーン・マネジメント)の視点から深掘りしてみましょう。
製造業の会計において、「Inventory(棚卸資産)」は以下の3つに分類されます。
- Raw materials(原材料):加工される前の素材。
- Work in process(仕掛品):製造ラインにあり、まだ完成していないもの。
- Finished goods(製品):完成して、出荷可能な状態のもの。
これら全ての合計金額が、会社の資産としての「Inventory」です。
対して「Stock」は、一般的に3番目の「Finished goods(製品)」の状態にあるものを指します。
SCMの現場では、「Inventory管理」と言うと、部品調達から製造ライン、出荷までの全工程の最適化を意味します。
一方、「Stock管理」と言うと、完成品倉庫や店舗での入出庫管理や数量管理を指すことが多いです。
つまり、「Inventoryは経営・管理視点、Stockは現場・物流視点」という使い分けができるのです。
僕が海外工場に「Stock」を確認して大目玉を食らった体験談
僕も海外調達を担当し始めたばかりの頃、この言葉の定義の違いで痛い目を見たことがあります。
ある新製品の発売直前、注文が殺到して欠品のリスクが出てきました。僕は慌てて海外の提携工場にメールを送りました。
「緊急事態だ! 今持っているStockの数を至急教えてくれ!」
すぐに返信があり、「Stockはゼロだ。次の出荷は来週になる」と書かれていました。
僕は顔面蒼白になり、上司に「在庫ゼロです! 発売延期しかありません!」と報告しました。
しかし、上司は冷静に工場長へ電話をかけ、こう聞きました。
「Current Inventoryの状況を教えてくれないか? 仕掛品(WIP)も含めて」
すると工場長は、「ああ、組み立て途中のパーツなら大量にあるよ。残業すれば明日には300個完成できるぞ」と答えたのです。
僕は愕然としました。
僕が聞いた「Stock」は「箱詰めされて出荷ドックに積まれている完成品」のことだと解釈され、上司が聞いた「Inventory」は「工場内にある全ての資産(作りかけ含む)」として伝わっていたのです。
この経験から、「製造現場に対しては、単に『在庫』と聞くのではなく、どの段階のモノ(Inventory)を知りたいのか明確に伝えなければならない」ということを学びました。
それ以来、曖昧なStockという言葉は避け、「Finished goods(完成品)」なのか「WIP(仕掛品)」なのか、具体的に聞くようにしています。
「Inventory」と「Stock」に関するよくある質問
小売店ですが、InventoryとStockどちらを使うべきですか?
小売業(仕入れて売る業態)の場合、原材料や仕掛品がないため、実質的にInventoryとStockは同じ範囲(商品)を指します。どちらを使っても通じますが、システム上のデータや決算の話ならInventory、店頭の品揃えの話ならStockを使うのが自然です。
在庫管理システムは英語で何と言いますか?
一般的には「Inventory Management System」と呼ばれます。これは発注、入庫、保管、出庫という在庫のライフサイクル全体を管理するシステムだからです。「Stock Control System」と言うこともありますが、こちらは倉庫内の数量管理に焦点を当てたニュアンスになります。
「在庫を持つ」という動詞は?
「have in stock」「keep in stock」という表現が一般的です。「carry inventory」と言うと、「在庫リスクを抱える」「在庫を保有するビジネスを行う」といった少し経営的なニュアンスになります。
「Inventory」と「Stock」の違いのまとめ
「Inventory」と「Stock」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は範囲の違い:全資産(材料含む)ならInventory、完成品ならStock。
- 視点の違い:会計・管理はInventory、現場・販売はStock。
- ニュアンス:Inventoryは「リスト・目録」、Stockは「備蓄・山積み」。
- 製造業の注意点:作りかけ(仕掛品)の有無で言葉を使い分ける。
言葉の意味だけでなく、その裏にある「モノの流れ」や「管理の目的」まで理解しておけば、グローバルなビジネスシーンでも正確なコミュニケーションが取れるようになります。
これからは自信を持って、相手や状況に合わせた英単語を選んでいってくださいね。
もし、他にも専門用語の使い分けで迷うことがあれば、業界用語の違いまとめなども参考にしてみてください。
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