「掲出」と「掲載」、どちらも何かを人目に触れるように出すことですが、ビジネスシーンで使い分けに迷ったことはありませんか?
結論から言うと、この二つは情報を出す場所が「空間(壁や場所)」なのか「媒体(紙面や画面)」なのかで使い分けるのが基本です。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ本来のイメージと、広告や広報の現場で使われる正しいルールがスッキリと分かります。
それでは、まず最も重要な違いの全体像から見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「掲出」と「掲載」の最も重要な違い
「掲出」はポスターや看板など物理的な場所に張り出すこと。「掲載」は新聞、雑誌、Webサイトなどの媒体に記事や広告を載せること。場所なら「掲出」、メディアなら「掲載」と覚えましょう。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 掲出(けいしゅつ) | 掲載(けいさい) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 人目につく場所に掲げて出すこと | 新聞・雑誌などに載せること |
| 対象となる場所 | 物理的な空間・場所 (壁、掲示板、電車内、駅) | 情報媒体の中 (新聞、雑誌、書籍、Web) |
| 動作のイメージ | 張り出す、掲げる | 収録する、載せる |
| 代表的な例 | ポスターを掲出する 看板を掲出する | 記事を掲載する Webに広告を掲載する |
一番大切なポイントは、「壁やボードに貼る」なら掲出、「本や画面に載る」なら掲載というイメージを持つことです。
特に広告業界や広報の仕事では、この使い分けが明確に定義されていることが多いので注意が必要です。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「掲出」の「出」は外に突き出す、現すという意味で、物理的に掲げるイメージ。「掲載」の「載」は書物に書き記す、荷物を載せるという意味で、媒体の中に収めるイメージです。
なぜ二つの言葉があるのか、漢字の成り立ちからイメージを膨らませてみましょう。
「掲出」の成り立ち:「掲」げて「出」す
「掲出」は「掲(かか)げる」と「出(だ)す」という漢字で構成されています。
「掲揚(けいよう)」や「掲示(けいじ)」という言葉があるように、「高いところや目立つ場所に、物理的に掲げる」というニュアンスが強い言葉です。
ポスターを壁に貼ったり、看板を立てたりして、物理的な空間の中に情報を「出し」て見せるイメージですね。
「掲載」の成り立ち:「掲」げて「載」せる
一方、「掲載」の「載」は、「載(の)せる」と読みます。
これは「積載(せきさい)」や「連載(れんさい)」のように、「物の上に置く」「書物に記す」という意味を持っています。
つまり、新聞や雑誌、Webサイトといった「媒体(入れ物)」の中に、記事や広告を「載せる(収める)」というイメージになります。
具体的な例文で使い方をマスターする
駅のポスターや選挙ポスターは「掲出」、雑誌のインタビューやWebバナーは「掲載」を使います。物理的な「モノ」として貼るか、情報として「中」に入るかで判断しましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
シーン別に正しい使い方を見ていきましょう。
ポスターや看板などで使う「掲出」の例文
物理的な場所に張り出す場合は「掲出」を使います。
【OK例文:掲出】
- 駅のコンコースに新しい広告ポスターを掲出する。
- 選挙ポスターの掲出期間が始まった。
- 社内掲示板にお知らせを掲出しておいてください。
- 電車の中吊り広告が今日から掲出されている。
新聞・雑誌・Webで使う「掲載」の例文
媒体の中に記事や情報が含まれる場合は「掲載」を使います。
【OK例文:掲載】
- 明日の朝刊に、当社のインタビュー記事が掲載される。
- 求人情報を転職サイトに掲載する。
- 雑誌に新商品の広告を掲載した。
- ウェブサイトにイベントの写真を掲載しても良いですか?
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じますが、業界用語や慣習として違和感を持たれる可能性がある使い方です。
- 【△】駅貼りのポスターを掲載する。
- 【OK】駅貼りのポスターを掲出する。
ポスターは媒体の中に「載る」のではなく、壁などの場所に「張り出される」ものなので、「掲出」または「掲示」が適切です。
- 【△】雑誌に広告を掲出する。
- 【OK】雑誌に広告を掲載する。
雑誌という媒体の中に組み込まれるので、「掲載」が自然です。
【応用編】似ている言葉「掲示」との違いは?
「掲示」は「掲出」とほぼ同じ意味ですが、より事務的なお知らせや、公共の場での表示に使われる傾向があります。「掲出」は広告業界などで「期間を決めて出す」という文脈でよく使われます。
「掲出」とよく似た言葉に「掲示(けいじ)」があります。
掲示板という言葉がある通り、「人目につく場所に書き記して示すこと」を指します。
基本的には「掲出」と同じように使えますが、ニュアンスの違いとしては以下のようになります。
- 掲出:広告ポスターなど、期間を定めて意図的に「出す」行為に焦点がある。(ビジネス・広告寄り)
- 掲示:ルール、案内、禁止事項など、必要な情報を「示す」ことに焦点がある。(事務・公共寄り)
「ポスターを掲出する(広告)」とは言いますが、「立ち入り禁止を掲出する」とはあまり言わず、「立ち入り禁止を掲示する」の方が自然ですよね。
「掲出」と「掲載」の違いを専門的な視点から解説
広告業界では「交通広告(OOH)」は「掲出」、「マス広告(新聞・雑誌)やWeb広告」は「掲載」と明確に使い分けられます。Web広告の一部(インプレッション保証型など)では「掲出」という言葉が使われることもありますが、一般的には「掲載」が標準です。
広告やメディアの現場では、この二つの言葉は明確なルールのもとで運用されています。
特に交通広告(電車や駅の広告)や屋外広告(看板)の分野では、「掲出(けいしゅつ)」という用語が専門用語として定着しています。
「掲出期間」「掲出作業」「掲出料」といった具合です。
一方、出版業界やWebメディアでは「掲載(けいさい)」が基本です。
「掲載誌」「掲載記事」「掲載日」などが日常的に使われます。
少しややこしいのがWeb広告です。
Web広告は「掲載」と言うのが一般的ですが、バナー広告などが特定の期間、特定の枠に張り付きで表示される場合、交通広告のメタファーとして「掲出」という言葉を使う担当者もいます。
しかし、一般の読者やクライアントに向けて説明する場合は、Webに関しては「掲載」と表現する方が、違和感がなくスムーズに伝わります。
駅貼りポスターを「掲載」と言って先輩に訂正された体験談
僕も広告代理店に入社したばかりの頃、この使い分けで恥ずかしい思いをしたことがあります。
あるクライアントの新商品キャンペーンで、駅貼りポスターとWebバナー広告の両方を展開することになりました。
キャンペーン終了後、僕は実施報告書を作成し、自信満々で先輩に提出しました。
報告書にはこう書きました。
「新宿駅のポスター掲載風景と、Webサイトのバナー掲載画面のキャプチャを添付します」
すると、先輩から赤ペンで修正が入りました。
「Webは『掲載』でいいけど、ポスターは『掲載』じゃなくて『掲出(けいしゅつ)』ね。もしくは『掲示』。ポスターは媒体の中に載せるんじゃなくて、壁に張り出すものだから」
「えっ、どっちも広告を出すことだから同じじゃないんですか?」と聞き返すと、先輩は苦笑いして教えてくれました。
「業界だとね、交通広告とか屋外広告は『物理的な作業』を伴うから『掲出』って言うんだよ。脚立に登って貼ったりするでしょ? 本に載せるのとは感覚が違うんだよ」
なるほど、と思いました。
単なる言葉の違いではなく、「現場でどう扱われているか」というリアリティの違いが言葉に表れているんだと痛感しました。
それ以来、街中のポスターを見るたびに「あれは掲出されているんだな」と心の中でつぶやくようになり、自然と使い分けが身につきました。
「掲出」と「掲載」に関するよくある質問
Webサイトのお知らせは「掲出」「掲載」どっち?
基本的には「掲載」です。「Webサイトに記事を掲載する」という表現が最も一般的です。ただし、PDFファイルなどを「お知らせ掲示板」のようなコーナーに置く場合、「掲示」という言葉を使うこともありますが、「掲出」はあまり使いません。
選挙ポスターは「掲出」ですか?
はい、選挙ポスターは掲示板という物理的な場所に貼るため、「掲出」が使われます。公職選挙法などの規定やニュースでも「ポスターの掲出」という表現が用いられます。
「記載」との違いは何ですか?
「記載(きさい)」は、書類や帳簿などに書き記すことを指します。「掲載」が記事や作品全体を載せるのに対し、「記載」は「住所を記載する」のように、特定の項目や事実を書き込むニュアンスが強くなります。
「掲出」と「掲載」の違いのまとめ
「掲出」と「掲載」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の使い分け:物理的な場所に貼るなら「掲出」、媒体の中に載せるなら「掲載」。
- イメージの違い:「掲出」は張り出す(アウトプット)、「掲載」は収録する(インプット)。
- 業界の慣習:交通広告・屋外広告は「掲出」、出版・Webは「掲載」が標準。
「これ、どっちだっけ?」と迷ったら、「壁に貼るのか、本に載るのか」を想像してみてください。
その映像が浮かべば、もう二度と間違えることはありませんよ。
言葉の正しい使い分けについてさらに詳しく知りたい方は、漢字の使い分けの違いまとめのページもぜひチェックしてみてください。
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