「口コミ」と「レビュー」の最も大きな違いは、「人づてに広がる噂や情報」か「商品や作品に対する批評・評価」かという点です。
なぜなら、口コミは「口頭でのコミュニケーション(伝聞)」を語源とする広がり重視の言葉であるのに対し、レビューは「再調査・批評」を意味する英語で、内容の分析や評価に重きを置く言葉だからです。
この記事を読めば、日常会話やマーケティングの現場でどちらを使うべきかが明確になり、それぞれの言葉が持つ信頼性やニュアンスまで正しく理解して使いこなせるようになります。
それでは、まず両者の決定的な違いを一覧表で詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「口コミ」と「レビュー」の最も重要な違い
最大の違いは「形式」と「目的」です。口コミは非公式な伝達や噂話を含み、広まることが主眼です。レビューは公式な批評や点数評価を含み、分析や判断材料とすることが主眼です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 口コミ(Word of Mouth) | レビュー(Review) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 口頭での伝達、噂 (人から人へ広まる情報) | 批評、再調査、評価 (内容を詳しく検討すること) |
| 情報の質 | 主観的、感情的、断片的 「〜らしいよ」 | 客観的視点を含む、体系的 「〜という機能が良い」 |
| ネット上の扱い | 掲示板、SNSの投稿 (短文や感想メイン) | ECサイト、評価サイト (星評価+詳細な長文) |
| 語源 | 「口」+「マスコミ(コミュニケーション)」 日本の造語 | 英語「Review」 (Re=再び + View=見る) |
一番大切なポイントは、「口コミ」は広がり(拡散)に焦点があり、「レビュー」は中身(評価)に焦点があるということです。
ただし、現代のWebサービスでは「カスタマーレビュー」を「口コミ」と呼ぶことも多く、境界線は曖昧になりつつあります。
なぜ違う?語源と成り立ちからイメージを掴む
口コミは昭和初期に「口頭のコミュニケーション(マスコミのもじり)」として生まれた日本の造語です。レビューは英語で「再び見る(回顧・検討)」を意味し、演劇の批評や軍隊の閲兵などを指す言葉から来ています。
なぜこの二つの言葉は、似たような意味で使われるようになったのでしょうか。
そのルーツを知ると、言葉の持つ「軽さ」や「重み」の違いが見えてきます。
口コミのルーツ:マスコミに対抗する「口」
「口コミ」は、実はかなり新しい言葉で、昭和30年代(1960年代頃)に普及したと言われています。
当時、強力な影響力を持っていた「マスコミ(マスコミュニケーション)」に対し、「口頭でのコミュニケーション」を略して「口コミ」と呼ぶようになりました。
井戸端会議や噂話など、人から人へと草の根的に広がる情報を指します。
レビューのルーツ:再びよく見る
「Review」は、「Re(再び)」+「View(見る)」という構成の英単語です。
元々は、一度見たものを改めてよく調べる、振り返るという意味です。
そこから、書物や演劇の内容を検討して批評する「書評・劇評」や、判決を再審理する「再審」、軍隊を検閲する「観閲式」などを指すようになりました。
つまり、単なる感想ではなく「しっかりと吟味する」というニュアンスが含まれているのです。
具体的な例文とシーンで使い分けをマスターする
友人同士の会話やSNSでの拡散は「口コミ」、Amazonや食べログでの星評価付きの投稿は「レビュー」と呼ぶのが自然です。「口コミで広がる」とは言いますが、「レビューで広がる」とはあまり言いません。
言葉の違いは、実際の使用シーンで確認するのが一番ですよね。
日常会話やビジネスでどのように使われているか見ていきましょう。
口コミを使う場面
情報の伝達経路や、話題性を強調する場合に適しています。
- あの店は口コミで評判が広がった。(人づてに人気が出た)
- SNSで口コミをチェックしてから買う。(みんなが何と言っているか見る)
- 悪い口コミがあっという間に拡散した。(噂話としての広がり)
「口コミサイト」という言葉もありますが、これは「みんなの噂や感想が集まる場所」という親しみやすさを強調しています。
レビューを使う場面
内容の分析、評価、検証を強調する場合に適しています。
- 新製品の詳しいレビュー記事を書く。(機能や性能の検証)
- Amazonのカスタマーレビューを参考にする。(星の数や具体的な使用感)
- コードレビューを行う。(プログラムの品質チェック)
「レビュー動画」などは、開封から使用感までを詳しく解説するコンテンツを指すことが多いですね。
【応用編】「評判」や「感想」との違いは?
「評判」は世間一般の評価や噂そのものを指し、書き込まれたテキスト自体は指しません。「感想」は個人の心の動き(主観)を指し、評価(客観)の要素は必須ではありません。
似ている言葉との違いも整理しておきましょう。
評判(Reputation)
「あの店の評判が良い」のように、世間からの評価の状態を指します。
口コミやレビューが積み重なった結果として生まれるのが「評判」です。
感想(Impression / Feedback)
「使ってみた感想」のように、個人的にどう感じたかを指します。
レビューには「良い・悪い」の価値判断(評価)が含まれますが、感想は「楽しかった」「驚いた」といった主観的な感情だけでも成立します。
「口コミ」と「レビュー」の違いをマーケティング視点で解説
マーケティングでは「WOM(口コミ)」は情報の拡散プロセス、「レビュー」はUGC(ユーザー生成コンテンツ)の一種として扱われます。口コミは「バズ」を狙う施策、レビューは「コンバージョン(購入)」を後押しする施策として重視されます。
少し専門的な視点から、この二つの言葉を分析してみましょう。
マーケティング用語として、これらは明確に異なる役割を持っています。
- WOM(Word of Mouth / 口コミ):情報が拡散していく「現象」や「経路」を指します。「バイラルマーケティング(ウイルスのように広がる)」や「バズマーケティング」と関連が深いです。
- Online Reviews(オンラインレビュー):ECサイトなどに蓄積される「コンテンツ(資産)」を指します。購入を迷っている顧客の背中を押す(CV率を高める)ための重要な判断材料です。
消費者庁のステルスマーケティング規制(ステマ規制)などでは、これら「第三者の表示」に見せかけた広告活動に対して厳しいルールが設けられています。
僕が「レビュー」を「口コミ」と言って指摘された体験談
僕がWebメディアの編集者になりたてだった頃、あるガジェット製品の紹介記事の企画会議で失敗した経験があります。
僕は先輩たちに向かって自信満々にこう提案しました。
「この新製品、すごく話題なんで、SNSの『口コミ』を集めた記事を作りましょう!」
すると、ベテランの編集長が眼鏡を押し上げながら言いました。
「SNSの短文を拾うだけじゃ浅いよ。読者が知りたいのは『口コミ(噂)』じゃなくて、しっかり使い込んだ『レビュー(検証評価)』なんじゃないか?」
僕はハッとしました。
確かに、ただ「これ欲しい!」「見た目がいい!」というSNSの声を並べるだけでは、数万円もするガジェットの購入を決める役には立ちません。
「噂レベルの『口コミ』と、購入の決め手になる『レビュー』は価値が違う」
この指摘を受けて、僕はSNSの声を拾う企画を変更し、実際に製品を借りて1週間使い倒す「徹底レビュー記事」を作成しました。
結果、その記事は多くのユーザーに読まれ、購入リンクのクリック率も大幅に上がりました。
それ以来、情報の「深さ」を意識して言葉を使い分けるようにしています。
「口コミ」と「レビュー」に関するよくある質問
Q. ビジネスで「口コミ」と言うのは失礼ですか?
A. 失礼ではありませんが、文脈によります。お客様からのご意見を「口コミ」と呼ぶと、少し軽い印象(噂話程度)を与える可能性があります。「お客様の声」や「レビュー」「評価」と言い換える方が、より尊重しているニュアンスが伝わりやすい場合もあります。ただし、「口コミで広げていただく」といったマーケティング的な文脈では普通に使われます。
Q. 英語で「Kuchikomi」は通じますか?
A. 通じません。「Word of Mouth(ワード・オブ・マウス)」が一般的な英語表現です。略して「WOM」とも書かれます。ネット上の口コミなら「Online reviews」や「User comments」などが使われます。
Q. 食べログなどはどっちですか?
A. サイト自体は「口コミサイト」と呼ばれることが多いですが、個々の投稿は点数評価を含むため「レビュー」の性質を持っています。実際、多くのサイトで「口コミを投稿する」「レビューを書く」という表現が混在しており、ユーザー視点ではほぼ同義として扱われています。
「口コミ」と「レビュー」の違いのまとめ
「口コミ」と「レビュー」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 軸が違う:口コミは「拡散・伝聞(広がり)」、レビューは「評価・批評(中身)」。
- 質が違う:口コミは主観的・断片的、レビューは客観的・体系的になりやすい。
- 語源が違う:口コミは「口+マスコミ」、レビューは「Re(再び)+ View(見る)」。
- 使い分け:噂や話題なら「口コミ」、購入のための分析なら「レビュー」。
普段は何気なく使っている言葉ですが、その裏にある「情報の深さ」や「目的」の違いを知ると、より的確に情報を扱えるようになります。
これからは、SNSで話題の投稿を見たら「これは口コミだな」、Amazonで星1つの長文を見たら「これは熱心なレビューだな」と、心の中で分類してみてくださいね。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、メディア・文化系外来語の違いまとめの記事もぜひご覧ください。
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