「メディア」と「マスコミ」の違いを一言で言うと、情報の「伝達手段そのもの」か「大衆への大量伝達」かという点にあります。
「メディア」は情報を伝える媒体全般(ネット、DVD、手紙など)を広く指すのに対し、「マスコミ」はテレビや新聞などを通じて不特定多数の人々に情報を届ける仕組みや機関を指します。最近ではSNSの普及により「メディア」の範囲が広がっているため、この二つの使い分けはビジネスシーンでも特に重要になってきています。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ本来の意味や範囲、そして現代における適切な使い分けが明確に分かります。
それでは、まず最も重要な違いの比較から詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「メディア」と「マスコミ」の最も重要な違い
「メディア」は情報を伝える媒体全ての総称で、Webや記録媒体も含みます。一方、「マスコミ」は不特定多数に情報を送る「マスコミュニケーション」の略で、主に新聞・テレビなどの報道機関を指します。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これを見れば、それぞれの守備範囲が一目瞭然です。
| 項目 | メディア (Media) | マスコミ (Mass Communication) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 情報の媒介・手段そのもの | 大衆への大量伝達・報道機関 |
| 対象範囲 | 非常に広い(テレビ、Web、USB、手紙など) | 限定的(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌など) |
| 情報の方向性 | 双方向も含む(SNSなど) | 基本的に一方向(発信者→大衆) |
| ニュアンス | 「媒体」「ツール」「仲介するもの」 | 「報道」「ジャーナリズム」「大手メディア企業」 |
| 英語 | Media | Mass Communication / The Mass Media |
一番のポイントは、「メディア」という大きな枠組みの中に、「マスコミ」が含まれているという構造ですね。
つまり、マスコミはメディアの一種ですが、すべてのメディアがマスコミというわけではありません。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「メディア」は「中間・媒介」を意味するラテン語が語源で、情報の橋渡し役全般を指します。「マスコミ」は「大衆(Mass)」への「伝達(Communication)」が語源で、大量の情報を一方的に送る仕組みを表します。
カタカナ語として定着しているこれらの言葉ですが、元の英語や語源を知ると、そのニュアンスの違いがより深く理解できますよ。
「メディア」の成り立ち:「中間」に位置する媒介者
「メディア(Media)」は、英語の「Medium(ミディアム)」の複数形です。さらに語源を辿ると、ラテン語で「中間」を意味する言葉に行き着きます。
ステーキの焼き加減の「ミディアム」や、霊媒師の「ミディアム」と同じ語源ですね。
つまり、発信者と受信者の「間」に入って、情報を仲介するもの全てがメディアなんです。だからこそ、情報を記録するUSBメモリも「記録メディア」と呼ばれますし、インターネットも「Webメディア」と呼ばれるわけですね。
「マスコミ」の成り立ち:「大衆」への「伝達」
一方、「マスコミ」は「マスコミュニケーション(Mass Communication)」の略語です。
「Mass」は「大衆」や「集団」、「Communication」は「伝達」や「通信」を意味します。
ここから、特定の送り手から不特定多数の大衆へ向けて、大量の情報を一斉に伝達すること、またはそのための機関(新聞社やテレビ局など)を指す言葉として定着しました。
「マスコミ」と言うときは、単なる道具としての媒体だけでなく、「社会に影響を与える報道機関」というニュアンスが強く含まれることが多いですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
WebサイトやSNS運営について話すときは「メディア」、報道機関全体や世論への影響力を指すときは「マスコミ」を使います。記録媒体を指す場合など、マスコミでは代用できないシーンに注意しましょう。
言葉の定義が分かったところで、実際の会話や文章でどう使い分けるべきか、具体的な例文で確認していきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
広報やマーケティングの現場では、この使い分けが戦略に関わることもありますよ。
【OK例文:メディア】
- 若年層向けの新しいWebメディアを立ち上げる計画だ。
- 広告の出稿先として、複数のメディアを比較検討する。
- データのバックアップは、外部の記録メディアに保存してください。
【OK例文:マスコミ】
- 新商品の不祥事について、マスコミ各社から問い合わせが殺到している。
- 今回の記者会見には、多くのマスコミ関係者が集まった。
- マスコミを通じて、企業の取り組みを社会にアピールする。
「マスコミ」は主に「報道陣」や「大手メディア企業」というニュアンスで使われますね。一方、「メディア」は媒体そのものを指すので、Webサイトやアプリなども含めた広い範囲で使えます。
日常会話での使い分け
日常のニュースや話題の中でも、微妙なニュアンスの違いがあります。
【OK例文:メディア】
- 最近はテレビよりも、SNSなどのソーシャルメディアを見る時間が増えた。
- 多様なメディアから情報を得ることが大切だ。
【OK例文:マスコミ】
- マスコミの偏向報道が問題視されている。
- 彼は大学卒業後、マスコミ業界への就職を希望している。
「マスコミ」という言葉には、時に権力性や社会的な影響力への批判的な文脈が含まれることもありますね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味が通じないわけではありませんが、違和感のある使い方を見てみましょう。
- 【NG】USBメモリなどの記録マスコミを購入した。
- 【OK】USBメモリなどの記録メディアを購入した。
これは明らかに間違いですよね。「マスコミ」は「伝達」の行為や機関を指すので、物理的な記録媒体には使いません。
- 【NG】個人のブログは影響力のあるマスコミだ。
- 【OK】個人のブログは影響力のあるメディアだ。
個人ブログは「大衆への大量伝達(Mass Communication)」の定義からは少し外れますし、組織的な報道機関ではないため、「メディア」とするのが自然です。
【応用編】似ている言葉「マスメディア」との違いは?
「マスメディア」はマスコミュニケーションを行うための「媒体」そのものを指します。「マスコミ」が伝達行為や機関(人や組織)を指すのに対し、「マスメディア」はテレビや新聞という「枠組み・手段」を強調する言葉です。
「メディア」と「マスコミ」の中間にあるような言葉、「マスメディア」についても触れておきましょう。
「マスメディア」は、Mass(大衆)+Media(媒体)ですから、文字通り「大衆に情報を伝えるための媒体」を指します。
具体的には、以下の「4大マスメディア」を指すのが一般的です。
- 新聞
- テレビ
- ラジオ
- 雑誌
「マスコミ」とほぼ同じ意味で使われることが多いですが、厳密には以下の違いがあります。
- マスコミ:情報を伝える「活動」や、それを担う「組織・人」(例:マスコミ業界、マスコミの取材)
- マスメディア:情報を伝えるための「手段・装置」(例:マスメディアの影響力、マスメディアの衰退)
ただ、日常会話ではそこまで厳密に区別されず、置き換え可能なケースがほとんどですね。より学術的、あるいは客観的な文脈では「マスメディア」が好まれる傾向があります。
「メディア」と「マスコミ」の違いをメディア論的に解説
メディア論の大家マクルーハンは「メディアはメッセージである」と述べ、媒体の形式自体が受け手の認識に影響を与えると説きました。一方「マスコミ」は社会学的な文脈で、世論形成や情報の非対称性といった観点から語られることが多い概念です。
少し専門的な視点から、この二つの言葉を深掘りしてみましょう。
著名なメディア理論家であるマーシャル・マクルーハンは、「メディアはメッセージである」という有名な言葉を残しました。これは、伝えられる内容以上に、「どのメディア(テレビ、活字、ネットなど)を使うか」自体が、受け手の感じ方や社会の変化に決定的な影響を与えるという意味です。
この文脈での「メディア」は、人間の身体や感覚を拡張するもの全てを含みます。眼鏡や服、車でさえもメディア(身体の拡張)と捉える考え方です。
一方、「マスコミ」は社会学や政治学の分野でよく登場します。ここでは、情報の送り手(エリート・報道機関)と受け手(大衆)の間に存在する権力関係や、情報の流れ方に焦点が当てられます。
現代では、インターネットの普及により、誰もが発信者になれる「ソーシャルメディア」が台頭しました。これにより、一方向的な「マスコミ」の独占的な地位が揺らぎ、双方向的な「メディア」の役割が再評価されている、というのが現代のメディア環境の大きな特徴と言えるでしょう。
詳しくは総務省の情報通信白書などで、メディア環境の変化に関するデータを確認してみると面白いですよ。
広報担当として痛感した「メディア」の多様性と「マスコミ」の影響力
僕が企業の広報担当として働き始めた頃、この「メディア」と「マスコミ」の違いを肌で感じる出来事がありました。
ある新サービスのプレスリリースを配信したときのことです。僕は「たくさんのメディアに取り上げてもらいたい!」と意気込み、Webニュースサイトや個人の有名ブロガー、そしてテレビ局や新聞社にも情報を送りました。
結果、WebメディアやSNSでは好意的な反応が多く、「便利なサービスだ」と拡散されました。僕は「やった、大成功だ!」と喜んでいたんです。
しかし、翌日。ある大手新聞(いわゆるマスコミ)の記事を見て青ざめました。そこには、サービスの内容紹介だけでなく、業界全体の課題や、規制との兼ね合いについての鋭い指摘が掲載されていたのです。
その記事が出た途端、社内の雰囲気は一変しました。役員会議で話題になり、問い合わせの電話の内容も、サービス利用に関するものから、企業のコンプライアンスを問うような厳しいものへと変わったのです。
この時、僕は痛感しました。
「『メディア』は情報を広げてくれるが、『マスコミ』は社会的な意味づけをして世論を作るんだ」と。
Webメディアでの拡散は確かに数(リーチ)を稼げますが、マスコミによる報道は、その事象に「社会的な信用」や「問題提起」という重みを付加します。どちらが良い悪いではなく、それぞれの特性と役割が全く違うことを、身をもって学んだ経験でした。
それ以来、僕は「誰に、どう届けるか」を考える際、単に「メディア」とひとくくりにするのではなく、「マスコミに向けた論理」と「Webメディアに向けた共感」を使い分けるようになりました。
「メディア」と「マスコミ」に関するよくある質問
SNSは「マスコミ」に入りますか?
いいえ、基本的には入りません。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は「ソーシャルメディア」に分類されます。マスコミは特定の発信者が大衆に情報を送る「一方向」の性質が強いのに対し、SNSはユーザー同士がやり取りする「双方向」の性質が強いためです。ただし、影響力の大きさから「第5の権力」と呼ばれることもあります。
就職活動で「メディア業界」と「マスコミ業界」は違いますか?
重なる部分は大きいですが、ニュアンスが少し異なります。「マスコミ業界」と言うと、伝統的な新聞・テレビ・出版・広告代理店を指すことが一般的です。「メディア業界」と言うと、これらに加えて、IT企業、Webメディア運営会社、アプリ開発会社なども含む、より広い範囲を指すことが多いですね。
「メディアリテラシー」とはどういう意味ですか?
メディアからの情報を鵜呑みにせず、主体的に読み解く能力のことです。特にマスコミやネットの情報には、発信者の意図やバイアス(偏り)が含まれている可能性があるため、複数の情報源を比較したり、真偽を見極めたりする力が、現代社会では非常に重要視されています。
「メディア」と「マスコミ」の違いのまとめ
「メディア」と「マスコミ」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 範囲の違い:「メディア」は媒体全般、「マスコミ」は報道機関などの限定的な範囲。
- 方向性の違い:「メディア」は双方向も含むが、「マスコミ」は基本的に一方向。
- 使い分け:記録媒体やWebなどは「メディア」、社会的な報道機関は「マスコミ」。
- 関係性:「メディア」という大きな枠組みの中に「マスコミ」が存在する。
言葉の背景にある「仲介」と「大衆伝達」というイメージを持つと、迷わず使い分けられるようになりますね。ビジネスでもニュースを見る時でも、この違いを意識すると、情報の受け取り方が少し変わってくるかもしれません。
これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。関連する言葉の使い分けについては、メディア・文化系外来語の違いまとめもぜひ参考にしてみてください。
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