「起きる」と「起こる」の違い!ビジネスや日常で迷わない使い分け

「起きる」と「起こる」、どちらを使うべきか一瞬迷ってしまった経験はありませんか?

結論から言えば、人の動作や生理現象には「起きる」、自然現象や物事の発生には「起こる」を使うのが基本ルールです。

なぜなら、同じ「起」という漢字を使っていても、その言葉が指し示す「対象」と「ニュアンス」に明確な違いがあるからです。

この記事を読めば、「朝おきる」はどっちだっけ?といった初歩的な迷いから解放され、ビジネスメールでも自信を持って正しい表現を選べるようになります。

それでは、まず二つの言葉の決定的な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「起きる」と「起こる」の最も重要な違い

【要点】

基本的には人が目を覚ます・体を起こす場合は「起きる」、物事が発生する場合は「起こる」を使います。ただし、事件や災害などは両方使えますが、「起きる」は現場の臨場感、「起こる」は客観的な発生事実を強調する傾向があります。

まず、結論からお伝えしますね。

「起きる」と「起こる」の使い分けで迷わないための決定的な違いを、以下の表にまとめました。

項目起きる起こる
中心的な意味目を覚ます、体を起こす、事象が発生する物事が発生する、生じる
対象人、動物、事件、災害自然現象、事件、感情、生理現象
ニュアンス主体的・動作的(横から縦になるイメージ)客観的・発生的(無から有が生じるイメージ)
使い分けの鍵「起床」の意味なら必ずこちら。「発生」の意味が強い場合に適する。

最も重要なポイントは、人が「目を覚ます」「寝床から出る」という意味では、必ず「起きる」を使うということです。

一方で、地震や事件などの「出来事」に関しては、どちらを使っても間違いではないケースが多いですね。

ただ、その場合でも「目の前で今まさに変化が生じている」という臨場感を伝えたいときは「起きる」が選ばれやすい傾向にあります。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

どちらも「起」という漢字を使いますが、語源的には「起きる(おき・る)」は「居(お)く」に関係し、存在や状態の出現を意味します。「起こる(おこ・る)」は「生(お)ふ」に関係し、新しく物事が生じるニュアンスが強くなります。

言葉の背景にあるイメージを掴むと、使い分けがグッと楽になります。

「起きる」と「起こる」は、どちらも「起」という漢字を使いますが、そのルーツには微妙な違いがあるのです。

「起きる」のイメージ:状態の変化と出現

「起きる」は、古くは「おく(居く)」に関連していると言われています。

これは「そこに存在する」「居る」という意味合いが含まれているんですね。

つまり、横になっていたものが縦になる、眠っていた意識が戻ってくるといった、状態が変化してそこに「現れる」というイメージが強い言葉です。

だからこそ、人の動作(起床)や、静かな状態から何かが立ち上がる(事件が起きる)という場面で使われるのでしょう。

「起こる」のイメージ:新たな発生と生起

一方、「起こる」は「生(お)ふ」や「興(おこ)る」と関連が深いと考えられます。

こちらは、何もなかったところから新しいものが「生じる」、あるいは勢いが盛んになるといったニュアンスを持ちます。

火がつくことを「火が起こる(おこる)」と言ったり、国が栄えることを「国が興る(おこる)」と言ったりしますよね。

つまり、「発生」「誕生」という客観的な事象に焦点を当てた言葉だと言えます。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

日常では「朝起きる」のように身体的動作には「起きる」一択です。ビジネスで「問題がおこる」と言う場合は、発生した事実を客観視するなら「起こる」、その場の動的な変化を捉えるなら「起きる」が自然です。

理屈が分かったところで、実際のシーン別の例文を見てみましょう。

文脈によって、どちらがより自然かが分かれてきますよ。

日常会話での使い分け

日常生活では、自分の動作については「起きる」を使うことが圧倒的に多いですね。

【OK例文:起きる】

  • 毎朝6時に起きるのが習慣だ。
  • 転んでもすぐに起きる強い子に育ってほしい。
  • 奇跡が起きることを信じている。

【OK例文:起こる】

  • やる気が起こるまで待とう。
  • 頭痛やめまいが起こることがある。
  • 静電気で火花が起こる

感情や生理現象、物理的な現象が「発生する」場合には「起こる」がしっくりきます。

ビジネスシーンでの使い分け

ビジネスでは、トラブルや現象の報告などで両方の言葉が登場します。

【OK例文:起きる】

  • システム障害が起きており、現在復旧作業中です。(※今まさに発生している臨場感)
  • 社内で議論が起きるきっかけとなった。

【OK例文:起こる】

  • 同様のミスが二度と起こらないように対策を講じます。(※発生事実としての客観視)
  • 予期せぬ化学反応が起こる可能性があります。
  • 事業の変革が起こりつつある。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じるかもしれませんが、違和感を与える使い方も確認しておきましょう。

  • 【NG】明日は早いので、5時に起こります。
  • 【OK】明日は早いので、5時に起きます。

「起床」の意味で「起こる」を使うことはありません。

自分が能動的に目を覚ます行為は「起きる」です。

  • 【NG】彼に対して殺意が起きた。
  • 【OK】彼に対して殺意が起こった。

感情の発生に関しては「起こる」を使うのが一般的です。

「怒りが起こる」「衝動が起こる」のように、内側から湧き上がるものは「起こる」で表現します。

「起きる」と「起こる」の違いを学術的に解説

【要点】

言語学的には、自発的な動作や状態変化(起床・生起)には「起きる」が広く使われ、自然発生的な事象(発生)には「起こる」が好まれる傾向があります。両者の重なり合う領域(事件・災害)では、文脈による使い分けが推奨されます。

少し専門的な視点から、この二つの言葉の違いを深掘りしてみましょう。

国立国語研究所などのコーパス(言語データベース)分析によると、「起きる」と「起こる」の使われ方には明確な傾向が見られます。

「起きる」は、人間や動物の動作(起床、起立)に対して排他的に使われる傾向があります。

これは、主体の意志や生物的な活動と結びつきが強いためと考えられます。

一方、「起こる」は、自然現象(地震、雷)、生理現象(頭痛、発作)、心理現象(感情の変化)など、主体の意志とは無関係に「生じる」ものに対して優位に使われます。

興味深いのは、事件、事故、戦争、災害といった社会的・物理的な出来事に関しては、「起きる」と「起こる」の使用比率が拮抗している点です。

この領域では、「事件が起きた」と言えば「現場での動的な変化」に焦点が当たり、「事件が起こった」と言えば「歴史的な事実としての発生」に焦点が当たるという、微妙なニュアンスの差異が生じます。

言葉のプロである小説家やジャーナリストは、この「現場感(起きる)」と「事実感(起こる)」を無意識に、あるいは意図的に使い分けて、文章のトーンをコントロールしているのです。

さらに詳しくは、国立国語研究所の研究資料なども参考になります。

新入社員時代の「トラブル報告」で冷や汗をかいた話

僕がまだ入社1年目の頃、システム運用部門で働いていた時のことです。

ある日の深夜、サーバーにアラートが発生し、先輩社員へ緊急メールを送ることになりました。

焦っていた僕は、件名に「重大なエラーが起こっています!」と打って送信しました。

送信ボタンを押した直後、「起こっています」という表現になんとなく違和感を覚えたのです。

駆けつけた先輩は、状況を収束させた後、コーヒーを飲みながら僕にこう言いました。

「報告ありがとう。でもさ、『エラーが起こっています』だと、なんか他人事みたいに聞こえないか? 『エラーが起きています』の方が、現場の緊迫感が伝わる気がするよ」

その時は「細かいなあ」と思いましたが、後になってその言葉の意味が分かりました。

「起こる」は現象が発生したという事実を客観的に伝えるのに対し、「起きる」は今そこで事態が進行しているというライブ感を含んでいるのです。

緊急事態の報告では、現場で事象に向き合っている姿勢を示すためにも、「起きている」という言葉を選ぶべきだったと反省しました。

言葉の選び方一つで、相手に伝わる「当事者意識」や「空気感」が変わるということを、その夜の冷や汗と共に学びました。

それ以来、報告書やメールを書くときは、事実を淡々と伝えるべきか、現場の温度感を伝えるべきか、一瞬立ち止まって考えるようにしています。

「起きる」と「起こる」に関するよくある質問

事件や事故は「起きる」と「起こる」どちらが正しいですか?

どちらを使っても間違いではありません。ただ、ニュース速報などで「現場で今何かが発生している」というニュアンスを伝えたい場合は「起きる(起きています)」がよく使われます。一方で、歴史的な出来事として語る場合や、原因と結果の因果関係を説明する場合は「起こる(起こった)」が選ばれやすい傾向にあります。

「やる気がおきる」はどちらの漢字を使いますか?

一般的には「やる気が起こる」と書くことが多いです。感情や意欲が心の底から湧き上がってくる(発生する)というイメージだからです。ただし、「やる気が起きない」のように否定形や会話文では「起きる」の表記もしばしば見られます。厳密な決まりはありませんが、「起こる」の方が本来の意味に近いと言えます。

地震の場合はどう使い分けますか?

「地震が起きる」も「地震が起こる」も両方使われます。「寝ている間に地震が起きた」のように、生活の中での出来事として語るときは「起きる」が馴染みやすいですね。一方で、「断層のズレによって地震が起こる」のように、メカニズムや発生の事実を説明するときは「起こる」が適しています。

「起きる」と「起こる」の違いのまとめ

「起きる」と「起こる」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  • 基本は対象で判断:人が目を覚ます・体を起こすなら「起きる」、感情や生理現象には「起こる」。
  • ニュアンスの違い:「起きる」は現場の動きや変化(ライブ感)、「起こる」は発生した事実(客観性)を強調する。
  • 迷ったら:人の動作以外で、事象の発生を伝える場合はどちらでも通じますが、文脈に合わせて使い分けるとより洗練された表現になります。

日本語の微妙なニュアンスを理解すると、伝える力は格段に上がります。

これからは自信を持って、場面に応じた最適な言葉を選んでいってくださいね。

さらに詳しい言葉の使い分けについては、漢字の使い分けの違いまとめの記事もぜひご覧ください。

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