「raise」は「~を上げる(他動詞)」、「rise」は「上がる(自動詞)」です。
決定的な違いは、後ろに「目的語(~を)」が必要かどうかという点。
この記事を読めば、ビジネスでの資金調達や昇給の話から日常会話まで、二つの言葉を迷わず正確に使い分けられるようになります。
それでは、まず一覧表で決定的な違いを見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「raise」と「rise」の最も重要な違い
基本的には、「raise」は「〜を上げる(他動詞)」、「rise」は「上がる(自動詞)」と覚えるのが簡単です。目的語が必要なら「raise」、主語が自然に上がるなら「rise」を使います。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの英単語の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | raise(レイズ) | rise(ライズ) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | (何かを)上げる、育てる、集める | (主語が)上がる、昇る、増える |
| 文法的な役割 | 他動詞(目的語が必要) | 自動詞(目的語は不要) |
| 主語と動作の関係 | 主語が「何か」を上げる | 主語「自体」が上がる |
| 活用形(過去・過去分詞) | raise – raised – raised (規則変化) | rise – rose – risen (不規則変化) |
| ビジネスでの頻出例 | 資金を集める(raise funds) 給料を上げる(raise salary) | 価格が上がる(prices rise) 日が昇る(sun rises) |
一番大切なポイントは、「raise」の後ろには必ず「何を」に当たる言葉(目的語)が来るということですね。
一方で、「rise」は「何が」に当たる主語さえあれば、それだけで文が成立します。この構造的な違いを理解しておくだけで、迷う瞬間は劇的に減るでしょう。
なぜ違う?語源とイメージから本質を掴む
「raise」は力を加えて持ち上げるイメージ、「rise」は自然に上へと移動するイメージです。語源的にも、外部からの作用か、自発的な動きかという違いがあります。
なぜこの二つの単語にこのような違いがあるのか、語源やイメージを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「raise」のイメージ:力を加えて「持ち上げる」
「raise」は、古ノルド語の「reisa」などに由来し、「何かを立たせる」「起こす」といった意味合いを持っています。
この単語の核となるイメージは、「主語がエネルギーを使って、対象物を低い位置から高い位置へ移動させる」ことです。
例えば、「手を挙げる(raise your hand)」や「子供を育てる(raise a child)」のように、主語(自分や親)が対象(手や子供)に対して働きかけを行っていますよね。
つまり、「raise」には常に「操作する側」と「操作される側」の二者が存在するのです。
「rise」のイメージ:自力で「浮き上がる」
一方、「rise」は、古英語の「risan」に由来し、「起き上がる」「昇る」といった意味を持ちます。
こちらのイメージは、「主語自体が、自然の力や内部の力によって上方向へ移動する」ことです。
「太陽が昇る(The sun rises)」や「煙が立ち上る(Smoke rises)」のように、誰かが持ち上げているわけではなく、主語そのものが動いていますよね。
このことから、「rise」は自己完結的な動きを表す単語だと言えるでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスでは「資金調達(raise)」と「株価上昇(rise)」の違いが重要です。日常会話でも、「手を挙げる(raise)」と「日が昇る(rise)」のように、対象物の有無で明確に使い分けます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーン、日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
ビジネスでは、売上や給与、資金などの話で頻繁に登場します。
【OK例文:raise(他動詞)】
- 弊社は新しいプロジェクトのために資金を調達しました(raised)。
- マネージャーは来月、私の給料を上げる(raise)と約束してくれた。
- 会議で重要な問題を提起する(raise)必要があります。
【OK例文:rise(自動詞)】
- 原材料費の高騰により、製品価格が上がっている(are rising)。
- 先四半期、失業率はわずかに上昇した(rose)。
- 当社の株価は、好決算を受けて急騰した(rose)。
「誰かが意図的に上げる」なら「raise」、「市場の動きなどで勝手に上がる」なら「rise」という使い分けがポイントですね。
日常会話での使い分け
日常のシーンでも、この法則は変わりません。
【OK例文:raise】
- 質問がある人は、手を挙げて(raise)ください。
- 彼は一人で三人の子供を育てた(raised)。
- グラスを持ち上げて(Raise)、乾杯しましょう。
【OK例文:rise】
- 太陽は東から昇る(rises)。
- 川の水位が雨で上がっている(is rising)。
- 毎朝6時に起きます(rise)。(※やや古風あるいは文学的な表現ですが、get upの代わりに使われます)
これはNG!間違えやすい使い方
文法的に間違いやすいパターンを見てみましょう。特に過去形の活用には注意が必要です。
- 【NG】 The price raised yesterday.(価格が昨日、上げた。)
- 【OK】 The price rose yesterday.(価格が昨日、上がった。)
価格(The price)は勝手に上がるもの(あるいは市場によって上げられるもの)として自動詞「rise」の過去形「rose」を使います。「raised」を使うなら、「We raised the price.(我々が価格を上げた)」のように主語が必要です。
- 【NG】 Please rise your hand.(手を上がってください。)
- 【OK】 Please raise your hand.(手を挙げてください。)
「手(your hand)」という目的語があるので、他動詞の「raise」を使います。「rise」だと、手が勝手に浮き上がるようなホラーな状況になってしまいますね。
【応用編】似ている言葉「lift」との違いは?
「lift」は「持ち上げる」という意味で「raise」と似ていますが、より物理的な重さを伴う移動や、真上に持ち上げる動作を強調します。「raise」は抽象的な事柄(地位、問題、資金など)にも広く使われます。
「raise」や「rise」と似た言葉に「lift」があります。これも押さえておくと、表現の幅が広がりますよ。
「lift」は、「重いものを物理的に持ち上げる」というニュアンスが強い言葉です。
例えば、「箱を持ち上げる(lift a box)」のように使います。「raise a box」とも言えますが、「lift」の方が「よいしょ」と持ち上げる動作に焦点が当たっています。
また、「lift」は「禁止令を解除する(lift a ban)」のように、抑えつけていたものを取り除くという意味でも使われます。
一方、「raise」は「地位を上げる」「子供を育てる」「問題を提起する」など、物理的な移動だけでなく、抽象的な概念に対しても広く使えるのが特徴ですね。
「raise」と「rise」の違いを学術的視点から解説
言語学的には、この二つは「使役(Causative)」の関係にあります。「raise」は「riseさせる(cause to rise)」という意味を含んだ語彙です。また、名詞として使う場合、アメリカ英語では昇給を「raise」、イギリス英語では「rise」と言う傾向があります。
少し専門的な視点から、この二つの言葉の関係性を深掘りしてみましょう。
言語学や英語史の観点では、「raise」と「rise」は、語源を共有しつつも役割分担をしてきた兄弟のような単語です。
機能的な観点で見ると、「raise」は「使役(Causative)」の役割を果たしています。つまり、「raise X」は「cause X to rise(Xが上がるように仕向ける)」と言い換えることができるのです。
また、名詞としての使い分けも興味深い点です。
「給料アップ(昇給)」と言いたい場合、アメリカ英語では「pay raise」が一般的ですが、イギリス英語では「pay rise」と言うことが多いのです。
このように、地域や文脈によって名詞としての用法が異なることも、英語学習者にとっては押さえておくべきポイントでしょう。
英語の語彙に関する詳細な研究や、歴史的な変遷については、国立国語研究所などの言語資源や、オックスフォード英語辞典などの記述も参考になります。
僕が「Sales raised」と言って沈黙を生んだ体験談
僕も、この「raise」と「rise」の違いで、恥ずかしい思いをしたことがあるんです。
海外のクライアントとの初めてのウェブ会議でのことでした。僕は自社の四半期の売上報告を担当しており、意気揚々とグラフを画面共有しました。画面には右肩上がりの素晴らしいグラフが表示されています。
「見てください、我々の売上が上がりました!」と言いたくて、僕は自信満々にこう言いました。
「Look, our sales raised dramatically!」
その瞬間、画面の向こうのクライアントが一瞬キョトンとして、微妙な沈黙が流れました。そして、優しそうな担当者が「Oh, you mean sales rose, right?」と訂正してくれたのです。
僕は「raise」を使えば「上がる」という意味だと思い込んでいましたが、ネイティブからすると「売上が(誰かによって)持ち上げられた? 作為的に操作されたのか?」という奇妙なニュアンスに聞こえかねない表現だったのです。
顔から火が出るほど恥ずかしかったですが、その担当者は「Sales don’t raise themselves, but we hope they rise!(売上は自分では持ち上がらないけど、上がってほしいよね!)」とジョークで和ませてくれました。
この経験から、「自然に上がるならrise、誰かが上げるならraise」という原則は、ビジネスの信用に関わる重要な区別だと痛感しました。それ以来、自動詞と他動詞の区別には人一倍気をつけるようになりました。
「raise」と「rise」に関するよくある質問
「sun raise」と言ってはいけませんか?
はい、「The sun raises」とは言いません。太陽は自然の摂理で自ら昇るものとして扱われるため、自動詞の「rise」を使って「The sun rises」と言うのが正解です。もし「God raises the sun(神が太陽を昇らせる)」という文脈なら文法的にはあり得ますが、日常会話ではまず使いません。
「raise」と「rise」の発音の違いは?
「raise」は「レイズ /reɪz/」、「rise」は「ライズ /raɪz/」と発音します。スペルが似ているので混同しやすいですが、母音が「エイ」か「アイ」かで明確に区別しましょう。
過去形と過去分詞形が覚えられません。
「raise」は規則変化なので「raise – raised – raised」と「d」をつけるだけです。一方、「rise」は不規則変化で「rise – rose – risen」と変化します。「ローズ(rose)」と「リズン(risen)」の響きを何度も口に出して覚えるのが近道です。
「raise」と「rise」の違いのまとめ
「raise」と「rise」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は目的語の有無:「〜を上げる」なら「raise」(他動詞)、「上がる」なら「rise」(自動詞)。
- 主体の違い:誰かが意図的に上げるのが「raise」、自然に上がるのが「rise」。
- 活用形の違い:「raise」は規則変化(raised)、「rise」は不規則変化(rose / risen)。
言葉の背景にある「力の向き」や「自発性」のイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、的確な英単語を選んでいきましょう。ビジネス英語での他の使い分けについても知りたい方は、ビジネス用語の違いまとめなどもぜひご覧ください。