「専務」と「副社長」、どちらも会社の中枢にいる重役ですが、その上下関係や役割の違いを明確に説明できますか？
実はこの2つ、「社長の代行者（No.2）」か「業務の総監督（No.3）」かという点で、組織内の立ち位置が異なります。
この記事を読めば、取引先の役員構成を見た時に、誰がキーマンなのかを瞬時に判断できるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから一覧表で詳しく見ていきましょう。
結論：一覧表でわかる「専務」と「副社長」の最も重要な違い
一般的に序列は「副社長 ＞ 専務」です。副社長は社長に次ぐNo.2として経営全般を補佐・代行し、専務は業務全般を管理・監督する役割を担います。ただし、これらは会社法上の正式名称ではなく、企業独自の呼称です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの役職の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な序列と役割はバッチリです。
| 項目 | 副社長 | 専務 |
|---|---|---|
| 一般的な序列 | No.2（社長の次） | No.3（副社長の次） |
| 役割 | 社長の補佐・代行 経営の最終判断に近い | 社長・副社長の補佐 業務全体の統括・管理 |
| 英語表記（例） | Executive Vice President | Senior Managing Director |
| 設置の有無 | 置かない会社も多い | 比較的多くの会社に存在 |
一番大切なポイントは、「副社長」がいればその人がNo.2、「専務」はその下で実務を統括する立場という構造です。
副社長がいない会社では、専務が実質的なNo.2として機能することもあります。
なぜ違う？役職の成り立ちと役割のイメージから掴む
「副社長」は文字通り社長の「副（サブ）」であり、社長不在時の代行権限を持つことが多いです。「専務」は「専（もっぱ）ら務める」という意味で、特定の担当分野だけでなく会社全体の業務運営を監督します。
なぜこのように役割が分かれているのか、言葉の持つニュアンスから紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「副社長」のイメージ：社長の分身
「副社長」は、「Vice President」の訳語としても使われるように、社長（President）の代理や補佐を専門とするポジションです。
社長が海外出張や病気などで不在の場合、トップとしての決裁権を代行することが想定されています。
そのため、特定の事業部を見るというよりは、会社全体を俯瞰（ふかん）し、社長と同じ目線で経営判断を行うことが求められます。
「専務」のイメージ：業務の総監督
「専務」の「専」は「もっぱら」と読みます。「専任」や「専心」という言葉があるように、会社の業務運営に専念し、全体を管理するという意味合いが強いです。
社長や副社長が決定した経営方針に基づき、各部門（営業、製造、管理など）がスムーズに動くよう調整し、監督する「扇の要」のような役割を果たします。
現場のトップである「常務」よりも上位に位置し、より経営に近い視点で業務を見渡します。
具体的な例文で使い方をマスターする
組織図や人事異動のニュースでは、序列を意識した記載がなされます。副社長は「経営体制の強化」、専務は「業務執行の統括」といった文脈で語られることが多いです。
言葉の違いは、具体的なビジネスシーンで確認するのが一番ですよね。
それぞれの役職がどのような文脈で登場するかを見ていきましょう。
副社長のシーン
【OK例文】
- 社長の急な入院に伴い、副社長がトップの職務を代行することになった。
- 次期社長候補として、副社長がグループ全体の構造改革を指揮している。
- 海外法人の立ち上げは、副社長直轄のプロジェクトとして進められる。
専務のシーン
【OK例文】
- 専務取締役として、全社のコンプライアンス委員会を統括する。
- 社長の方針を受け、専務が各事業部長に具体的な数値目標を落とし込んだ。
- 長年営業畑を歩んできた彼が、ついに専務に昇進した。
これはNG！間違えやすい使い方
序列を誤解すると、失礼にあたる場合があります。
- 【NG】会議の席次で、専務を上座、副社長を下座に配置した。
- 【OK】会議の席次で、副社長を上座、専務を下座に配置した。
基本的には「副社長 ＞ 専務」です。ただし、その会社に副社長がいない場合は、専務がNo.2として上座になります。
【応用編】似ている言葉「常務」との違いは？
「常務」は「常（つね）に務める」として、日常的な現場業務の執行を担う役職です。序列は「副社長 ＞ 専務 ＞ 常務」となります。専務が全体管理なら、常務は現場指揮官のイメージです。
「専務」「副社長」の下に位置するのが「常務」です。
この3つの関係性を整理すると、以下のようになります。
- 副社長：社長の代行、経営全般（No.2）
- 専務：業務全体の管理・補佐（No.3）
- 常務：現場業務の執行・日常業務（No.4）
常務は「営業担当」や「生産担当」など、特定の部門のトップとして現場を回す役割を担うことが一般的です。
専務になると、そうした各部門を横断的に見て、会社全体としての最適化を図る役割にシフトしていくことが多いですね。
「専務」と「副社長」の違いを経営・法務視点で解説
会社法において「副社長」「専務」という名称の規定はありません。これらは定款や社内規定で定める「役付取締役」の通称であり、法的な権限（代表権の有無など）は登記を確認する必要があります。
少し専門的な視点から、この二つを深掘りしてみましょう。
実は、日本の会社法には「副社長」や「専務」という役職名は存在しません。
あるのは「代表取締役」「取締役」「監査役」といった名称だけです。
私たちが呼んでいる「副社長」や「専務」は、会社が組織運営のために独自に設けた「役付取締役（やくつきとり締やく）」という肩書きに過ぎません。
そのため、会社の規模や方針によっては「副社長」を置かずに「専務」をNo.2としたり、逆に「専務」を置かずに全員「執行役員」としたりすることもあります。
法的に重要なのは、その人が「代表権（代表取締役）」を持っているかどうかです。
「取締役副社長」であっても代表権がない場合もあれば、「専務取締役」でも代表権を持っている場合もあります。
詳しくは法務省のウェブサイトなどで会社法の役員に関する規定を確認してみると、法律上の定義と実務上の呼称の違いがよく分かりますよ。
「専務」を「副社長」より偉いと勘違いして失敗した商談の話
僕が新人の頃、ある取引先へ上司と商談に行った時の冷や汗体験です。
その会社には「副社長」と「専務」がいらっしゃいました。僕は勝手なイメージで、「専務」の方が「専門的に務める」から偉いのではないか、と勘違いしていました。
名刺交換の際、僕は先に専務の方に名刺を差し出し、その後に副社長の方に渡してしまいました。
その場の空気が一瞬凍りついたのを覚えています。
商談後、上司にこっぴどく叱られました。
「お前、序列を分かってないのか！ 副社長は社長の次、No.2だぞ。専務より格上なんだ。あんな失礼なことをしたら、商談が潰れかねないぞ」
僕は顔面蒼白になりました。
「副」という字が「サブ」のような印象を与えていたため、実務を取り仕切る「専務」の方が実権を持っていると思い込んでいたのです。
しかし、ビジネスの世界では「副社長」は社長に準ずる特別な地位であり、「専務」よりも明確に上位であるケースがほとんどです。
この失敗から、役職の漢字の意味だけでなく、一般的な序列のルールをしっかり学ぶことの重要性を痛感しました。
「専務」と「副社長」に関するよくある質問
Q. 英語で「専務」と「副社長」はどう言いますか？
A. 会社によりますが、副社長は「Executive Vice President (EVP)」、専務は「Senior Managing Director」や「Senior Executive Director」と訳されることが多いです。「Vice President」は米国企業などでは部長クラスを指すこともあるので注意が必要です。
Q. 副社長と専務、どちらが出世コースですか？
A. 一般的には専務から副社長へ昇進し、そこから社長へ、というルートが王道です。したがって、副社長の方が社長に近い「出世コースの最終段階」と言えるでしょう。
Q. 副社長がいない会社の場合、専務がNo.2ですか？
A. はい、そのケースが多いです。社長（代表取締役）の次に偉い人として専務（専務取締役）が置かれ、実質的なNo.2として組織を統括します。
「専務」と「副社長」の違いのまとめ
「専務」と「副社長」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 序列の基本：副社長 ＞ 専務。副社長がNo.2。
- 役割の違い：副社長は「社長代行」、専務は「業務統括」。
- 法的位置づけ：どちらも法律用語ではなく、会社の内部呼称。
- 注意点：代表権の有無は役職名だけでは決まらない。
これからは取引先の組織図を見た時に、「あ、ここは副社長がいるから、専務はその下だな」と、瞬時に力関係を把握できるようになりますね。
役職の正しい理解は、スムーズなビジネスコミュニケーションの第一歩です。ビジネス用語についてさらに知りたい方は、ビジネス用語の違いまとめもぜひご覧ください。