「専務」と「常務」と「副社長」の違い!誰が一番偉い?仕事内容は?

「専務」に「常務」、そして「副社長」。どれも偉い人だということは分かりますが、具体的に誰が一番偉くて、それぞれ何をしているのか、即答できますか?

実はこれらの役職、会社の中での「序列」と、任されている「担当領域」によって明確に区別されています。

この記事を読めば、取引先との名刺交換や席次決めで焦ることなく、相手の立場を正しく理解してスマートに振る舞えるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから一覧表で詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「専務」と「常務」と「副社長」の最も重要な違い

【要点】

序列は一般的に「副社長 > 専務 > 常務」の順です。副社長は社長の右腕、専務は業務全体の管理・監督、常務は日常業務の現場責任者という役割の違いがあります。

まず、結論からお伝えしますね。

この三つの役職の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な序列と役割はバッチリです。

項目副社長専務常務
一般的な序列No.2No.3 or No.4No.4 or No.5
主な役割社長の補佐・代理
経営全般の統括
業務全体の管理
社長・副社長の補佐
日常業務の執行
現場の最高責任者
視点・担当経営(全社的)経営と実務の中間
(やや経営寄り)
現場実務
(特定の事業部など)
法的定義なし(任意の役職)なし(任意の役職)なし(任意の役職)

一番大切なポイントは、「副社長」は社長の代行、「専務」は会社の全体管理、「常務」は現場のトップというイメージを持つことです。

ただし、これらは会社法で決まっている名称ではなく、会社ごとに独自のルールがある場合もあるので注意が必要です。

なぜ違う?序列と役割のイメージから掴む

【要点】

「専務」は「専(もっぱ)ら務める」として会社全体の管理運営を担い、「常務」は「常(つね)に務める」として日常的な現場業務を担います。「副社長」は社長に次ぐ地位として経営全般を見ます。

なぜこのように役割が分かれているのか、漢字の意味と組織図のイメージから紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

序列のピラミッド:誰がNo.2で誰が現場トップ?

一般的な日本企業(取締役会設置会社など)での序列は、以下のようになります。

  1. 社長(代表取締役):会社のトップ
  2. 副社長(副社長執行役員など):社長の右腕、No.2
  3. 専務(専務取締役):業務全体を統括、No.3
  4. 常務(常務取締役):現場業務を統括、No.4

ピラミッドの上に行くほど「経営判断」の比重が大きくなり、下に行くほど「現場指揮」の比重が大きくなります。

役割の分担:「全体を見る」か「現場を回す」か

「専務」の「専」は、「もっぱら」と読みます。これは「会社の業務全体を専一に管理する」という意味合いがあり、社長や副社長を補佐して、会社全体の運営や経営戦略に関わることが多い役職です。

一方、「常務」の「常」は、「つねに」と読みます。これは「日常の業務を常に担当する」という意味合いが強く、営業本部や生産本部など、特定の部門のトップとして現場をバリバリ回す役割を担います。

「副社長」は文字通り社長の「副(サブ)」であり、社長不在時にはその権限を代行するなど、経営の最終判断に近い場所にいます。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ニュースリリースや人事異動の挨拶などで、それぞれの役職に応じた役割分担が表現されます。専務は「経営企画」や「管理本部」を、常務は「営業本部」や「事業部」を担当するケースが多く見られます。

言葉の違いは、具体的なビジネスシーンで確認するのが一番ですよね。

それぞれの役職がどのような文脈で登場するかを見ていきましょう。

副社長のシーン

【OK例文】

  • 社長が海外出張中のため、副社長が定例会議の議長を務めた。
  • 次期社長候補として、副社長に経営の全権を委譲しつつある。
  • 副社長として、グループ会社全体のガバナンス強化を指揮する。

専務のシーン

【OK例文】

  • 専務取締役として、中期経営計画の策定と進捗管理を担当する。
  • 社長の特命を受け、専務が新規事業開発プロジェクトの総責任者となった。
  • 専務は社内の管理部門(総務・人事・経理)全体を統括している。

常務のシーン

【OK例文】

  • 営業本部長を兼務する常務が、今期の販売目標達成に向けて檄を飛ばした。
  • 常務として、工場の生産ライン効率化を現場で陣頭指揮する。
  • 現場からの叩き上げで、ついに常務取締役に昇進した。

これはNG!間違えやすい使い方

役職の上下関係を間違えると失礼にあたります。

  • 【NG】(席次決めにて)専務様を上座、副社長様を下座にご案内する。
  • 【OK】(席次決めにて)副社長様を上座、専務様を下座にご案内する。

基本的には「副社長 > 専務」の序列です。ただし、社歴や年齢、その会社独自のルールがある場合もあるので、接待などの際は事前に秘書の方などに確認するのが確実ですね。

【応用編】似ている言葉「執行役員」との違いは?

【要点】

「専務」や「常務」は取締役(経営者)としての肩書きであることが多いですが、「執行役員」は従業員のトップ(使用人)としての肩書きです。近年は「専務執行役員」「常務執行役員」のように組み合わせて使われることも増えています。

最近よく耳にする「執行役員」という言葉。これと「専務」「常務」はどう違うのでしょうか?

従来、「専務」や「常務」は「専務取締役」「常務取締役」の略称として使われ、法律上の「役員(取締役)」であることが一般的でした。

しかし、経営(監督)と業務(執行)を分離する流れの中で、「取締役ではないけれど、専務クラスの権限で業務を行う人」として「専務執行役員」「常務執行役員」というポストを設ける企業が増えています。

つまり、「専務・常務」という言葉は、取締役にも執行役員にも付くことができる「ランクを表す称号」のようなものになっているんですね。

「あの人は専務だけど、取締役ではない(=会社法上の役員ではない)」というケースもあるので、登記簿や会社案内を見る際は注意が必要です。

「専務」と「常務」と「副社長」の違いを法的に解説

【要点】

会社法において「社長」「副社長」「専務」「常務」という役職名の規定はありません。これらは各企業が定款や社内規定で独自に定めた呼称であり、法的には「代表取締役」や「取締役」、「執行役員」などの地位が適用されます。

少し専門的な視点から、これらの役職を深掘りしてみましょう。

実は、日本の会社法には「社長」や「専務」という言葉は一切出てきません。

法律にあるのは、「代表取締役」「取締役」「会計参与」「監査役」「執行役」といった名称だけです。

私たちが普段使っている「専務」や「常務」は、会社が自社の組織運営のために独自に決めた「役付取締役(やくつきとり締やく)」と呼ばれる通称なんです。

一般的には、定款や取締役会規則などで、「取締役の中から、社長1名、副社長・専務・常務若干名を置くことができる」といった形で定義されています。

そのため、法律上の権限(代表権があるかどうかなど)は、名刺の肩書きだけでなく「代表取締役 専務」なのか「取締役 専務」なのか、あるいは単なる「専務執行役員(取締役ではない)」なのかを確認する必要があります。

詳しくは法務省のウェブサイトなどで会社法の役員に関する記述を見てみると、法律上の定義と実務上の呼称の違いがよく分かりますよ。

役職の序列を間違えて冷や汗をかいた接待の話

僕が営業職をしていた頃、取引先の役員の方々を接待した時の失敗談をお話しします。

その日は、先方の「専務」と「常務」、そして部長の3名をお迎えすることになっていました。僕は事前の勉強で「専務の方が偉い」と頭に叩き込んでいました。

会食が始まり、僕は一番上座に専務をご案内し、その次に常務、そして部長という順で席についてもらいました。ここまでは完璧だと思っていました。

ところが、お酒が進んで場の空気が和んだ頃、部長さんがこっそり僕に耳打ちしてくれたんです。

「君、席順の気配りはありがたいんだけどね、実はウチの会社、ちょっと特殊でね…。今は常務の方が実質的なNo.2で、次期社長と言われているんだよ。専務は相談役に近い立場で、現場の決定権は常務が持っているんだ」

僕は血の気が引きました。

名刺の肩書きだけで判断して、「実質的なパワーバランス」を見誤っていたのです。幸い、専務の方は穏やかな方で「形式通りでいいよ」と笑ってくださいましたが、常務の方には少し気まずい思いをさせてしまったかもしれません。

この経験から、「一般的な序列はあくまで基本。個別の会社の事情や力関係は、事前にリサーチしないと分からない」ということを痛感しました。

肩書きは大事ですが、それにとらわれすぎず、「その会社で誰がキーマンなのか」を見極める目がビジネスでは必要なんですね。

「専務」と「常務」と「副社長」に関するよくある質問

Q. 専務と常務、英語ではどう表記しますか?

A. 企業によって異なりますが、一般的には以下のように訳されます。
専務:Senior Managing Director / Senior Executive Director
常務:Managing Director / Executive Director
副社長:Executive Vice President
「Managing(管理する)」に「Senior(上級の)」が付くのが専務、と覚えると分かりやすいですね。

Q. 小さな会社でも専務や常務はいますか?

A. 会社法上は必須ではないため、小さな会社では社長(代表取締役)のみで、専務や常務を置いていないケースも多いです。逆に、家族経営の会社などで、奥様が専務、息子さんが常務、といったケースもよく見られます。

Q. 専務や常務は全員「役員」ですか?

A. 一般的には「役員」と呼ばれますが、厳密には「取締役」として登記されている人と、そうでない「執行役員」止まりの人がいます。労働基準法上の「労働者」にあたるかどうかも、この違いによって変わってくるため、契約や待遇面では大きな違いがあります。

「専務」と「常務」と「副社長」の違いのまとめ

「専務」と「常務」と「副社長」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 序列の基本:副社長(No.2)> 専務(No.3)> 常務(No.4)。
  2. 役割の違い:専務は「全体の管理」、常務は「現場の執行」。
  3. 法的定義:いずれも法律用語ではなく、会社独自の役職名。
  4. 注意点:会社によって序列や権限が異なる場合があるため、実態確認が大切。

これからは名刺交換の際、「この方は現場のトップとしてバリバリ動いている常務さんだな」とか、「この方は社長を支える経営の要、専務さんだな」と、相手の役割をイメージしながら挨拶ができるようになりますね。

相手の立場を正しく理解することは、円滑なビジネスコミュニケーションの第一歩です。ビジネス用語についてさらに知りたい方は、ビジネス用語の違いまとめもぜひご覧ください。