「出勤」と「勤務」、どちらも仕事に関係する言葉ですが、毎日の業務報告や勤怠管理でどのように使い分けるべきか、迷ったことはありませんか?
実は、「出勤」は仕事をする場所に“出る”という「行為・移動」を指し、「勤務」は職務に“務める”という「状態・義務」を指すという、視点の違いがあります。
この記事を読めば、テレワークが普及した現代における「出社」との違いや、正しい勤怠連絡の仕方がスッキリと分かります。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「出勤」と「勤務」の最も重要な違い
基本的には仕事場に行くアクションが「出勤」、仕事に従事している状態が「勤務」です。出勤は「点(タイミング)」、勤務は「線(期間・時間帯)」のイメージで捉えると分かりやすくなります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 出勤(しゅっきん) | 勤務(きんむ) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 勤務先に出向くこと | 職務に従事すること |
| 焦点 | 移動、到着、開始の瞬間(点) | 労働、継続的な状態、条件(線) |
| 対義語 | 欠勤、退勤、公休 | 非番、休暇(※文脈による) |
| よくある表現 | 出勤時間(着いた時間)、休日出勤 | 勤務時間(働く長さ)、勤務地 |
一番大切なポイントは、「出勤」は“会社に行く”という物理的なアクションに重きを置いているのに対し、「勤務」は“働いている”という中身や条件に重きを置いているということです。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「出勤」の“出”は「外に出る・現れる」を意味し、職場への登場を表します。「勤務」の“務”は「つとめ・任務」を意味し、果たすべき役割や労働そのものを表します。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くとその理由がよくわかりますよ。
「出勤」の成り立ち:「勤」め先に「出」る
「出勤」は、「勤(つと)め」先に「出(で)る」と書きます。
これは、自宅から職場へと移動し、「仕事をする場に姿を現す」というプロセスを指しています。
タイムカードを「ガチャン」と押す(あるいはクリックする)その瞬間が「出勤」のイメージです。
「今日の出勤は9時です」と言う場合、それは「9時に会社に着きます(業務を開始します)」という意味になります。
「勤務」の成り立ち:「勤」めて「務」を果たす
一方、「勤務」は、「勤(いそ)しんで」「務(つと)め」を果たすことです。
「務」という字には「任務」「義務」という意味があります。
つまり、場所に到着することよりも、その組織の一員として「役割を果たしている状態」に焦点が当たっています。
「勤務地」や「勤務条件」という言葉があるように、働く環境やルール、継続的な労働そのものを指す言葉です。
具体的な例文で使い方をマスターする
日々の行動報告やシフト確認では「出勤」、契約内容や働き方の説明では「勤務」を使うのが一般的です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
「アクションか」「条件か」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:出勤】
- おはようございます。ただいま出勤いたしました。(到着の報告)
- 明日は台風のため、自宅待機となり出勤停止です。(職場に行くことの禁止)
- 休日出勤の申請書を提出する。(休みの日に職場へ行くこと)
【OK例文:勤務】
- 弊社の勤務時間は9時から18時です。(労働の条件)
- 彼は大阪支店で勤務しています。(所属・働いている場所)
- 週3日勤務のパートタイム契約を結ぶ。(働き方のスタイル)
このように、日々の動きなら「出勤」、制度や状態なら「勤務」がしっくりきますね。
日常会話での使い分け
日常会話でも、ニュアンスの違いはあります。
【OK例文:出勤】
- 夫はもう出勤しましたよ。(家を出て会社に向かった)
- 毎日満員電車で出勤するのは大変だ。(通勤のプロセス)
【OK例文:勤務】
- 警察官として勤務している友人がいる。(職業に従事している)
- 勤務中に私用電話をするのは控えよう。(働いている間)
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることが多いですが、不自然な使い方を見てみましょう。
- 【△】私の出勤地は東京です。
- 【OK】私の勤務地は東京です。
「出勤」は「行くこと」という動作なので、場所を示す「地」と組み合わせる場合は、継続的に働く場所を指す「勤務地」を使うのが正解です。
- 【△】今日は9時から18時まで出勤しました。
- 【OK】今日は9時から18時まで勤務しました(または働きました)。
「出勤」は「出社した時点(点)」を指すことが多い言葉です。時間の幅(線)を表現する場合は「勤務」や「仕事」を使う方が自然です。
【応用編】似ている言葉「出社」「就業」との違いは?
「出社」はオフィス(会社)に物理的に行くこと。「就業」は業務に従事すること全般や、その日の業務を開始すること。「出勤」は勤怠管理上の「業務開始」を意味し、テレワークでも使えますが、「出社」はテレワークでは使えません。
「出勤」「勤務」と合わせてよく使われるのが「出社」や「就業」です。
特にテレワーク(在宅勤務)の普及により、これらの使い分けが重要になっています。
- 出社:会社という「場所」に行くこと。「今日は在宅ではなく出社します」
- 出勤:仕事を開始すること(勤怠上のステータス)。「在宅で出勤ボタンを押す(業務開始)」
- 就業:業務に就くこと。「就業規則(働くためのルール)」「就業時間(働き始める時間、または働いている時間)」
在宅ワークの日は「出勤扱い」にはなりますが、「出社」はしていません。
ここを混同すると、上司に「あれ? 今日会社に来るんじゃなかったの?」と誤解される可能性があります。
「出勤」と「勤務」の違いを労務管理の視点で解説
労務管理において、「出勤」は出勤簿に記録される「労働日」を意味し、有給休暇の付与日数計算(出勤率)などに関わります。「勤務」は労働契約に基づく「労働義務」を指し、シフト表や雇用契約書で使用されます。
人事や労務の専門的な視点から見ると、この二つは「カウントの方法」や「契約」に関わります。
1. 出勤日数と出勤率
有給休暇をもらうためには、全労働日の8割以上「出勤」している必要があります。
ここでいう「出勤」とは、実際に労働した日のことです。
遅刻や早退をしても、少しでも働けば「出勤」としてカウントされます。
2. 勤務シフトと勤務時間
シフト表(勤務表)は、「いつ、どの時間帯に働く義務があるか」を示したものです。
「早番勤務」「夜勤」といった言葉が使われるように、ここでは労働のパターンや枠組みを指します。
「勤務時間(会社が決めた所定労働時間)」と「実労働時間(実際に働いた時間)」のズレが残業代になります。
詳しくは厚生労働省の労働時間・休日関連ページなどで用語の定義を確認してみると、より深い理解が得られるでしょう。
テレワーク初日に「出勤」報告で混乱!上司と噛み合わなかった私の失敗談
コロナ禍で私の会社も急遽テレワークが導入された時のことです。
初めての在宅勤務の朝、私はチャットで上司にこうメッセージを送りました。
「おはようございます。本日、出勤しました!」
すると上司からすぐに電話がかかってきました。
「おい、今日はお前、在宅の予定じゃなかったか? なんで会社(オフィス)に来てるんだ? 感染対策で来るなって言っただろう!」
私はパニックになりました。
「えっ? いえ、家にいます! パソコンを開いて業務を開始したという意味で『出勤』と送ったんですが…」
上司はため息交じりに言いました。
「紛らわしいなぁ。それなら『業務開始します』とか『在宅で勤務開始します』って言ってくれよ。『出勤』って言われると、会社に来たのかと思っちゃうじゃないか」
この時、私はハッとしました。
「出勤」という言葉には、長年染み付いた「会社に行く」という物理的なイメージが強く残っているんだ。
勤怠システム上は「出勤」ボタンを押すけれど、コミュニケーション上では「業務開始」や「オンライン」という言葉を使った方が誤解がない。
言葉の定義と、相手が持つイメージのズレを痛感した、ほろ苦いテレワークデビューでした。
「出勤」と「勤務」に関するよくある質問
「出勤簿」と「勤務表」は何が違いますか?
一般的に「勤務表(シフト表)」は「これからどう働くか(予定)」を管理するもの、「出勤簿」は「実際にどう働いたか(実績)」を記録するものです。ただし、会社によっては同じ意味で使っている場合もあります。
在宅勤務の日は交通費が出ないのはなぜですか?
通勤費(交通費)は「出勤(移動)」に伴う実費弁償という考え方が一般的だからです。在宅勤務(テレワーク)ではオフィスへの移動が発生しないため、その日の「出勤」に対する交通費は支給されない、または定期代ではなく実費精算になる企業が増えています。
「退勤」と「退社」の違いは?
「退勤」は業務を終了すること(タイムカードを押すイメージ)、「退社」は会社を出ること、または会社を辞める(退職)ことを指します。定時で帰る際に「お先に退社します」と言うと「辞めるの?」と誤解される可能性があるため、「お先に失礼します」や「退勤します」と言うのが無難です。
「出勤」と「勤務」の違いのまとめ
「出勤」と「勤務」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は点か線か:行く・始める瞬間なら「出勤」、働いている状態なら「勤務」。
- テレワークでの注意:「出勤」は会社に行く意味にも取れるので「業務開始」と言い換えると安全。
- 対義語の違い:「欠勤(休む)」対「出勤」、「休暇(休み)」対「勤務」。
言葉の背景にある「移動」と「従事」の違いを理解すると、日々の報告や勤怠管理がよりスムーズになります。
これからは、状況に合わせて「今日は在宅勤務です」「これから出勤(出社)します」と、正確に使い分けられるはずです。
さらに詳しいビジネス用語の使い分けについては、ビジネス用語の違いまとめの記事もぜひ参考にしてみてください。