「追試」と「再試」、学生時代にお世話になった方もいるかもしれませんし、今まさに直面している方もいるかもしれませんね。
どちらも「もう一度試験を受けるチャンス」のように思えますが、実は「試験を受けたかどうか」と「評価のされ方」に決定的な違いがあります。
この違いを知らないと、必要な手続きを間違えたり、成績評価で思わぬ損をしたりする可能性があります。
この記事を読めば、それぞれの言葉の正確な定義から、成績への影響、手続き上の注意点までスッキリと理解でき、もしもの時にも慌てずに対応できるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「追試」と「再試」の最も重要な違い
「追試」はやむを得ない事情で本試験を受けられなかった人が対象で、「再試」は本試験を受けたが合格点に届かなかった人が対象です。最大の違いは、試験を受けたか受けていないかという点にあります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 追試(ついし) | 再試(さいし) |
|---|---|---|
| 正式名称 | 追試験 | 再試験 |
| 対象者 | 本試験を欠席した人 | 本試験で不合格だった人 |
| 理由 | 病気、忌引き、交通遅延など | 成績不良(赤点) |
| 評価の上限 | 基本的に満点(100点)が可能 | 多くの場合合格点ギリギリ(60点等) |
| 必要なもの | 診断書や証明書など | 再試受験料(大学等の場合) |
簡単に言うと、スタートラインに立てなかった人のための救済措置が「追試」、ゴールに届かなかった人のための敗者復活戦が「再試」というイメージですね。
特に大学生にとっては、評価(成績)の上限が違うという点は非常に重要です。「追試」は本試験と同じ扱いを受けられますが、「再試」はどれだけ良い点を取っても最高評価はもらえないことが多いのです。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「追試」の「追」は「あとを追う」という意味で、試験に遅れて追いつくイメージです。「再試」の「再」は「ふたたび」という意味で、一度受けた試験にもう一度挑むイメージを持つと分かりやすいでしょう。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「追試」の成り立ち:「追」が表す“あとから行う”イメージ
「追」という漢字は、「追いかける」「後から付け足す」という意味を持っています。
「追加」や「追伸」といった言葉からも分かるように、何かメインのものがあって、それに後から続くイメージですね。
つまり、「追試」とは、みんなが受けた本試験に「あとから追いついて」受ける試験という意味になります。
ここには「本来の試験を受けられなかった遅れを取り戻す」というニュアンスが含まれています。
「再試」の成り立ち:「再」が表す“もう一度”イメージ
一方、「再」という漢字は、「ふたたび」「もう一度」という意味を持っています。
「再会」や「再開」という言葉の通り、一度行われたことが二度目に行われることを指します。
これから、「再試」とは、一度受けた試験を「もう一度」受けることを意味します。
一度目の結果がダメだったから、二度目のチャンスに挑む、という「やり直し」のイメージを持つと分かりやすいでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
病欠や忌引きで試験を受けられなかった場合は「追試」、赤点を取ってしまい救済措置として受ける場合は「再試」を使います。大学などでは、これらを合わせて「追再試」と呼ぶこともあります。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
学校生活や資格試験など、具体的なシチュエーションで見ていきましょう。
ビジネス・学校シーンでの使い分け
学生の方や、資格試験を受ける社会人の方は、自分の状況に合わせて使い分けてくださいね。
【OK例文:追試】
- インフルエンザで期末テストを欠席したので、後日追試を受けることになった。
- 電車の遅延で試験会場に間に合わなかったため、遅延証明書を提出して追試を申請した。
- 親族の葬儀(忌引き)と重なってしまったため、本試験ではなく追試での受験が認められた。
【OK例文:再試】
- 数学のテストで赤点を取ってしまい、放課後に再試を受ける羽目になった。
- この科目は再試にかかると受験料として2,000円が必要になる。
- なんとか再試で合格できたが、成績評価は「可」になってしまった。
日常会話での使い分け
日常会話でも、ちょっとした失敗ややり直しの比喩として使われることがあります。
【OK例文:追試】
- (飲み会に遅れてきた人に)「君はスタートに出遅れたから、乾杯の追試だね!」
【OK例文:再試】
- 「昨日のプレゼンは大失敗だったから、来週の会議は実質再試みたいなもんだよ」
- 「この料理、味が決まらなかったから、明日もう一回作って再試だ」
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることが多いですが、厳密には状況と合っていない使い方を見てみましょう。
- 【NG】風邪で休んだので、先生に頼んで再試を受けさせてもらった。
- 【OK】風邪で休んだので、先生に頼んで追試を受けさせてもらった。
一度も受けていないのに「再(ふたたび)」と言うのは矛盾していますね。休んだ場合は「追試」が正解です。
- 【NG】点数が悪かったので、追試でリベンジしたい。
- 【OK】点数が悪かったので、再試でリベンジしたい。
点数が悪いということは一度受けているので、「追試」ではなく「再試」になります。
【応用編】似ている言葉「追再試」との違いは?
「追再試」は、追試験と再試験をまとめて呼ぶ際の便宜的な言葉です。大学の掲示板などで、両方の対象者に向けた日程や案内を一括して行う場合に使われますが、個々の学生が受けるのはどちらか一方です。
大学の掲示板やシラバスを見ていると、「追再試(ついさいし)」という言葉を見かけることがあります。
「えっ、どっちなの?」と混乱するかもしれませんが、これは単純に「追試験と再試験をまとめて指す言葉」です。
大学側としては、欠席者(追試対象)と不合格者(再試対象)のために別々の日程を組むのは大変ですよね。
そこで、「この日にまとめて試験を行いますよ」とアナウンスする際に「追再試」という言葉を使います。
もちろん、あなたが受けるのは「追試」か「再試」のどちらか一方です。
「私は追再試を受ける」と言うよりは、「追再試の日程で、私は追試を受ける」と理解しておけば間違いありません。
「追試」と「再試」の違いを制度的な視点から解説
一般的に「追試」は本試験と同じ扱いで満点評価が可能ですが、「再試」は合格しても評価の上限(例:60点やC評価)が決まっていることが多いです。また、追試には診断書などの証明が必要になるケースがほとんどです。
「追試」と「再試」の違いは、単なる言葉の違いだけでなく、成績評価や手続きといった制度面で大きな差があります。
ここが学生にとって最も重要なポイントなので、詳しく解説しますね。
評価(成績)の上限の違い
【追試の場合】
基本的に本試験と同じ扱いになります。つまり、テストで100点を取れば、成績表にも「100点(S評価やA評価)」がつきます。
やむを得ない事情で受けられなかっただけなので、ペナルティはないのが一般的です(※一部、得点の8割掛けなどのルールがある学校もあります)。
【再試の場合】
あくまで「救済措置」なので、評価に上限が設けられることがほとんどです。
例えば、再試験で90点を取ったとしても、成績表には合格ラインギリギリの「60点(可やC評価)」としか記録されないケースが多いです。
手続きと費用の違い
【追試の手続き】
「正当な理由」が必要です。医師の診断書、遅延証明書、会葬礼状などの証明書類の提出が求められます。
単なる寝坊や旅行などの私用では、認められないことがほとんどです。
【再試の手続き】
対象者として発表されたら、所定の手続きを行えば受けられます。
ただし、大学などでは「再試受験料」として1科目あたり数千円の費用がかかる場合があります。「赤点は高くつく」と言われる所以ですね。
学校や学部によってルールは異なるため、詳しくは大学の履修要項(シラバス)や教務課の掲示板、文部科学省のWebサイトなどで確認することをお勧めします。
詳しくは文部科学省のWebサイトなどでご確認いただけます。
僕が「追試」と「再試」を勘違いして単位を落としそうになった体験談
僕も大学1年生の頃、この「追試」と「再試」の違いを甘く見ていて、痛い目に遭いそうになったことがあります。
必修の英語の試験日、朝起きたら高熱が出ていました。「これは無理だ」と思い、病院に行って診断書をもらい、後日教務課へ。
「風邪で休んだので、再試をお願いします」と窓口で言ったんです。
すると職員の方が、「再試? 君、赤点だったの? まだ採点も終わってないよ」と不思議そうな顔。
「いえ、休んだのでもう一回受けたいんです」と伝えると、「ああ、それなら『追試』の手続きだね。再試とは全然違うから気をつけて」と言われました。
その時初めて、「追試」は欠席者のためのもので、「再試」は不合格者のためのものだと明確に知りました。
さらに怖かったのは、もし僕が「まあ、後で再試受ければいいや」と軽く考えて診断書をもらっていなかったら、どうなっていたかということです。
「追試」には証明書が必須です。もし証明書がなければ「正当な理由なき欠席」とみなされ、追試すら受けられず、そのまま単位を落としていたかもしれません。
あるいは、もし受けられたとしても「再試」扱いになっていたら、どれだけ頑張っても最高評価はもらえず、GPA(成績評価値)が下がっていたでしょう。
「言葉一つで、手続きも結果も全く変わってしまう」ということを、身をもって学んだ出来事でした。
それ以来、試験に関する案内は「追」なのか「再」なのか、目を皿のようにして確認するようになりましたね。
「追試」と「再試」に関するよくある質問
「追試」を受けるにはどうすればいいですか?
まずは学校の教務課や担当教員に連絡しましょう。病気なら診断書、電車遅延なら遅延証明書など、欠席理由を証明する公的な書類が必ず必要になります。自己判断で休まず、早急に相談することが大切です。
「再試」で100点を取ったら成績はどうなりますか?
多くの学校では、再試の成績評価には上限(例:60点やC評価)が設けられています。たとえ満点を取っても、成績表上は「ギリギリ合格」という扱いになることが一般的です。詳細は学校の規定を確認してください。
就職活動で「追試」や「再試」はバレますか?
成績証明書には最終的な評価(「優・良・可」や「A・B・C」など)のみが記載されることが多く、「追試で合格」や「再試で合格」といった経緯までは書かれないのが一般的です。ただし、再試で評価が低くなった結果、GPAが下がると選考に影響する可能性はゼロではありません。
「追試」と「再試」の違いのまとめ
「追試」と「再試」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 対象の違い:「追試」は欠席者、「再試」は不合格者。
- 理由の違い:「追試」はやむを得ない事情、「再試」は成績不良。
- 評価の違い:「追試」は満点も可能、「再試」は評価に上限あり。
- 手続きの違い:「追試」は証明書が必要、「再試」は受験料がかかることも。
言葉の背景にある漢字のイメージと、制度的な違いをセットで覚えておけば、もう迷うことはありません。
特に学生の皆さんは、この違いが単位や成績に直結します。
もしもの時は、正しい言葉でスムーズに手続きを行い、ピンチをチャンスに変えてくださいね。
言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、社会・関係の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
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