「通達」と「通知」、どちらも情報を知らせることですが、ビジネスや組織においてはその「強制力」と「情報の重み」に天と地ほどの差があります。
一言で言えば、「通達」は上層部から下部への「守るべき命令」、「通知」は関係者への「単なるお知らせ」です。
もし、本社からの「通達」を「ただの通知メールだろう」と軽く読み流してしまうと、重要な社内規定の変更を見落とし、業務命令違反になってしまうリスクすらあるのです。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ権限の強さと適切な対応方法がスッキリと分かり、組織人としてリスクを回避し、正しい振る舞いができるようになります。
それでは、まず最も重要な違いの一覧表から詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「通達」と「通知」の最も重要な違い
「通達」は指揮権を持つ上部から下部へ出される命令や指示で、強い強制力を持ちます。「通知」は必要な事項を相手に知らせる行為全般を指し、強制力は内容によりますが、基本的には情報共有が目的です。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 通達(つうたつ) | 通知(つうち) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 上から下へ命令・指示を伝える | 必要な事柄を知らせる |
| 情報の向き | 上意下達(上司→部下、本社→支社) | 双方向・全方位(誰から誰へでも) |
| 強制力 | 非常に強い(従う義務がある) | 弱い~中程度(内容による) |
| 内容の性質 | 法令解釈、規定変更、人事異動 | 結果報告、開催案内、決定事項 |
| 受け手の対応 | 遵守・実行しなければならない | 確認・把握すればよい |
一番大切なポイントは、「通達」には「従わなければならない」という拘束力が伴うということです。
「通知」は知ることが目的ですが、「通達」は守ることが目的なのです。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「通達」の「達」は目的地に行き着く、成し遂げるという意味で、指示が末端まで行き渡る強い意志を感じさせます。「通知」の「知」は知る、悟るという意味で、相手に情報を認識させることに焦点があります。
なぜこの二つの言葉に権限の差が生まれるのか、漢字の構成を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「通達」の成り立ち:滞りなく「達(たっ)」する
「通達」は、「通じて」「達する」と書きます。
「達」という字には、「到達する」「成し遂げる」という意味があります。
また、「達し(たっし)」という言葉自体が「官公庁から人民への命令」を意味していました。
つまり、「通達」とは、「上からの命令が、組織の隅々まで滞りなく行き届くこと」を表しています。
そこには「確実に伝わり、実行されるべきもの」という強い意志が込められているのです。
「通知」の成り立ち:通じて「知(し)」らせる
一方、「通知」は、「通じて」「知らせる」です。
「知」は「知る」「わかる」という意味ですね。
非常にシンプルに、「ある情報を相手の知識として認識させる」という行為を指します。
ここには上下関係や命令のニュアンスは含まれず、あくまで「情報の伝達」そのものに焦点が当たっています。
スマホの「プッシュ通知」も、単に「新しい情報が来たよ」と知らせているだけですよね。
具体的な例文で使い方をマスターする
就業規則の改定や人事異動など、組織としての決定事項を指示する場合は「通達」、会議の日程や合否の結果など、単なる情報を伝える場合は「通知」を使います。「通達」は社内文書で、「通知」は社外も含めた広い範囲で使われます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
情報の「重さ」と「拘束力」で使い分けます。
【OK例文:通達】
- 本社から、来期の経費削減に関する通達が出された。(従うべき指示)
- 人事部長名で、4月1日付の人事異動が通達された。(組織の決定)
- クールビズの実施について全社に通達する。(ルールの適用)
【OK例文:通知】
- 採用試験の結果を本人に通知する。(情報の伝達)
- 会議の開催場所が変更になったので通知します。(お知らせ)
- 出荷完了の通知メールを送る。(ステータスの報告)
「通達」は主に社内行政や組織運営に関わる言葉であり、取引先などの社外に対して「通達します」と言うことはまずありません。
社外に対しては「ご通知」「ご連絡」「ご案内」を使います。
日常会話での使い分け
日常では「通達」はほとんど使われませんが、あえて使うと非常に堅苦しくなります。
【OK例文:通達(のようなニュアンス)】
- 妻から「今月のお小遣いは減額」という非情な通達があった。(逆らえない命令)
【OK例文:通知】
- アプリの通知をオフにする。(お知らせ)
- 学校から行事予定の通知が届いた。(情報)
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じますが、ビジネスマンとしての常識を疑われるかもしれない使い方を見てみましょう。
- 【NG】取引先に、新商品の価格改定を通達しました。
- 【OK】取引先に、新商品の価格改定を通知(または案内)しました。
取引先は対等なパートナーであり、部下ではありません。
「通達」と言うと、「俺の言うことを聞け」と命令しているように聞こえてしまい、大変失礼です。
- 【NG】部下からの業務報告の通達を受ける。
- 【OK】部下からの業務報告の通知(または連絡)を受ける。
下から上への情報伝達に「通達」は使いません。
「通達」は常に「上から下へ」流れるものです。
【応用編】似ている言葉「告知」や「通告」との違いは?
「告知」は不特定多数に広く知らせること、「通告」は相手に法的な決定や意思を告げることです。「通達」は組織内の命令、「通知」は情報の伝達、「告知」は公衆への周知、「通告」は確定事項の言い渡しという違いがあります。
「通達」と「通知」の周辺には、他にも重要な言葉があります。
これらも整理しておくと、状況描写がより正確になりますよ。
広く知らせる「告知(こくち)」
「告知」は、「告げ知らせる」ことですが、特に「不特定多数に向けて広く知らせる」場合に使われます。
「イベント開催の告知」や「がん告知(本人への通知だが、公然とした事実として伝えるニュアンス)」などです。
「通知」が特定の相手(個人や関係者)を対象にしやすいのに対し、「告知」はよりオープンなイメージです。
確定事項を言い渡す「通告(つうこく)」
「通告」は、「文書や口頭で、相手に自分の意思や決定を告げること」です。
これには「もはや変更できない決定事項」という強いニュアンスが含まれます。
「戦力外通告」や「解雇通告」など、相手にとっては厳しい内容や、法的な手続きの起点となる場合に使われることが多い言葉です。
「通達」と「通知」の違いを行政法・組織論から解説
行政法において「通達」は、上級行政機関が下級行政機関に対して指揮監督権に基づいて発する命令(行政規則)です。国民を直接拘束する法律とは異なりますが、組織内部では絶対的な拘束力を持ちます。「通知」は単なる事実の知らせであり、法的効果を持たない事実行為です。
少し専門的な視点から、この二つの違いを深掘りしてみましょう。
行政法学の世界では、「通達」は非常に明確に定義されています。
通達(Circular Notice)とは、大臣などの上級行政庁が、その職員や下級行政庁に対して、法律の解釈や運用方針、事務処理の手順などを指示する命令のことです。
これは「行政規則」の一種であり、組織内部の人間を拘束します。
公務員が通達に反すれば、懲戒処分の対象になり得ます。
しかし、あくまで組織内部のルールなので、一般国民を法的に拘束する力はありません(ただし、実務上は通達に従わないと許可が降りないなど、事実上の拘束力を持つことが多いです)。
一方、通知(Notification)は、特定の人や機関に対して、特定の事実や意思を知らせる行為です。
行政法上は「事実行為」や「観念の通知」として扱われ、それ自体が新たな権利義務を発生させるものではない場合が多いです(納税通知書などは別ですが)。
一般企業においても、この構造は同じです。
「社長通達」は社員にとっての法律のようなものであり、従う義務があります。
「人事部からの通知」は、単なるお知らせ(健康診断の日程など)であることが多いのです。
「通達」を「通知」と同じ感覚でスルーして大目玉を食らった体験談
僕も昔、この言葉の重みの違いを痛感した出来事があります。
入社3年目の中堅社員になりかけの頃、全社メールで「セキュリティ規定改定に関する通達」という件名のメールが届きました。
僕は忙しさにかまけて、「ああ、また総務からのいつものお知らせ(通知)か。後で読めばいいや」と、中身もろくに確認せずに既読スルーしてしまいました。
数日後、USBメモリに作業データを入れて持ち歩いていたところ、上司に見つかり、会議室に呼び出されました。
「君、先日の通達を読んでいないのか!?」
上司はカンカンでした。
実はその通達には、「本日よりUSBメモリによるデータ持ち出しを全面禁止する。違反者は処分の対象とする」という、業務ルールの重大な変更と、即時適用の命令が書かれていたのです。
「すみません、ただのお知らせメールだと思って…」と言い訳すると、上司はさらに語気を強めました。
「件名に『通達』とあるだろう! これは『知らせ』じゃなくて『命令』なんだ。読まなかったでは済まされないぞ」
僕は顔から火が出るほど恥ずかしくなり、深く反省しました。
「通知」は知っておけばいい情報ですが、「通達」は自分の行動を変えなければならない業務命令だったのです。
この経験から、メールの件名に「通達」の二文字を見たら、どんなに忙しくても手を止めて、即座に内容を確認し、自分の業務にどう影響するかをチェックするクセがつきました。
言葉一つで、そのメールの緊急度と重要度が全く違う。それを身を持って知った苦い思い出です。
「通達」と「通知」に関するよくある質問
「通達」と「達し」の違いは何ですか?
「達し」は明治時代などに使われていた古い言い方で、現在ではほぼ「通達」と同じ意味ですが、公文書や法令用語としてはあまり使われません。日常会話でも「お達しが来た」のように、少し皮肉や古風なニュアンスを込めて、上からの理不尽な命令を指す際などに使われることがあります。
「周知」と「通知」はどう違いますか?
「通知」は相手に情報を届ける行為そのものを指しますが、「周知」は「周(あまね)く知れ渡らせること」、つまり相手がその内容を理解し、知っている状態にすることを目的とします。「通知しました(送りました)」だけでなく「周知徹底してください(全員に理解させてください)」と言われるのは、このためです。
「供覧(きょうらん)」とはどういう意味ですか?
役所や企業でよく使われる言葉で、「関係者に見せること」「参考までに目を通してもらうこと」を指します。「通知」よりもさらに拘束力が弱く、「とりあえず見ておいて」というニュアンスです。「供覧回覧」などで使われます。
「通達」と「通知」の違いのまとめ
「通達」と「通知」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本の使い分け:命令・指示なら「通達」、お知らせなら「通知」。
- 強制力の違い:「通達」は従う義務がある。「通知」は知るだけでいい場合も。
- 情報の向き:「通達」は上から下への一方通行。「通知」は全方位。
- ビジネス意識:「通達」メールは最優先で確認し、行動に反映させる。
言葉の背景にある「権限」と「目的」を理解すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に重要度を判断できるようになります。
これからは自信を持って、送られてくる情報の重みを見極め、適切に対応していきましょう。
ビジネスシーンでの言葉遣いについてさらに詳しく知りたい方は、ビジネス敬語の使い分けまとめページもぜひ参考にしてみてくださいね。
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