「財務諸表」と「決算書」の違いとは?法律と目的で使い分ける会計知識

「財務諸表」は金融商品取引法に基づき上場企業などが作成する書類群、「決算書」は会社法や税法も含めた決算報告書類の総称を指すのが最大の違いです。

なぜなら、実務上はほぼ同じ意味で使われますが、厳密には「財務諸表」は投資家向けのディスクロージャー(情報開示)資料としての性格が強く、「決算書」はより広い意味での報告書類全体をカバーしているから。

この記事を読めば、「財務諸表」と「決算書」の使い分けはもちろん、ビジネスの場やニュースで耳にする会計用語の背景にあるルールが分かります。

それでは、まず二つの言葉の決定的な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「財務諸表」と「決算書」の最も重要な違い

【要点】

「決算書」は決算に関する書類の総称であり、「財務諸表」はその中でも特に金融商品取引法に基づいて作成される書類群を指します。対象範囲は「決算書」の方が広いです。

まずは結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目財務諸表(ざいむしょひょう)決算書(けっさんしょ)
中心的な意味法に基づき作成される会計書類のセット決算報告に使われる書類の総称
根拠となる法律金融商品取引法法律用語ではない(通称)
主な提出先投資家、金融庁株主、税務署、銀行
対象企業上場企業などすべての企業
含まれる書類B/S、P/L、C/F、株主資本等変動計算書など上記に加え、事業報告書や勘定科目内訳明細書など

一番大切なポイントは、法律(金商法)に基づく正式名称が「財務諸表」、一般的な呼び名が「決算書」という関係性ですね。

実際には「決算書」という言葉の中に「財務諸表」や「計算書類」が含まれているイメージです。

なぜ違う?「法律」と「目的」の視点からイメージを掴む

【要点】

「財務諸表」は投資家保護を目的とした金融商品取引法用語、「決算書」はビジネス慣習としての通称です。誰のために作るか(投資家か、関係者全員か)で呼び名が変わります。

なぜこの二つの言葉が使い分けられるのか、その背景にある「法律」と「目的」を知ると、理由がすっきり分かりますよ。

「財務諸表」の背景:投資家を守るための厳格なルール

「財務諸表」という言葉は、主に金融商品取引法という法律で使われます。

この法律は、株式市場などで投資をする人たち(投資家)を守ることを目的としています。

投資家が正しい判断をするためには、企業の財政状態や経営成績を正確に知る必要がありますよね。

そのために、上場企業に対して作成・開示(ディスクロージャー)を義務付けているのが「財務諸表」です。

具体的には、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」「株主資本等変動計算書」「附属明細表」などがこれに含まれます。

つまり、「投資家のための、ルールに則った厳格な報告書」というイメージですね。

「決算書」の背景:ビジネスにおける報告の総称

一方、「決算書」という言葉は、特定の法律で定義された用語ではありません。

ビジネスの現場で使われる「決算に関する書類一式」を指す通称です。

会社法に基づく「計算書類」や、税法(法人税法)に基づく申告書添付書類、さらには銀行に見せるための試算表なども含めて、ひっくるめて「決算書」と呼びます。

株主総会での報告や、税務署への申告、銀行融資の審査など、あらゆる場面で使われる便利な言葉です。

こちらは「会社の成績表セット」という、ざっくりとした広いイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

上場企業のIR情報や有価証券報告書について語るなら「財務諸表」、中小企業の税務申告や銀行融資の話なら「決算書」を使うのが一般的です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

相手やシチュエーションに合わせて使い分けるのが、デキるビジネスパーソンのコツですよ。

【OK例文:財務諸表】

  • 有価証券報告書に記載された財務諸表を分析して、投資判断を行う。
  • 監査法人の監査を受けて、財務諸表の適正性を証明してもらう。
  • 連結財務諸表には、子会社の業績も反映されている。

【OK例文:決算書】

  • 銀行から融資を受けるために、直近3期分の決算書を提出した。
  • 税理士の先生に決算書を作成してもらい、法人税の申告を行った。
  • 株主総会に向けて、招集通知と一緒に決算書(計算書類)を送付する。

このように、上場企業の開示資料や監査の話なら「財務諸表」、一般的な資金調達や税務の話なら「決算書」が自然です。

日常会話での使い分け

日常会話では、「決算書」の方が圧倒的に馴染みがありますね。

【OK例文:財務諸表】

  • (ニュースで)「〇〇社の財務諸表に虚偽記載の疑いがあります」
  • 簿記の勉強で、財務諸表の読み方を習っているんだ。

【OK例文:決算書】

  • 父の会社の決算書を見せてもらったけど、難しくてよく分からなかった。
  • 今年の決算書、やっと完成したよ。黒字でほっとした。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、専門的な文脈では違和感を持たれることもあります。

  • 【NG】税務署に確定申告のために財務諸表を提出しに行った。
  • 【OK】税務署に確定申告のために決算書を提出しに行った。

税務署への提出書類は一般的に「決算書」と呼ばれます。「財務諸表」と言うと、金融商品取引法に基づく書類(有価証券報告書など)をイメージさせるため、少し大げさな印象になります。

【応用編】似ている言葉「計算書類」との違いは?

【要点】

「計算書類」は会社法に基づく用語で、株主や債権者への報告を目的としています。「財務諸表」と構成は似ていますが、キャッシュフロー計算書が含まれない点が大きな違いです。

「財務諸表」「決算書」と並んで、経理担当者が必ず知っておくべき言葉に「計算書類(けいさんしょるい)」があります。

これも「決算書」の一部ですが、根拠となる法律が違います。

「計算書類」は、会社法という法律で定められた用語です。

全ての会社(株式会社など)は、株主総会で株主に業績を報告するために、この計算書類を作成しなければなりません。

「財務諸表(金商法)」との最大の違いは、「キャッシュフロー計算書」が含まれないことです。

会社法の計算書類は、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「個別注記表」の4つが基本セットです。

一方、上場企業が作る財務諸表には「キャッシュフロー計算書」が必須です。

まとめるとこうなります。

  • 計算書類(会社法):全企業が対象。株主への報告用。C/Fなし。
  • 財務諸表(金商法):上場企業などが対象。投資家への開示用。C/Fあり。
  • 決算書(通称):これら全てを含む総称。

詳しくは金融庁の企業会計開示に関する資料などで、制度ごとの開示書類の違いを確認できますよ。

「財務諸表」と「決算書」の違いを提出先の視点から解説

【要点】

誰に見せるための書類かで呼び名が変わります。不特定多数の投資家に見せるなら「財務諸表」、銀行や税務署など特定の相手に見せるなら「決算書」と呼ぶのが一般的です。

専門的な視点から見ると、この二つの言葉は「誰に対して報告する責任(アカウンタビリティ)を果たしているか」の違いとも言えます。

「財務諸表」は、広く市場(マーケット)に向けて公開されるものです。

EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)などを通じて、誰でも閲覧できるようになっています。

そのため、表記のルールや様式が非常に厳格に定められています。

「財務諸表等規則」というルールブックに従って作らないといけません。

一方、「決算書」は、銀行や税務署など、特定の関係者に提出するものです。

特に中小企業の場合、銀行融資や税務申告が主な目的となるため、必ずしも上場企業のような厳密な「財務諸表」の形式(キャッシュフロー計算書など)までは求められないことが多いです。

「勘定科目内訳明細書」のような、より実務的で細かい内訳資料がセットになっているのが一般的ですね。

つまり、「財務諸表」はパブリックな開示資料、「決算書」は実務的な報告資料という側面が強いのです。

「財務諸表」を「決算書」と呼んで上司に指摘された体験談

僕も以前、この言葉の使い分けに無頓着で、恥ずかしい思いをしたことがあります。

ある上場企業のIR担当の方への取材記事を書いていたときのことです。

僕は原稿の中で、投資家向けの説明会の様子を描写する際に、「社長はスクリーンに映し出された決算書を指し示し……」と書きました。

自分では何の問題もない表現だと思っていたんです。

ところが、原稿チェックをしてくれた編集長から赤字が入りました。

「ここは『決算書』じゃなくて『財務諸表』にしておこうか。上場企業の決算説明会だし、投資家に向けて開示している文脈だからね。『決算書』だとちょっと俗っぽいというか、中小企業の銀行面談みたいな響きになっちゃうかも」

なるほど、と思いました。

確かに意味は通じますが、言葉の選び方一つで、その場の「オフィシャル感」や「規模感」が変わってしまうんですよね。

「決算書」は便利な言葉ですが、少し「内輪向け」のニュアンスを含んでいる。

対して「財務諸表」は、外部の厳しい目に晒される「公的な資料」という重みがある。

この経験から、企業の規模や場面に応じて、言葉の解像度を上げるように意識しています。

特にIRや金融系の記事を書くときは、「財務諸表」や「計算書類」を正しく使い分けることが、記事の信頼性にも直結すると痛感しました。

「財務諸表」と「決算書」に関するよくある質問

「財務三表」とは何ですか?

「財務三表」とは、財務諸表の中でも特に重要な3つの書類、「貸借対照表(B/S)」「損益計算書(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」のことを指します。企業の財務状態を知るための基本セットです。

中小企業でも「財務諸表」を作る必要はありますか?

金融商品取引法の対象とならない非上場の中小企業には、「財務諸表」の作成義務はありません。会社法に基づく「計算書類」を作成すればOKです。ただし、経営管理のために自主的にキャッシュフロー計算書などを作成することは推奨されます。

英語で言うとどうなりますか?

「財務諸表」は “Financial Statements” と訳されるのが一般的です。「決算書」も同様に訳されますが、文脈によっては “Financial Report” や “Closing Accounts” と表現されることもあります。

「財務諸表」と「決算書」の違いのまとめ

「財務諸表」と「決算書」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 範囲の違い:「決算書」は総称、「財務諸表」は特定ルール(金商法)に基づく書類群。
  2. 根拠の違い:「財務諸表」は金融商品取引法、「計算書類」は会社法、「決算書」は通称。
  3. 対象の違い:「財務諸表」は主に上場企業が投資家向けに作成する。

言葉の背景にある法律や目的を掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

ビジネスシーンでは、会社の規模や話題の内容(税務かIRか)に合わせて言葉を選ぶことが、プロフェッショナルな印象につながります。

これからは自信を持って、適切な言葉を選んでくださいね。

さらに詳しい業界用語の使い分けについては、業界用語の違いまとめもぜひ参考にしてみてください。

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