「beard」と「mustache」の違い!顎ひげか口ひげか、場所で決まる使い分け

「beard」は顎(あご)や頬(ほお)に生えるひげを指し、「mustache」は鼻の下(上唇の上)に生える口ひげを指す言葉です。

日本語ではどちらも「ひげ」と一括りにされがちですが、英語圏では生えている場所によって明確に単語を使い分けます。ここを混同すると、相手に全く違う顔立ちを想像させてしまうことになります。

この記事を読めば、それぞれの指す場所やニュアンスの違いがスッキリと分かり、海外での理髪店でのオーダーや、特徴を説明する英会話でも自信を持って使い分けられるようになります。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「beard」と「mustache」の最も重要な違い

【要点】

基本的には顎や頬のひげなら「beard」、鼻の下の口ひげなら「mustache」と覚えるのが簡単です。beardは顔の下半分を覆うイメージ、mustacheは口元を飾るイメージです。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目beard (ビアード)mustache (マスターシュ)
生える場所顎(あご)、頬(ほお)、顔の下半分鼻の下、上唇の上
日本語訳顎ひげ、頬ひげ口ひげ
イメージサンタクロース、リンカーンマリオ、チャップリン
漢字表記(参考)鬚(あごひげ)、髯(ほおひげ)髭(くちひげ)

一番大切なポイントは、「beard」は口ひげを含んだ「顔全体のひげ」を指すこともあるが、「mustache」はピンポイントで「口ひげ」だけを指すということですね。

例えば、サンタクロースのようなモジャモジャのひげは、口ひげも含めて全体で「beard」と呼びますが、マリオのような鼻の下だけのひげは「mustache」と呼びます。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「beard」はゲルマン語系で“刺すもの”といった意味合いを含み、男性的な顎ひげを指します。一方、「mustache」はギリシャ語の“上唇”や“噛む”に関連する言葉が語源で、口元の装飾的なひげを意味します。

なぜこの二つの言葉に場所の違いが生まれるのか、語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「beard」の成り立ち:ゲルマン語が表す“顔の毛”

「beard」は、古英語やゲルマン語に由来する、非常に古い言葉です。

語源的にはラテン語の「barba(ひげ)」とも関連しており、これは「barber(理髪店)」や「barbarian(野蛮人=ひげを生やした人)」の語源でもあります。

元々は「顔に生える毛」全般、あるいは「あごひげ」を指す言葉として定着しました。

男性の象徴としての「あご」を覆う毛、という力強いイメージが根底にあります。

「mustache」の成り立ち:ギリシャ語が表す“上唇”

一方、「mustache(イギリス英語ではmoustache)」の語源は、フランス語を経由して古代ギリシャ語の「mystax(上唇、口ひげ)」に遡ります。

さらに辿ると「mullō(噛む、すり潰す)」という言葉に関連していると言われています。

つまり、「噛む場所(口)の上にある毛」という意味合いが強いのです。

顎全体を覆うbeardとは異なり、口元を飾るアクセントとしてのニュアンスが含まれています。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

顔の下半分を覆うひげを生やしているなら「beard」、鼻の下だけに生やしているなら「mustache」を使います。両方生やしている場合は「beard and mustache」と言うこともありますが、繋がっていれば単に「beard」と呼ぶことも多いです。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

日常会話や描写での使い分けを見ていきましょう。

外見の描写での使い分け

ひげの「場所」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:beard】

  • Santa Claus has a long white beard.
    (サンタクロースは長い白いあごひげ(顔全体のひげ)を生やしている。)
  • He decided to grow a beard to look older.
    (彼は大人っぽく見せるためにあごひげを伸ばすことにした。)
  • I need to trim my beard; it’s getting messy.
    あごひげを整えないと。ボサボサになってきた。)

【OK例文:mustache】

  • Super Mario is famous for his thick mustache.
    (スーパーマリオは立派な口ひげで有名だ。)
  • My father shaved off his mustache yesterday.
    (父は昨日、口ひげを剃り落とした。)
  • He twirled the ends of his mustache.
    (彼は口ひげの端をくるりとひねった。)

このように、顔全体や顎なら「beard」、鼻の下のワンポイントなら「mustache」ですね。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、不自然な使い方を見てみましょう。

  • 【NG】(チャップリンの写真を見て)He has a nice beard.
    (彼は素敵なあごひげをしているね。)
  • 【OK】(チャップリンの写真を見て)He has a nice mustache.
    (彼は素敵な口ひげをしているね。)

チャップリンのトレードマークは鼻の下の「チョビひげ」なので、beardと言うと顎にも生えていると誤解されます。

  • 【NG】(顎までフサフサの人に)Your mustache is very long.
    (あなたの口ひげはとても長いですね。)
  • 【OK】(顎までフサフサの人に)Your beard is very long.
    (あなたのひげはとても長いですね。)

顎まで伸びている長いひげに対してmustacheと言うと、鼻の下の毛だけが異様に長い(ドジョウひげのような)状態を指してしまい、全体のフサフサ感を表現できません。

【応用編】似ている言葉「whiskers」「stubble」との違いは?

【要点】

「whiskers」は猫やネズミの「ヒゲ」を指しますが、人の「頬ひげ」を指すこともあります。「stubble」は剃った後に少し伸びた「無精ひげ」や「青ひげ」の状態。「goatee」は顎の下だけに生やす「山羊ひげ」を指します。

「beard」「mustache」以外にも、ひげを表す英語はたくさんあります。

これも押さえておくと、表現の幅がグッと広がりますよ。

Whiskers(ウィスカーズ)

主に猫やネズミなど動物の「感覚毛(ヒゲ)」を指します。

人間に対して使う場合は、頬に生えているひげ(サイドバーンから繋がるような毛)を指すことがありますが、少し古風な響きや、動物的なイメージを持つことがあります。

Stubble(スタブル)

これは「無精ひげ」のことです。

綺麗に剃った後、数日経ってジョリジョリと生えてきた短いひげを指します。「5 o’clock shadow(夕方になると伸びてくる青ひげ)」とも呼ばれます。

Goatee(ゴーティー)

「Goat(ヤギ)」から来ている言葉で、「顎ひげ」の中でも特に顎先だけに生やしたスタイル(山羊ひげ)を指します。

口ひげ(mustache)と繋げずに、顎だけに残すスタイルなどがこれに当たります。

Sideburns(サイドバーンズ)

これは「もみあげ」のことです。

厳密にはひげではありませんが、顔の毛のスタイルとしてセットで語られることが多いですね。

「beard」と「mustache」の違いを文化的な視点で解説

【要点】

欧米文化において「Full beard(口ひげと顎ひげが繋がった状態)」は男性らしさや威厳の象徴とされることが多いです。一方、「Mustache」単体は時代や流行によって、紳士的、芸術的、あるいはキザな印象など、特定のキャラクター性を帯びることがあります。

実は、この二つの言葉の使い分けには、文化的な背景やスタイルの歴史も関係しています。

英語圏では、ひげのスタイルにそれぞれ固有の名前がついているほど、ひげに対するこだわりが強いです。

一般的に「Beard」と言う場合、口ひげ(Mustache)と顎ひげ(Beard)がつながった「Full beard(フル・ビアード)」を指すことがよくあります。

これは古くから、賢者や王、あるいは荒々しい男性らしさの象徴とされてきました。

一方で「Mustache」は、19世紀から20世紀初頭にかけての紳士や軍人、あるいは芸術家(ダリなど)の象徴として流行しました。

現代では、11月に男性の健康意識を高めるために口ひげを生やす「Movember(モーベンバー)」というイベントがあるほど、Mustacheはアイコニックな存在です。

単に「毛が生えている場所」の違いだけでなく、そのスタイルが持つ「雰囲気」や「歴史」も含めて言葉が選ばれているんですね。

僕が「beard」の手入れで失敗した海外での体験談

僕も以前、この「beard」と「mustache」の違いでちょっとした失敗をしたんです。

海外旅行中、現地の理髪店(バーバー)でひげを整えてもらおうと思ったときのことです。

当時、僕は口ひげと顎ひげを繋げた、いわゆる「囲みひげ」のスタイルにしていました。

椅子に座り、理容師さんに「Please trim my beard.(ひげを整えてください)」と頼みました。

僕は当然、口ひげも含めた顔全体のひげを整えてくれるものだと思っていました。

ところが、理容師さんは顎と頬のひげだけを丁寧にトリミングし始め、鼻の下の口ひげには全く手を付けないのです。

「あれ? 忘れられてる?」と思い、恐る恐る「And… here too?(ここも…?)」と鼻の下を指差しました。

すると彼は笑顔でこう言いました。

「Oh, you mean your mustache! Why didn’t you say so?(ああ、マスターシュのことか! なんで言わなかったんだい?)」

ハッとしました。

彼の中では、「Beard(顎・頬)」と「Mustache(口ひげ)」は別々の料金メニューにすらなり得る、明確に異なるパーツだったのです。

日本人の感覚で「ひげ=全部まとめて」と考えていた僕は、パーツごとのオーダーが必要だという認識が抜けていました。

この経験から、僕は理髪店では「Beard and mustache」と具体的に伝えるか、あるいは「Full beard」と言って全体を指すようにしています。

言葉一つで、サービスの内容まで変わってしまうことがあるんですね。

「beard」と「mustache」に関するよくある質問

両方生やしているときは何て言えばいい?

口ひげと顎ひげが繋がっている、あるいはセットで生やしている場合は、まとめて「beard」と呼ぶのが一般的です。特に区別して「I have a beard and a mustache.」と言うこともできますが、日常会話では顔の下半分を覆っていれば「He has a beard.」で通じます。

「ひげを剃る」は英語で?

「Shave」を使います。「I shave every morning.(毎朝ひげを剃る)」と言えば、顔全体のひげを剃ることを意味します。特定のひげを剃り落とす場合は「Shave off my mustache(口ひげを剃り落とす)」のように言います。

無精ひげはおしゃれに見えますか?

英語圏では「Stubble(無精ひげ)」や「5 o’clock shadow」と呼ばれるうっすら伸びたひげは、ワイルドでセクシーなスタイル(Designer stubble)として人気があります。ただし、手入れされていない単なる無精ひげは「Messy(だらしない)」と思われるので、意図的に長さを揃える「Trim」が重要です。

「beard」と「mustache」の違いのまとめ

「beard」と「mustache」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  • 場所の違い:beardは「顎・頬」、mustacheは「鼻の下」。
  • 日本語訳:beardは「顎ひげ」、mustacheは「口ひげ」。
  • イメージ:beardは顔の下半分を覆うもの、mustacheは口元の飾り。
  • 使い分け:全体や顎ならbeard、鼻の下ピンポイントならmustache。

言葉の背景にある場所やイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。

さらに言葉の世界を広げたい方は、メディア・文化系外来語の違いまとめもぜひご覧ください。

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