「エモーション」と「エモーショナル」の違い!「エモい」の語源はどっち?

「エモーション」と「エモーショナル」は、どちらも「感情」に関わる言葉ですが、「感情そのもの(名詞)」か「感情的な状態(形容詞)」かという決定的な違いがあります。

なぜなら、英語の文法において「emotion」は名詞であり、それに「-al」をつけて形容詞化したものが「emotional」だからです。

この記事を読めば、二つの言葉の正しい使い分けや、若者言葉「エモい」との関係までスッキリ理解でき、会話や文章で迷うことがなくなります。

それでは、まず二つの言葉の最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「エモーション」と「エモーショナル」の最も重要な違い

【要点】

「エモーション」は「感情」「感動」という名詞で、心の動きそのものを指します。「エモーショナル」は「感情的な」「情緒的な」という形容詞で、感情が動かされている状態や性質を表します。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目エモーション (Emotion)エモーショナル (Emotional)
品詞名詞形容詞
意味感情、情緒、感動、情動感情的な、情緒的な、感情に訴える
対象心の動きそのもの(モノ)人や物の状態・性質(ヨウス)
使い方の例エモーションを表現するエモーショナルなスピーチ

一番大切なポイントは、「~がある(エモーション)」か、「~な状態だ(エモーショナル)」かということですね。

「彼はエモーショナルだ(感情的な人だ)」とは言えますが、「彼はエモーションだ」とは言いません。

なぜ違う?品詞と語源から「感情」のイメージを掴む

【要点】

語源はラテン語の「emovere(外へ動かす)」です。心の動きが外へ現れることを「エモーション(名詞)」と呼び、そのような性質を持つことを「エモーショナル(形容詞)」と区別しました。

なぜ同じ「感情」を表すのに言葉が分かれているのか、その成り立ちを紐解くとイメージが湧きやすくなりますよ。

「エモーション」の成り立ち:心が外へ動くこと

「エモーション(emotion)」の語源は、ラテン語の「e-(外へ)」+「movere(動かす)」です。

つまり、「心が揺れ動いて、外に現れること」が原義です。

単なる「気持ち(feeling)」よりも、身体的な反応を伴うような「強い感情(情動)」を指す名詞として定着しました。

「アクション(action)」と同じように、名詞として「動きそのもの」を表します。

「エモーショナル」の成り立ち:感情に満ちた状態

一方、「エモーショナル(emotional)」は、名詞「emotion」に、形容詞を作る接尾辞「-al」が付いた言葉です。

「music(音楽)」が「musical(音楽的な)」になるのと同じですね。

つまり、「感情が揺さぶられている状態」や「感情に訴えかける性質」を表します。

人に対して使えば「感情的な人(怒りっぽい、涙もろい)」となり、作品に対して使えば「感動的な映画」という意味になります。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「エモーション」は「込める」「抑える」などの動詞と共に目的語として使われます。「エモーショナル」は「な人」「な演技」のように名詞を修飾するか、「~だ」と状態を説明する時に使われます。

言葉の違いは、具体的な使用シーンで確認するのが一番ですよね。

日常会話やビジネスシーンでの使い分けを見ていきましょう。

「エモーション」を使うシーン

名詞として、感情そのものを指す場合に使います。

【OK例文】

  • ダンサーが全身でエモーションを表現している。(感情を表現)
  • ビジネスではエモーション(私情)を挟んではいけない。
  • 歌声に強いエモーションを感じる。(感情の揺れ)

「エモーショナル」を使うシーン

形容詞として、人や物の様子を説明する場合に使います。

【OK例文】

  • 卒業式で先生がエモーショナルなスピーチをした。(感動的な)
  • 彼はとてもエモーショナルな性格で、すぐに泣いたり怒ったりする。(感情的な)
  • 夕暮れの海はとてもエモーショナルな風景だ。(情緒的な)

これはNG!間違えやすい使い方

品詞を混同すると、不自然な日本語になってしまいます。

  • 【NG】 彼の演技はとてもエモーションだった。
  • 【OK】 彼の演技はとてもエモーショナルだった。

「~だった(形容動詞的用法)」の時は「エモーショナル」を使います。「エモーションだった」と言うと、「演技=感情そのもの」という意味になり、文脈によっては通じますが少し違和感があります。

【応用編】若者言葉「エモい」の正体とは?

【要点】

「エモい」は「エモーショナル(emotional)」を略して形容詞化した日本のスラングです。「なんとも言えない趣がある」「心揺さぶられる」「懐かしい」といった複雑な感情を一言で表す言葉として定着しました。

「エモーション」と「エモーショナル」を語る上で外せないのが、若者言葉の「エモい」です。

この言葉の語源は、まさに「エモーショナル(emotional)」です。

元々は音楽ジャンルの「Emo(イーモ/エモーショナル・ハードコア)」から派生したとも言われていますが、現在ではより広い意味で使われています。

具体的には以下のようなニュアンスを含みます。

  • 夕焼けや廃墟を見て「哀愁を感じる」
  • 昔の曲を聴いて「懐かしい(ノスタルジック)」
  • 言葉にできないほど「感動した」「尊い」

論理的(ロジカル)の対極にある、直感的な感情の揺れを表現する便利な言葉として定着していますね。

つまり、「エモい」は「とてもエモーショナルだ」を日本風に短縮した言葉と言えます。

「エモーション」と「エモーショナル」の違いを心理学的に解説

【要点】

心理学では「エモーション(情動)」は、刺激に対する一時的で急激な身体的・心理的反応を指します。「ムード(気分)」が長く続く弱い感情であるのに対し、エモーションは「怒り」「恐怖」「喜び」など明確な対象と身体反応を伴う強い波です。

ここでは少し専門的な視点から、この言葉を深掘りしてみましょう。

心理学における「エモーション(情動)」は、単なる「気持ち」とは区別されます。

例えば、心拍数が上がったり、顔が赤くなったり、冷や汗をかいたりするような「身体的な変化」を伴う強い感情の動きを指します。

一方、「エモーショナル」であるということは、そのような「情動反応を起こしやすい性質」や「情動に支配されている状態」を指します。

エモーショナル・インテリジェンス(EQ)という言葉がありますが、これは「自分のエモーション(情動)を理解し、制御し、利用する能力」のことです。

「感情的(エモーショナル)になる」ことと、「感情(エモーション)を扱う」ことは別物なんですね。

より詳しい情動の定義については、国立情報学研究所などの学術データベースで心理学の文献を検索してみると、興味深い研究が見つかるかもしれません。

ビジネスで「エモーショナル」を使って熱くなりすぎた体験談

僕も以前、仕事のプレゼンで「エモーショナル」の使いどころを間違えて、少し恥ずかしい思いをしたことがあります。

新しい企画を通すために、データだけでなく「熱意」を伝えようと意気込んでいました。

プレゼンの冒頭、僕は自信満々にこう言いました。

「今回の企画は、非常にロジカルかつ、私の『エモーショナル』な部分をぶつけたものです!」

会場が一瞬シーンとなりました。

僕は「情熱的(パッション)」という意味で使ったつもりでしたが、後で上司にこう指摘されました。

「あそこで『エモーショナル』って言うと、君が『感情的になって冷静さを欠いている』とか『情緒不安定』みたいに聞こえちゃうよ。『パッション(情熱)』とか『想い』って言った方が良かったね」

顔から火が出るかと思いました。

ビジネスの場では、「エモーショナル」は「感情的=非論理的」というネガティブなニュアンスで受け取られることもあるんですね。

それ以来、ポジティブな熱意は「パッション」、心の動きを説明する時は「エモーション」と使い分けるようにしています。

カタカナ語は便利ですが、本来のニュアンスを知らないと誤解を招くことがあると痛感した出来事でした。

「エモーション」と「エモーショナル」に関するよくある質問

「エモーショナル・マーケティング」とは何ですか?

消費者の「感情」に訴えかけて購買意欲を刺激するマーケティング手法です。機能や価格のメリット(理性)ではなく、「懐かしい」「かっこいい」「憧れる」といった情緒的価値(感性)を重視してアピールする戦略を指します。

「センチメンタル」との違いは何ですか?

「センチメンタル」は「感傷的」と訳され、特に「寂しさ、哀れみ、懐かしさ」などで涙もろくなっている状態を指します。「エモーショナル」は怒りや喜びも含めた「感情全般」が動いている状態を指すため、より広い意味を持ちます。センチメンタルはエモーショナルの一部と言えます。

「エモーション」と「フィーリング」の違いは?

「フィーリング(feeling)」は「感覚」「気持ち」と訳され、身体感覚や漠然とした気分を含みます。「エモーション」はより強く、はっきりとした心の動き(喜怒哀楽)を指します。「なんとなく嫌だ」はフィーリング、「激しく怒る」はエモーションです。

「エモーション」と「エモーショナル」の違いのまとめ

「エモーション」と「エモーショナル」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 品詞の違い:エモーションは「名詞」、エモーショナルは「形容詞」。
  2. 意味の違い:エモーションは「感情そのもの」、エモーショナルは「感情的な状態」。
  3. エモいの正体:エモーショナルを略して形容詞化した若者言葉。

この違いを知っていると、「あの曲はエモいね」と言われた時に、「ああ、エモーショナル(情緒的)な魅力があるんだな」と深く納得できますよね。

これからは自信を持って、適切な言葉で自分の「エモーション」を表現していきましょう。

さらに詳しいカタカナ語や外来語の解説については、メディア・文化系外来語の違いまとめもぜひ参考にしてみてください。

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