「music」と「song」の違い!歌がない曲はどっち?

「music」と「song」、どちらも音楽に関連する言葉ですが、その違いは「歌(声)」が入っているかどうかにあります。

日本人はあらゆる楽曲を指して「ソング」と言いがちですが、英語圏では歌詞のない曲を「song」と呼ぶと違和感を持たれることが多いのです。

この記事を読めば、それぞれの単語が持つ本来の範囲やニュアンスが分かり、ネイティブとの会話でも自信を持って音楽の話ができるようになります。

それでは、まず両者の決定的な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「music」と「song」の最も重要な違い

【要点】

基本的には音楽全体を指す不可算名詞が「music」、歌声が入った個別の曲を指す可算名詞が「song」と覚えるのが簡単です。楽器だけの曲は「song」とは呼びません。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目musicsong
中心的な意味音楽という芸術、楽曲の総称歌(歌詞とメロディがあるもの)
歌詞(声)あってもなくても良い必須(歌われているもの)
文法的な扱い不可算名詞(数えられない)可算名詞(数えられる:a song, songs)
対象範囲クラシック、ジャズ、ポップスなど全般歌謡曲、ポップソング、童謡など

簡単に言うと、ジャンルや音そのものを指す広い言葉が「music」、誰かが歌っている特定の1曲を指す狭い言葉が「song」というイメージですね。

例えば、ベートーヴェンの交響曲は「music」ですが、通常「song」とは呼びません。一方で、ビートルズの『イエスタデイ』は「music」の一部であり、かつ「song」でもあります。

なぜ違う?語源(英語)からイメージを掴む

【要点】

「music」はギリシャ神話の女神「ムーサ(Musa)」の技芸を意味し、芸術全般を指す広義の言葉が由来です。一方、「song」は古英語の「sang(歌うこと)」が由来で、行為としての“歌”に直結しています。

なぜこの二つの言葉に範囲の違いが生まれるのか、語源を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「music」の語源:芸術の女神「Muse」が由来

「music」は、古代ギリシャ語の「mousikē(ムーサの技芸)」に由来します。

ムーサ(英語名:ミューズ Muse)は、文芸や音楽、舞踏などを司る9人の女神たちのことです。

つまり、「music」とは女神たちが司る芸術活動全般、あるいは音による総合的な表現を表している、と考えると分かりやすいですね。

「song」の語源:歌うこと「Sing」が由来

一方、「song」は古英語の「sang」や、ドイツ語の「Gesang」と同源で、動詞の「sing(歌う)」の名詞形です。

文字通り「歌うこと」や「歌われたもの」を意味します。

このことから、「song」には、人の声を使ってメロディを奏でるものという限定的なニュアンスが含まれるんですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「音楽が好き」と趣味を語るなら「music」、「この曲(歌)が好き」と特定するなら「song」と使い分けるのが基本です。ただし、歌のない曲(インストゥルメンタル)を指す場合は「piece」など別の言葉を使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

日常会話や音楽シーンでの使い分けを見ていきましょう。

日常会話での使い分け

「数えられるか(a/sがつくか)」と「歌声があるか」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:music】

  • I listen to music every day.(私は毎日、音楽を聴く。)※不可算名詞なのでaはつかない
  • Do you like classical music?(クラシック音楽は好きですか?)
  • What kind of music are you into?(どんなジャンルの音楽にハマってる?)

【OK例文:song】

  • This is my favorite song.(これは私のお気に入りの歌です。)
  • He sang a love song for her.(彼は彼女のためにラブソングを歌った。)
  • I know all the songs on this album.(このアルバムの曲(歌)は全部知ってるよ。)

このように、特定の「歌」を指す場合は「song」を使い、複数形(songs)にすることも可能です。

音楽シーンやビジネスでの使い分け

少し専門的な文脈でも、この原則は変わりません。

【OK例文:music(業界・総称)】

  • She works in the music industry.(彼女は音楽業界で働いている。)
  • The music for this movie is amazing.(この映画の音楽(サントラ全体)は素晴らしい。)

【OK例文:song(作品単位)】

  • The band released a new song yesterday.(そのバンドは昨日、新曲(歌)をリリースした。)
  • The lyrics of this song are very deep.(この歌の歌詞はとても深い。)

【応用編】似ている言葉「tune」「track」「piece」との違いは?

【要点】

歌のない曲を指す場合は「piece」や「tune」を使います。「track」はアルバムの中の1曲(録音単位)を指す言葉です。「song」が使えないインストゥルメンタル曲には、これらの単語を活用しましょう。

「music」と「song」以外にも、曲を表す単語はいくつかあります。これらを知っておくと、表現の幅がグッと広がりますよ。

■ piece(ピース)
主にクラシック音楽やジャズなどの「作品」を指します。歌声が入っていない楽器だけの曲(インストゥルメンタル)を数える時に便利です。
例:a piano piece(ピアノ曲)、a master piece(傑作)

■ tune(チューン)
「旋律」「メロディ」という意味ですが、カジュアルに「曲」全体を指すこともあります。歌があってもなくても使えます。
例:catchy tune(キャッチーな曲)、play a tune(一曲演奏する)

■ track(トラック)
CDやアルバム、プレイリストに入っている「1曲」のことです。録音された音源データというニュアンスが強くなります。
例:bonus track(ボーナストラック)、the first track on the album(アルバムの1曲目)

「music」と「song」の違いを言語学的に解説

【要点】

言語学的には、名詞の「可算性(数えられるかどうか)」という概念が鍵になります。「music」は概念としての音楽(不可算)、「song」は具体的な境界線を持つ個体(可算)として認識される違いがあります。

少し専門的な視点で見ると、この二つの違いは「物質名詞(Material Noun)」的な扱いと「普通名詞(Common Noun)」的な扱いの違いと言えます。

「music」は水(water)や空気(air)と同じように、形のない概念や集合体として捉えられるため、数えられません。これを「不可算名詞」と言います。

一方、「song」は始まりと終わりがあり、一つのパッケージとして独立しているため、りんご(apple)や本(book)と同じように数えられます。これを「可算名詞」と言います。

日本人が間違えやすいのは、日本語の「音楽」や「曲」という言葉に、この可算・不可算の区別があまりないからなんですね。

留学生とのドライブで赤っ恥をかいた「song」の使い間違い

僕も学生時代、この「music」と「song」の使い分けで恥ずかしい思いをした経験があります。

アメリカ留学中、現地の友人とドライブに出かけました。僕は車内で、大好きなジャズのCDをかけました。サックスが心地よく響く、渋いインストゥルメンタル(歌なし)のナンバーです。

気分が良くなった僕は、助手席の友人にこう言いました。

「This song is really cool, isn’t it?(この歌、すごくかっこいいだろ?)」

すると友人は、不思議そうな顔をしてこう返してきました。

「Song? Nobody is singing. It’s a nice piece of music, though.(ソング? 誰も歌ってないじゃないか。まあ、いい曲(piece)だとは思うけどね)」

その瞬間、僕はハッとしました。「song = 曲」だと勝手に思い込んでいましたが、ネイティブにとって「song」はあくまで「歌うもの」であり、歌声が入っていない曲に使うのは違和感があるのだと痛感しました。

それ以来、歌のない曲を指すときは「piece」や「track」、あるいは単に「music」と言うように気をつけています。

「music」と「song」に関するよくある質問

クラシック音楽の曲は「song」と呼べますか?

基本的には呼びません。クラシックは歌が入っていない器楽曲が多いので、「piece」を使うのが一般的です。ただし、オペラのアリアや歌曲など、歌声がメインの曲であれば「song」と呼ぶことも可能です。

ハミングや歌詞のない歌声が入っている曲はどっちですか?

声が入っていれば「song」と呼んでも間違いではありませんが、歌詞がない場合は「tune」や「track」の方が自然な場合もあります。「Voice instrumental」のように楽器として声を扱っている場合は「music」や「piece」の範疇になることもあります。

「No music, no life」はどういう意味ですか?

「音楽のない人生なんて、人生じゃない(ありえない)」という意味です。ここでの「music」は特定の曲ではなく、音楽という文化や楽しみ全体を指しているため、不可算名詞として使われています。

「music」と「song」の違いのまとめ

「music」と「song」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は歌の有無:「歌(声)」があるのがsong、音楽全体がmusic。
  2. 文法の違い:musicは数えられない(不可算)、songは数えられる(可算)。
  3. 歌がない曲:インストゥルメンタルなどは「piece」や「tune」を使う。
  4. 迷ったら:広義の「music」を使えば間違いはないが、特定の曲を指すなら「track」などが無難。

言葉の背景にある「声の存在」を意識すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。

これからは自信を持って、自分の好きな音楽について英語で語ってみてください。

カタカナ語や外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、メディア・文化系外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。

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